暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

蓮華院・名残の茶会 (1)香席

2011年10月22日 | 三溪園&茶会
                       (三溪園 臨春閣)
10月16日(日)に三溪園蓮華院で名残の茶会をしました。

蓮華院で残り少なくなった茶の時季を愉しんで頂くとともに
来春、一時横浜を離れ、京都へ行く予定があり、
ご指導頂いた先生方、親しみ励んだ茶友との名残の一会でもありました。

どんよりした曇り空の下、三溪園へ着くと、
正門前には車と着物姿の女性がずらり並んでいます。
茶会シーズンで淡交会横浜支部茶会があるとか・・・。
8時30分に開門し(茶会当事者のみ)、各茶席に別れて準備を始めます。

蓮華院水屋では、スタッフ五人が運び込まれた荷物を解き、
役割に応じて支度を始めました。
半東のKさんは一番に運ばれた風炉で灰形を整えています。
Iさんは火を熾し、香席の準備をしています。
案内兼水屋のNさんは動線や蹲を確認し、茶を掃いています。
水屋のSさんは荷を解きながら湯を沸かし、
水屋を使いやすいように整えてくれています。
そして、私は本席である広間の設えです。

               
                        (三溪園 蓮華院)
茶会は第一席が10時~12時、第二席が13時~15時、
各席八名さまです。
準備開始1時間が経ったころ、最初のお客様がいらっしゃいました。
Nさんが小間(二畳中板)の寄付へご案内し、そこから土間の待合へ。

広い土間は最も蓮華院らしい魅力的な空間で、簡素な椅子席を用意しました。
真ん中にある大きな円柱は宇治平等院翼廊の古材、
三溪翁の自筆「蓮華院」という扁額が掛かっています。
円柱の奥に半間四方の石の露台(ろだい)があります。
露台とは方(宝)形造の建物の屋根の頂きに置かれる部材だそうです。
露台を囲んでIさんに香席をお願いしました。

               
                 (蓮華院 土間にある露台)
               
                           ( 香席 )
明かりとりの窓はありますが、扉を閉めると薄暗く、
まるで寺院にいるような荘厳な別世界となりました。
Iさんが香炉の灰を整え、お客様はIさんの手元を静かにみつめます。

茶の点前のように無駄のない所作で灰筋を入れていくのですが、
真行草があるそうで、今回は草です。
試しの香を聞いてから、香炉がお正客へ回されました。
順次手渡しで、香をゆっくり聞いて頂きました。

香の十徳(伝・一休宗純作)より
   感格鬼神  清浄身心 (霊魂や神と感応をし、心や身体を清める) 

香は伽羅、香銘は三夕の一つ、藤原定家の歌から「浦の苫屋」です。

    見渡せば 花も紅葉もなかりけり
        浦の苫屋の 秋の夕暮    藤原定家

                 
                        (蓮華院の風流な蹲)

扉を開けて、半東のKさんが迎え付けです。
土間席前の蹲を使って、広間へ席入して頂きました。

    (蓮華院・名残りの茶会(2)へつづく))       その日は のち 



   

矢指谷戸の秋桜

2011年10月20日 | 閑話休題
               
                      (矢指谷戸の秋桜)

ただ今、ブログお休み中ですが、
10月20日、花月の稽古の帰りに矢指谷戸(横浜市旭区)へ寄りました。
秋桜(コスモス)が満開です。
明日から天気が崩れそうなので、あわてて写真に撮りました。

               
                       (こちらは野紺菊です)

                                      
  
                           

小林芙佐子先生の仕覆ワールド

2011年10月12日 | 茶道具
小林芙佐子先生の「茶道具と仕覆」の展示会
  10月18日から31日まで開催されます。

小林芙佐子先生に仕覆を習い始めて1年9ヶ月がたちました。
小林先生のことはよく知らずに、近くで教えてくださる方がいれば・・・
と、そんな軽い気持ちでした。

通いだすと、仕覆のプロの使う技や道具はびっくりすることばかりでした。
例えば、長さの単位は尺、寸、分です。
道具は市販品に工夫を加えたり、手づくりや特注品です。
つがりはミツクリを使って撚って作り、
紐は全て布に合わせて絹糸を選び、組紐台を使って組みます。

先生のお話だと、職人の師から目で見て(盗んで)覚えたそうですが、
その技を惜しげなく、お教え頂き感謝しています。
凄い先生・・と思っていましたが、その認識が甘く半端だったことに
先日やっと気づきました。
展示準備中の茶道具と仕覆を見せて頂いたのです。

                
                      (ミツクリと絹糸の束)
                
                      (ご案内の葉書より)

長年、時間をかけて収集した茶籠や茶箱。
その中には一つまた一つと選ばれた、茶入、茶碗、茶筅筒、茶杓などが
魅力的な布の仕覆に包まれて入っています。

数点を見せてくださいました。
初めて玉手箱を開けて・・・という感じでしょうか。
この展示の機会をのがしたら、二度と味わうことが出来ないだろうと思える、
小林芙佐子先生の確固たる美と哲学の小宇宙がそこにありました。

「あぁ~。私は先生のことをまったくわかっていなかった!
 私が触れて見たと思ったものは、先生の大きな世界の
 百分の一にも達していなかったのだ・・・」
と正直思いました。               
                       
茶道具と仕覆の調和、裂地のセンスと使い方・・・学びたいことばかりです。
かつて五島美術館でガラス越しに見たような更紗や裂が目の前にありました。
収集された世界中の更紗や貴重な金襴が整理され、手帖になっています。
会期中はできるだけ会場へ行って、どっぷり先生の仕覆ワールドに浸って
いろいろなことを体得したいものです。

「茶道具と仕覆」展へのご来場を心からお待ちしております。
 どうぞ 気軽にお声掛けください。
                           

  **** 「茶道具と仕覆」展 へのご案内 *****

   小さな、茶籠や茶箱の中からとりどりの布に
   くるまれた宇宙をお楽しみ下さい。
   会期中、一部販売もいたしております。 
                    小林芙佐子 

   会期  2011年10月18日(火)~31日(月)
   会場  ギャラリー伯楽 (古美術 伯楽)
        11:00~17:00
        横浜市神奈川区神奈川町1-14-7 丸二ビル1F
        (横浜逓信病院の東側隣り)
        TEL 045-322-2979

   アクセス  JR東神奈川駅より徒歩3分
           東横線東白楽駅より徒歩3分

   


 追伸) 三溪園・蓮華院の茶会を控えています。
        茶会へ専念いたしたく、しばらくブログをお休みします。 

                             


観月茶会(3) 蔦の細道

2011年10月10日 | ハイキング・ぶらり散歩
お茶の郷・観月茶会の翌日、茶会へ参席した三人で
宇津ノ谷峠(うつのやとうげ)にある「蔦の細道」を歩きました。

宇津ノ谷峠は藤枝市岡部町と静岡市駿河区宇津ノ谷の間にあって、
峠を越す道が平安時代から現代まで時代に応じて造られ、
五つの道が現存しています。
その一つ、「蔦の細道」は平安時代の最も古い道で、
在原業平が東下りの折に通りかかり、和歌を詠んでいます。

   駿河なる 宇津の山べの うつつにも
       夢にも人に あわぬなりけり   業平

 
藤枝市岡部町側から道の駅を通り抜け、蔦の細道公園に車を停めました。
公園には在原業平、鴨長明、阿仏尼らが詠んだ歌や漢詩の板碑が
ずらりと並んでいます。
川添いに舗装された山道を登っていくと、
「蔦の細道」と書かれた石碑があり、けわしい古道になりました。

「この急峻な道を市女笠の女人が登って行ったのかしら・・・」
と思いながら、急な勾配、石がごろごろした道を喘ぎながら登りました。
茶畑やみかん畑もあり、今では山奥という感じはありませんが、
当時は蔦の生い茂る寂しい難所だったことでしょう。

                
                      (蔦の細道を行く)
                
                      (峠から岡部町方面の眺め)

急坂にやっと身体が慣れてきた頃、見晴らしの良い場所へ出ました。
藤枝市岡部町の方角が見渡せ、業平の歌が刻まれた歌碑があります。
ここが「蔦の細道」の峠で、ここから静岡市丸子方面へ下ります。
「さぁ、これからが本番!」と思っていたので、あっけない道のりでした。
杉林の道を下ると、現代の道・国道1号線に出ました。

                
                
                      (宇津ノ谷の集落)

旧東海道の丸子宿と岡部宿の間に宇津ノ谷という間宿(あいのしゅく)があり、
屋号をかかげた家並みが街道の面影を伝えています。
その一軒、お羽織屋と呼ばれる石川家に寄りました。
天正18年(1590年)3月、小田原の北条氏征伐に通りかかった
豊臣秀吉から拝領した「陣羽織」が飾られています。

                
                       (岡部宿の柏屋)

宇津ノ谷の集落を過ぎ、国産レンガで造ったという明治のトンネルを抜け、
旧東海道を歩き、元の蔦の細道公園へ戻りました。
ゆっくり見ながら2時間くらい歩いたでしょうか?
岡部宿の大旅籠(おおはたご)「柏屋(かしばや)」を見学してから
Mさんに焼津駅へ送ってもらい、また鈍行に乗って帰ってきました。

電車に乗るとすぐにぐっすり。
Hさんに声を掛けられ、車窓を見ると
富士山が青々と美しく、白い雲を従えて聳えていました。

     (観月茶会(2)へ)                         

                    

観月茶会(2) 月に逢う  

2011年10月07日 | 茶会・香席
お茶の郷・友賢庵の観月茶会(三席目)は18時30分からはじまりました。
遠州お好みの友賢庵は長四畳台目で、一席七名でした。

寄付の縦目楼(しゅうもくろう)は、遠州が住んでいた伏見奉行屋敷と、
松花堂相乗が住んでいた石清水八幡宮滝本坊を合わせたもので、
寛永時代の建築物を図面から起し、復元しています。

俳画が掛けられていて、月との最初の出逢いでした。

               
             「花なくて 明けてもみなん けふの月」(たぶん・・・)

縦目楼の奥の臨水亭(伏見奉行屋敷の鎖の間ゆらい)が点心席でした。
床には「掬水月在手」、紫野寛道和尚の筆です。
こちらで水に映る月に出逢いました。

書院の窓にはススキ、月見だんご、衣かつぎ(里芋)が飾られています。
ライトアップされた観月台や池庭が幻想的に浮かび上がる様は、
夜の茶会ならではの醍醐味でしょうか。
松花堂弁当、吸い物、一献を頂戴しました。

点心のあと、提灯を持って庭をぐるっと巡り、小間席へ。
広い庭は小堀遠州作の仙洞御所東庭を五分の一に縮尺した回遊式庭園で、
直線と曲線を巧みに組み合わせた作庭がお好みだとか。

縦目楼の反対側の庭へ出ると、やっと月が見えました。
三日月が澄んだ夜空に神々しく輝いています。
「満月も好いけれど三日月もまた佳きかな・・・」
と、三人で妙に納得して見入りました。

               
               

   野に山にうかれうかれて帰るさを
       寝屋まで送る秋の夜の月   蓮月

友賢庵の床に大好きな蓮月の歌が掛けられ、四つ目の月に出逢いました。
長四畳台目席にゆったり七人が座り、点前が始まりましたが、
私の席から点前は見えず、水指の後姿だけが見え気になっていました。
あとで席主から耳付水指は利陶造の志戸呂焼と伺い、嬉しい出会いでした。
菓子「野辺の秋風」と薄茶(地元のオリジナル)を美味しく頂戴しました。

最後にもう一つ、月を見ました。
一瓢造、秋草蒔絵の棗にうっすらと蓋表に月が・・・。
とても暗かったので席主に言われて気が付きました。
たくさんの月との出逢いを楽しんだ観月茶会でした。

               

帰りにはいくら捜しても雲に隠れ
「さっきの美しい三日月は幻だったのかしら?」

                     
     (観月茶会(1)焼津へ)      (観月茶会(3) 蔦の細道へ)