暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

観月茶会(1) 焼津へ

2011年10月05日 | 茶会・香席
島田市お茶の郷博物館の観月茶会へ一泊で出かけました。
前回、お茶の郷博物館の茶室を見学した時に観月茶会のことを伺い、
「ぜひ行ってみたい!」と思ったのです。
10月1日(土)の第三席へ三名で申し込みました。

10月1日の朝、熱海行きの鈍行へ乗り、電車を乗り継いで
11時40分頃焼津駅に到着しました。
途中で、同行のHさんと合流しました。
大学時代からの親友Mさんが焼津駅まで出迎えてくれて
焼津魚センターと小泉八雲記念館へ案内して頂きました。

焼津漁港から水揚げされた魚たちが美味しそうに並んでいます。
キンメダイ、キンキ、カマス、アジ、イカ、タチウオ・・・。
遠洋漁業の基地でもあるので、魚センターの寿司屋おすすめの
中トロ海鮮丼で舌鼓です。
明日の朝食に、シラスの大根おろしとカマスの塩焼きを
Mさんにリクエストしちゃいました・・・秋ですね。

               
                  ( 小泉八雲がスケッチした焼津の海 )

焼津小泉八雲記念館(焼津市三ケ名)へ寄ってみました。

展示によると、小泉八雲が松江、熊本、神戸を経て東京に住んでいた頃、
毎年夏になると、魚屋・山口乙吉さんの2階を借りて避暑に訪れたそうです。
1897(明治30)年の8月に初めて焼津を訪れてから
1904(明治37)年9月26日に54歳で亡くなるまで
6回の夏を焼津で過ごしています。
深くて荒い焼津の海と山口さんら土地の人との
あたたかく素朴な交流が気にいっていたとか・・・me,too.

東京のセツ夫人や子供たちへ宛てた手紙が展示されていました。
文豪・小泉八雲のイメージとは違う、子煩悩な父親の姿が
日本語で書かれた行間から滲み出ていました。
焼津の夏の日々を書いたという著書「東の国から 心」の
「夏の日の夢」を読んでみたい・・と思っています。

               
               

宿をお願いしているMさん宅で小休止してから着物に着替え、
「いざっ! 観月茶会へ」繰り出しました。
途中、Kさん(Mさんのご主人)が曼珠沙華がきれいだという場所へ
案内してくれました。

大井川支流の土手に赤と白の曼珠沙華がまっさかりでした。
この花は赤だけだとどぎつく感じるのですが、白い曼珠沙華がほどよく緩和して
こんなにきれいな群落は初めてです。
夕闇迫まる川辺を四人で散策しながら夢中でシャッターを切りました。


        (観月茶会 (2)へ)        



潮香る町の名残りの茶事 (2)

2011年10月02日 | 思い出の茶事
後座の床には、白花の藤袴、吾亦紅、小花ホトトギスが入れられ、
亀甲竹の尺八が詫びた風情です。

細く小さな炭でしたが、ご名炭で湯相が整えられています。
襖が静かに開き、ご亭主の濃茶点前が始まりました。
Kさんも私も緊張気味でしたが、ご亭主のY先生はいつものように
お点前をご自分のリズムでなさっています。
仕覆(紺地二重蔓牡丹金襴)が脱がされ、黒い茶入が現れました。

帛紗をさばき、茶入を清めるとき、幽かな音がしました。
それは茶入と帛紗の出会いが偶然生み出したもので、
早く清めると高らかに、ゆっくりになると囁くように聞こえます。
このような清めの音を味わうのは初めてで、素敵な経験でした。
茶入は立杭焼・小仏丹山作、帛紗は橙色系で徳斎作です。

濃茶が煉られ、香り好くたっぷり美味しく頂戴しました。
茶碗は大樋焼飴釉、濃茶は小山園の式部の昔です。
「炭を改めさせていただきます」
と後炭が始まりました。

茶事で初めて五行棚の後炭手前を拝見し、続いて風炉中拝見です。
月形に埋められた藤灰の風情も好ましく、狭い火床にもかかわらず
しっかりと火が熾っていて、ご亭主の精進が偲ばれました。

               

煙草盆、干菓子盆が運ばれ、くつろいで薄茶を二服頂戴しました。
五行棚に荘られていた朱色の平棗は詫びた席を引締め、
華やかな存在感がありました。
手に取ると、手に余るほど大振りで時代を感じさせます。
蒔絵はススキ、表蓋に銀の月が浮かんでいました。
しっかりした作りの茶杓は大亀和尚銘「おくのほそみち」。
「茶の道を奥深く学んでいきましょう」という意だそうです(ステキですね・・)。

最後に気になっていたあの帛紗を拝見させて頂きました。
京都での茶の修行が修了となった時、
亡き師匠から一揃いの帛紗(徳斎作)が贈られたそうで、
全部を見せてくださいました。

想いでの宝物を拝見しながら、先ほどの清めの音を思い出していました。
今思うと、「鳴き砂」に似た音色だったようにも思えます。

また、茶友と共に潮香る町の茶事にご縁がありますように。
我が家の拙い茶事へもお出ましくださると嬉しいです。

                            
     ( 潮香る町の名残りの茶事(1)へ)