暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

胸キュンの旧国立公衆衛生院

2011年11月16日 | 美術館・博物館
畠山記念館を訪れた帰り、来た道を白金台駅へ戻りました。
やっとこの頃になって頭の中にある地図が動き始めました。
「日吉坂上」の表示とバス停、「八芳園」も目に入ってきましたが、
趣ある商店が軒を並べていた、以前の白金台の面影は見つかりません。

「もう無いと思うけれど・・・」
とバス停「日吉坂上」へ向かいました。
すると、とっくの昔に壊されたと思っていた旧国立公衆衛生院の建物が
私の記憶と変わらずに聳えていました。

                 
                 
西欧の城砦を思わせる、塔のある赤煉瓦の建物を見た途端、
胸がキュンとなりました。
建築家・内田祥三によって設計され、1938年(昭和13年)に竣工した、
二つの塔のある巨大な建造物です(詳しくは下記参照)。

旧国立公衆衛生院は、日本の公衆衛生の向上を目的とした調査研究機関で、
米国ロックフェラー財団より多額の寄付を受け、1938年に設立されました。
2002年(平成14年)に改組廃止され、現在は国立保健医療科学院となり、
埼玉県和光市へ移転しています。

仕事の関係で何度も通った旧国立公衆衛生院ですが、
今は人が出入りできないように閉鎖されていました。
遠くから写真を撮って帰宅しましたが、
封印が解けたようにいろいろな場面が懐かしく甦ってきました。

                 
                 

1か月の新人研修で、分析機器を動かしデータをとった実験室。
講習会場の講堂は階段式で、高い窓や天井が印象に残っているけれど、
夏は天井の扇風機のみ、暑さでふらふらになったことも・・。

内田ゴシックともいわれる建物の中の一番美しい場所は、
玄関正面のロビーと踊り場のある優雅な階段だと今でも思う。
階段を下りるとき、実験中のことも白衣のことも忘れ、
舞踏会へ行く素敵なドレスの貴婦人になった気分を楽しんだっけ・・。

                
                 

そして、極めつけは化粧室(つまりトイレ)。
「本当にトイレなの?」と思うほどの広い空間は大理石が敷き詰めれ、
優雅に二つの個室がありました。
入るたびに「公衆衛生院にきている」ことを体感させられる、
存在感のあるトイレでした。
男子トイレも同じ思想で作られていることでしょう・・・。
(もちろん、覗いたことはありません、念のため)

                 
                 

旧国立公衆衛生院を見て、実感してもらいたくて
カガミ建築計画の各務氏のブログを拝見して、写真提供をお願いしました。

私にとって、茶の湯ではなく仕事に熱中していた時代の思い出の場所ですが、
各務氏にとっても、子どもの頃忍び込んで、野球をしたり、
建物の中を探検したりと、やはり思い出の場所だったようで、
なんか嬉しくなりました。
写真提供をご快諾いただき、ありがとうございました。

                 
                 
この由緒ある、文化遺産ともいえる建造物が今後も残され、
大事に活用されることを切に願っています。

          (前へ)               


旧国立公衆衛生院の建物

所在地  東京都港区白金台4-6-1
設計者  内田祥三
施工   大倉土木
構造形式 鉄骨鉄筋コンクリート構造、鉄筋コンクリート構造
建築面積 2,923.09平方メートル(884.459坪)
延床面積 15,090.75平方メートル(4,564.748坪)
階数 地下2階、地上7階、塔屋2階
高さ 塔屋約36.20メートル、5階約23.10メートル
着工 1935年(昭和10年)3月
竣工 1938年(昭和13年)10月

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