暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

車で四国遍路・・・(6)室戸の空と海と夕陽

2019年09月03日 | 車で四国遍路

    道の駅「キラメッセ室戸」の食堂「食遊 鯨の郷」から見た夕陽

つづき)
第23番薬王寺から次の第24番最御崎寺(ほつみさきじ)までは75.4kmあり、歩き遍路では2泊3日の長く辛い行程だったのが、車だと1時間余で着いてしまいます。
なにか大事なものを見落としているようで、早く着きすぎるのが残念な気がします。
室戸岬にかけて寄り道をしたい番外霊場が点在しています。

先ずは室戸市佐喜浜入木の番外霊場・佛海庵(ぶっかいあん)。
国道55号線に看板が出ていたので、今回も寄ってみました。

僧佛海(1700~1769)は諸国行脚や24回の四国霊場巡礼の後、宝暦10年(1760年)庵を建て、お地蔵さんの石像を自ら刻んでお祀りしました。海辺の難所で立ち往生する遍路を助けたという佛海は生涯に三千体の仏像や地蔵を作り、「木喰佛海」の名が仏像に刻まれています。



10年前に「四国遍路」(岩波新書)の著者・辰濃和男氏の文章に惹かれて佛海庵へ立ち寄った記憶が今なお鮮明です。
1974年当時、法香さんという庵主が居て、雨に降られて困っていた辰濃氏と同行者を泊めてくれたという。五右衛門風呂を沸し、まめまめしく夕食を作ってくれた・・・と書かれています。
一番強烈なのは「ごろごろ石」のこと、次のような記述がある。

庵の前には墓があり、墓の向こうに生きものの影のない黒ずんだ石ころの浜辺があって、
風の強い日、その石の群れが闇の中で一斉にうめきだすという。
道路ができる前、お遍路さんは石だらけの海岸を歩き、難渋し、
ごろごろと鳴る石の音におびえながら先を急いだものだという。 
           (辰濃和男著「四国遍路」(岩波新書)より)


庵の前にある古い墓石群は10年前に訪れた時のままですが、佛海庵(無住)は新築されていました。お堂の中の様子は以前と変わりなく、誰でもお立ち寄りください・・・という佇まいに安堵し、お詣りしました。
昔、困窮している遍路を助けたという佛海庵ですが、今は「宿泊できません」の札が掛かっています。



        番外霊場・御厨人窟から空と海を見る

国道55号線を室戸岬へ向かい走っていると、岬の手前に番外霊場・御厨人窟(みくろど)があります。
今、御厨人窟には五所神社が、右隣りにある神明窟には神明宮が祀られています。
いつでも御厨人窟に入れると思っていましたが、海蝕による落石が頻繁に起こったため入洞が禁止されていました。入口に鉄製防護屋根が設置され、2019年4月末から入洞ができるようになったばかりで、ヘルメット着用で入りました。

洞窟は、空海著「三教指帰(さんごうしいき)」(797年)に記された
「土佐室戸崎に勤念す。谷響(たにひびき)を惜しまず、明星来影(らいえい)す」のまさに修業の場でした。(興味のある方は、空海若き日の哲学「三教指帰」をお読みください)


「聾瞽指帰」(ろうこしいき)(巻頭部分、空海撰・筆、金剛峯寺蔵、国宝)
(注・・空海24歳の著書『聾瞽指帰』は空海50代に改訂し「三教指帰」と改題された)

平安初期、青年であった弘法大師が御厨人窟で修業をし、見える風景は空と海のみ・・・後にここから「空海」の法名を得たと言われています。
また、神明窟で「虚空蔵求聞持法」の修業中に「明星が口に飛び込む」という体験をし、その時に悟りが開けたと伝えられています。



番外霊場・御厨人窟は怖いような暗闇の中に大きな海蝕洞が拡がり、賽の河原のようにおびただしい石が積まれ奉納の蝋燭がゆらいでいる、お籠り堂のような霊場でした。でもあまり長居はしたくない気がしました・・・。
ここから空と海を見ると、明星来影の神秘体験がさもありなむ・・・と。



    第24番最御崎寺の山門

第24番最御崎寺(ほつみさきじ)と第25番津照寺(しんしょうじ)をお詣りし、その日は道の駅「キラメッセ室戸」で2度目の車中泊です。


陽があるうちにツレがいろいろ寝る準備を・・・道の駅「キラメッセ室戸」駐車場にて

道の駅「キラメッセ室戸」はすぐ海が迫っているロケーションが先ず気に入りました。
食堂「食遊 鯨の郷」で頂いた夕食もデザートのジェラード(塩味)も美味しくお勧めです。  
でも一番の御馳走はサンセット。
お店の方が窓のブラインドを全開にしてくれて、まさに夕陽が落ちる瞬間を食堂に居る全員で鑑賞したのも良き思い出になりました。
その場で地図を広げ、5月22日の夕陽の沈んだ位置を推定すると、足摺岬ではなく宿毛市あたりでした。



もう一つ、感激したのはトイレに生けられた花でした。
トイレに行く度に「どんな方が生けたのかしら?」と思い、道の駅「キラメッセ室戸」のおもてなしの心を感じました。

  



夜は潮騒を聞きながら、カーテンの隙間から満点の星を仰ぎ見ながら眠りにつきました。
「あぁ~なんて素晴らしい1日だったのだろう・・・」  
車中泊2泊目なのでだいぶ身体も狭さに慣れたのか、疲れていたのか、朝までぐっすりでした。


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