(つづき)
御茶入日記を持って、拝見が終わった茶壺を取りに行き、次いで葉茶上合一式を持ち出します。
お客さまが息を詰めるように見つめる中、小刀でゆっくりと合口を確かめながら切っていくと、蓋が開きました。開けるとすぐに茶の香りがぷぅ~んと鼻をくすぐります。
「いずれのお茶を差上げましょうか?」
「ご亭主におまかせいたします」とお正客Aさま。
「それでは”無上(むじょう)”を差し上げたいと思います。
京都・柳桜園が炉開きの時季のみに特別販売しているお茶ですが、天王寺屋会記に口切に”無上”を使った・・・との記述があり、これから茶銘が付けられたのかもしれません」
(陰の声・・・お招き頂いたYさまの炉開きの茶事で、はじめて”無上”(柳桜園詰)を頂戴し、その美味しさに感激しました。急ぎ、京都から取り寄せました)
詰茶を葉茶上合に少し取ってから、”無上”と書かれた半袋を取り出し、曳家へ入れます。
詰茶を詰と書かれた挽家に入れ、残りを茶壺に戻し、封をし印を押しました。
茶壺が封印され、諸道具を水屋へ戻し、壷を網袋へ入れて水屋へ持って下がります。
最後に御茶入日記を下げ、茶道口で総礼して口切が終わりました。
(次いで初炭ですが、省略させていただきます・・・)
名客様のおかげで、10時半の席入りから口切、そして初炭までスムースに運び、懐石の時間まで少し余裕がありましたので、小さな石臼を持ち出して、お客さまに「お茶を挽く」体験をして頂きました。
みんなで臼を挽きながら和やかにお話が弾み、これも口切の好い思い出になりました・・・。
折敷をお出しする前に水屋でパチリ・・・なかなか写真が撮れないので
再び待合へ動座して頂き、懐石はテーブル席でお出ししました。
膝や腰の故障を抱えている亭主の苦肉の作ですが、長時間の正座から懐石の間だけでも解放されるので、テーブル席は好評のようです。
懐石料理人・佐藤愛真さんが作ってくださった懐石をお出ししました。
口切の茶事らしくお目出度い季節の食材を使い、柿と栗を取り入れた献立をご覧ください。
皆さま、美味しい!と食べてくださって、亭主も嬉しい懐石タイムでした。
えぼ鯛の幽庵焼 器(俎盤)は魯山人造
飛竜頭、菊菜、紅葉麩の炊き合わせを雲錦鉢に盛って
懐石献立
向付 鯛の昆布〆め 水前寺海苔 防風 山葵加減酢
汁 菊団子 しめじ 白味噌 辛子
つぼつぼ 柿なます
煮物椀 銀杏のすり流し 車海老 蕪 軸連草 黄柚子
焼物 えぼ鯛幽庵焼
預鉢 飛竜頭 菊菜 紅葉麩の炊き合わせ 針柚子
箸洗 ほんだわら(神馬草とも・・・) 梅香仕立
八寸 光琳菊唐墨 炙り栗の甘露煮
湯桶
香の物 沢庵 小茄子 赤蕪
純米吟醸・生酒「女城主」(岩村醸造)
岩村城下町(恵那市)の岩村醸造(幅が狭く奥が深~~いお店でした)
日本酒は、11月11日~12日の大学同期会旅行で訪れた、岐阜県恵那市岩村町の岩村城下町で購入した「女城主」(岩村醸造)をお出ししました。
「女城主」といえば、昨年の大河ドラマ「おんな城主・直虎」が有名ですが、直虎と同時代、戦国の世に翻弄されながら必死に生きた岩村城の「女城主おつや」の逸話に因む「純米吟醸」です。
燗をすると甘口、そのままだと辛口でさわやかフルーティな香り、違う味わいが2回楽しめたようです。
金団「手向け山」(石井製)
蓋付漆器に入った金団(きんとん)「手向け山」(石井製)をお出しし、腰掛待合へ中立をお願いしました。(つづく)
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