暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

2018年口切の茶事を終えて・・・2

2018年12月07日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)


(つづき)
御茶入日記を持って、拝見が終わった茶壺を取りに行き、次いで葉茶上合一式を持ち出します。
お客さまが息を詰めるように見つめる中、小刀でゆっくりと合口を確かめながら切っていくと、蓋が開きました。開けるとすぐに茶の香りがぷぅ~んと鼻をくすぐります。

「いずれのお茶を差上げましょうか?」
「ご亭主におまかせいたします」とお正客Aさま。
「それでは”無上(むじょう)”を差し上げたいと思います。
 京都・柳桜園が炉開きの時季のみに特別販売しているお茶ですが、天王寺屋会記に口切に”無上”を使った・・・との記述があり、これから茶銘が付けられたのかもしれません」

(陰の声・・・お招き頂いたYさまの炉開きの茶事で、はじめて”無上”(柳桜園詰)を頂戴し、その美味しさに感激しました。急ぎ、京都から取り寄せました)

詰茶を葉茶上合に少し取ってから、”無上”と書かれた半袋を取り出し、曳家へ入れます。
詰茶を詰と書かれた挽家に入れ、残りを茶壺に戻し、封をし印を押しました。
茶壺が封印され、諸道具を水屋へ戻し、壷を網袋へ入れて水屋へ持って下がります。
最後に御茶入日記を下げ、茶道口で総礼して口切が終わりました。
(次いで初炭ですが、省略させていただきます・・・)

名客様のおかげで、10時半の席入りから口切、そして初炭までスムースに運び、懐石の時間まで少し余裕がありましたので、小さな石臼を持ち出して、お客さまに「お茶を挽く」体験をして頂きました。
みんなで臼を挽きながら和やかにお話が弾み、これも口切の好い思い出になりました・・・。


折敷をお出しする前に水屋でパチリ・・・なかなか写真が撮れないので

再び待合へ動座して頂き、懐石はテーブル席でお出ししました。
膝や腰の故障を抱えている亭主の苦肉の作ですが、長時間の正座から懐石の間だけでも解放されるので、テーブル席は好評のようです。

懐石料理人・佐藤愛真さんが作ってくださった懐石をお出ししました。
口切の茶事らしくお目出度い季節の食材を使い、柿と栗を取り入れた献立をご覧ください。
皆さま、美味しい!と食べてくださって、亭主も嬉しい懐石タイムでした。


  えぼ鯛の幽庵焼  器(俎盤)は魯山人造


 飛竜頭、菊菜、紅葉麩の炊き合わせを雲錦鉢に盛って

 懐石献立
   向付  鯛の昆布〆め 水前寺海苔 防風 山葵加減酢
   汁   菊団子 しめじ 白味噌 辛子 
   つぼつぼ  柿なます
   煮物椀 銀杏のすり流し 車海老 蕪  軸連草 黄柚子
   焼物  えぼ鯛幽庵焼
   預鉢  飛竜頭 菊菜 紅葉麩の炊き合わせ 針柚子
   箸洗  ほんだわら(神馬草とも・・・)  梅香仕立
   八寸  光琳菊唐墨  炙り栗の甘露煮
   湯桶
   香の物 沢庵 小茄子 赤蕪


  純米吟醸・生酒「女城主」(岩村醸造)


 岩村城下町(恵那市)の岩村醸造(幅が狭く奥が深~~いお店でした)

日本酒は、11月11日~12日の大学同期会旅行で訪れた、岐阜県恵那市岩村町の岩村城下町で購入した「女城主」(岩村醸造)をお出ししました。
「女城主」といえば、昨年の大河ドラマ「おんな城主・直虎」が有名ですが、直虎と同時代、戦国の世に翻弄されながら必死に生きた岩村城の「女城主おつや」の逸話に因む「純米吟醸」です。
燗をすると甘口、そのままだと辛口でさわやかフルーティな香り、違う味わいが2回楽しめたようです。


    金団「手向け山」(石井製)

蓋付漆器に入った金団(きんとん)「手向け山」(石井製)をお出しし、腰掛待合へ中立をお願いしました。(つづく)


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2018年口切の茶事を終えて・・・1

2018年12月06日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)



2018年11月24日(土)に口切の茶事をしました。
昨年は思わぬ右膝の故障のため口切の茶事を中止したので、2年ぶりでした。
・・・それで、何はともあれ無事に終わることができ、感無量です。

お客さまは6名さま、S先生の東京教室で共に研鑽を重ねている方々で、
お正客Aさま、Yさま、Nさま、Hさま、Tさま、詰は暁庵社中のKTさまにお願いしました。
口切の茶事が初めての方もいらして、皆さま、楽しみにきてくださいました。

10時半頃に詰KTさまの打つ板木の音が聞こえ、半東Fさんが白湯をお出し、腰掛待合へご案内しました。
待合の掛物は「秋耕」(野沢蓼洲画)、煙草盆は春慶塗、火入は冠手の染付です。
その日は天気も良く風もなかったので、腰掛待合でしばしご歓談いただきました。
待合の煙草盆は春慶塗、火入は冠手の染付です。



水桶を持って迎え付けに出ました。
蹲踞を清め、水桶から流れででる「ザァッ~!」という水の音と共にもろもろの雑念が洗い流され、茶事へ集中する気持ちが高まります。
「お正客Aさま、ご連客の皆さま、口切の茶事へようこそお出まし下さりました。ありがとうございます」
・・・そんな気持ちを込めて無言の挨拶を交わしました。

席入りの衣擦れを心地好く襖の外で聞きながら、頃合いを見て襖を開けると、
「どうぞお入りください」の声が掛かりました。
皆さまのお召し物がステキ!でした。 
いつもS先生のお稽古場でうっとりと見ているのですが、その日は口切の茶事ということで、気合の入った(?)お召し物でいらしてくださり、ありがとうございます。
お一人お一人とご挨拶をしながら見惚れてしまいました。
(忘備録・・・暁庵は菊の地紋のある紫の無地紋付に、水色地に金銀の羽根(?)模様の帯を締めました)


「遠山無限碧層々」
(紫野 太玄和尚筆)を床に掛けました。
(えんざん かぎりなし へきそうそう)

遠く果てしなく続く碧の山々・・・それは一山登れば、その先にまた新たな山があり、ゴールのないお茶の道のように思われました。
以前は、その山道を高みを目指して一人登っていましたが、周りを見ると同じ志を持つ方々が沢山いらして、今は一緒に登っている喜びを感じます・・・そんなお話をしたような・・・。

お正客Aさまから「何卒、御壷の拝見を・・・」と御声が掛かり、いよいよ口切です。
小習いの壺荘に従って、口を切る前に茶壺を拝見して頂きました。



茶壺は仁清作の色絵吉野山図茶壺の写しです。
仁清作の色絵吉野山図茶壺は2つが現存し、静嘉堂文庫美術館と福岡市美術館に収蔵されていて、いずれも重要文化財です。
静嘉堂文庫美術館のを見たことがありますが、一部、黒釉薬が掛かり夜桜のような趣きなので暁庵のものとは明らかに違います。
実物を見ていないので断定できませんが、福岡市美術館の茶壺の写しではないかしら?

  ”みよしの”の 山をいろどる花の雲
        今やにしきの時雨ふるらし   暁庵


仁清写の茶壺を銘「みよしの」と名づけて愛でています。
吉野山の桜の景が描かれていますが、よく見ると次のように見えてきました。

朝陽が雲の中から顔を出し、吉野の山を薄紅色に照らし出します。
徐々に山々に陽がふりそそぎ、華やかな桜満開の山々が重なります。
夕方になり残照を残して陽は山の向こうへ沈んでいきました
・・・吉野山の一日の景でもあり、人の一生のようにも思えます。

それで、全員にお正客と同じに上座から下座へ向けて壺をゆっくり回して賞玩して頂きました。


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2018年「炉開きの会」・・第2部

2018年12月02日 | 暁庵の裏千家茶道教室


不思議なお茶のご縁に導かれて・・・ (布絵「茶」 森下たか子作

(つづき)
第2部は、スウェーデン家庭料理のディナーパーティです。

サプライズ・・・ということで、直前まで内緒にしてましたが、オーネルさんが前日から我が家に泊まり込み、腕まくりで料理を作ってくださいました。
「何か社中の皆様にお礼をしたい・・・」と、来日前からメールで相談し合い、スウェーデンの食材を持参してくださったのです。
10月半ば頃、スウェーデンから次のようなメールが料理の写真付きで届きました。

 オーネルさんのメール

暁庵先生
過ごしやすい季節になりましたね。お変わりありませんか。
私の日本への出発も近くなりました。「炉開きの会」の料理を考えているのですが 
1.グブロ-ラ (Bubbröra)  
ニシンの酢漬けを細かく切って ゆで卵、ネギ、デル サワ-クリ-ム混ぜたものを 薄い黒パンの上にのせる。




2.生か燻製の鮭の薄切りとクリ-ムチ-ズを薄いパンに巻いて、巻きずしみたいにカット



3.クルスタデス (croustades)
すでに出来たミニフォ-ムに 生クリ-ムで味を付けキノコをのせる。 
スエ-デンで取れる黄色いカンタレルというキノコを・・・と思っていますが出来るかどうか。だめだったら日本のキノコで作ります。




4.スエ-デンのチ-ズを持って行きます。 
出来たらこれを使ったパイをと思っていますが、先生の所オ-ブンありますか。 
なかったらそのままでもおいしいと思います。たとえば果物とチ-ズを同じ大きさにカットして爪楊枝でとめてお出しします。

・・・こんな料理を考えていますが、いかがでしょうか。
黒パン、薄いパン、クルスタデス、チ-ズ、ニシンの缶詰を持って行きます。
他にも考えてみますが今の所、こんなものです。 
お菓子も一応持って行きますが 皆さんのお口に合うかどうか。。。。


  

  サプライズのお料理がたくさん並びました


もう、みんなでおしゃべりもしないでパクつきました。美味しかった・・・。
どれも初めて頂くスウェーデン料理で、見た目も盛付もお味も和食とは違い新鮮でした。
オーネルさま、ご馳走さま!


 暁庵のメール
オーネルさんへ      
無事にスウェーデンへお帰りになったのですね。
寒そうな写真も届いていますのでブログに掲載します。


(その日はマイナス15℃だったとか・・・夏のサマーハウスを懐かしく思い出します)

この度はお疲れ様でした・・・でも、きっと素晴らしい1ヶ月だったことでしょう。
いろいろなことを思い出しながら、どうぞゆっくりお疲れを癒してください。

「炉開きの会」ではたくさんのお料理を作ってくださって、本当にありがとうございました。
きっと皆さまにもオーネルさまの御気持は伝わっていることでしょう。
ワイワイガヤガヤ・・・第1部のお稽古も第2部のディナーパーティも楽しい思い出になりますね。
Tさんが欠席だったのは残念ですが、山本由香さんが参加してくださってヨカッタ!です。

思えばオーネルさんとは不思議なお茶のご縁ですね。
オーネルさんのお知り合いで、日本で短期間でもお稽古をしてほしいという方がいらしたら、遠慮なくご紹介ください。
どちら様でも喜んでお迎えさせて頂きます。
・・・というのも、きっとお茶の神様がご縁を導いてくださっていると思いますので。


今度はご主人ホーカンさんと一緒にいらしてください。いつでも大歓迎です。


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