
2018年11月24日(土)に口切の茶事をしました。
昨年は思わぬ右膝の故障のため口切の茶事を中止したので、2年ぶりでした。
・・・それで、何はともあれ無事に終わることができ、感無量です。
お客さまは6名さま、S先生の東京教室で共に研鑽を重ねている方々で、
お正客Aさま、Yさま、Nさま、Hさま、Tさま、詰は暁庵社中のKTさまにお願いしました。
口切の茶事が初めての方もいらして、皆さま、楽しみにきてくださいました。
10時半頃に詰KTさまの打つ板木の音が聞こえ、半東Fさんが白湯をお出し、腰掛待合へご案内しました。
待合の掛物は「秋耕」(野沢蓼洲画)、煙草盆は春慶塗、火入は冠手の染付です。
その日は天気も良く風もなかったので、腰掛待合でしばしご歓談いただきました。
待合の煙草盆は春慶塗、火入は冠手の染付です。

水桶を持って迎え付けに出ました。
蹲踞を清め、水桶から流れででる「ザァッ~!」という水の音と共にもろもろの雑念が洗い流され、茶事へ集中する気持ちが高まります。
「お正客Aさま、ご連客の皆さま、口切の茶事へようこそお出まし下さりました。ありがとうございます」
・・・そんな気持ちを込めて無言の挨拶を交わしました。
席入りの衣擦れを心地好く襖の外で聞きながら、頃合いを見て襖を開けると、
「どうぞお入りください」の声が掛かりました。
皆さまのお召し物がステキ!でした。


いつもS先生のお稽古場でうっとりと見ているのですが、その日は口切の茶事ということで、気合の入った(?)お召し物でいらしてくださり、ありがとうございます。
お一人お一人とご挨拶をしながら見惚れてしまいました。
(忘備録・・・暁庵は菊の地紋のある紫の無地紋付に、水色地に金銀の羽根(?)模様の帯を締めました)
「遠山無限碧層々」(紫野 太玄和尚筆)を床に掛けました。
(えんざん かぎりなし へきそうそう)
遠く果てしなく続く碧の山々・・・それは一山登れば、その先にまた新たな山があり、ゴールのないお茶の道のように思われました。
以前は、その山道を高みを目指して一人登っていましたが、周りを見ると同じ志を持つ方々が沢山いらして、今は一緒に登っている喜びを感じます・・・そんなお話をしたような・・・。
お正客Aさまから「何卒、御壷の拝見を・・・」と御声が掛かり、いよいよ口切です。
小習いの壺荘に従って、口を切る前に茶壺を拝見して頂きました。

茶壺は仁清作の色絵吉野山図茶壺の写しです。
仁清作の色絵吉野山図茶壺は2つが現存し、静嘉堂文庫美術館と福岡市美術館に収蔵されていて、いずれも重要文化財です。
静嘉堂文庫美術館のを見たことがありますが、一部、黒釉薬が掛かり夜桜のような趣きなので暁庵のものとは明らかに違います。
実物を見ていないので断定できませんが、福岡市美術館の茶壺の写しではないかしら?
”みよしの”の 山をいろどる花の雲
今やにしきの時雨ふるらし 暁庵
仁清写の茶壺を銘「みよしの」と名づけて愛でています。
吉野山の桜の景が描かれていますが、よく見ると次のように見えてきました。
朝陽が雲の中から顔を出し、吉野の山を薄紅色に照らし出します。
徐々に山々に陽がふりそそぎ、華やかな桜満開の山々が重なります。
夕方になり残照を残して陽は山の向こうへ沈んでいきました
・・・吉野山の一日の景でもあり、人の一生のようにも思えます。
それで、全員にお正客と同じに上座から下座へ向けて壺をゆっくり回して賞玩して頂きました。
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