暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

汲古庵・名残りの茶事(1)

2011年11月09日 | 思い出の茶事
10月30日、名残の茶事にお招き頂きました。

9月末に茶友のKさんからお手紙が届きました。
藤の咲く頃に続いて汲古庵での二度目の茶事へ嬉しいお招きです。
このたびは詰の役を仰せつかりました。

正客のHさん、次客のSさん、三客のMさんと駅で待ち合わせ、
汲古庵へ向かいました。
手入れの行き届いた庭には茶花がいっぱい。
ススキ、桔梗、ホトトギス、野紺菊、ツワブキ、白玉椿が咲き乱れ、
穏やかな秋の日差しが射しこんでいました。
関守石が玄関への案内役です。

                

待合には「秋行帰雁」の画賛。
煙草盆は欅、火入の灰が美しく調えられています。
火入は膳所焼の阿古陀、詫びた風情ながら存在感がありました。

板木を打ちました。
この日は、最初に「トトトトト」と早打し、
それから「トーン トーン トーン トーン 」 四回打ちました。
歌舞伎のきのねのように、ここから茶事が始まります。

                

露地を歩み、蹲をつかい、にじり口から入ると、
席中は明かりがほしいと思うほどの暗さです。
目をこらして床の掛物を見ると、二行の書と菊らしき画が書かれていました。
あとでご亭主から伺うのを楽しみに、点前座へ移動しました。
名残にふさわしく五行棚に黒の紅鉢、小振りな棗釜がぴったりです。

「ご亭主のようにかわいらしいお釜・・」と眺めていると、
早や襖が開きました。
「早かったようで失礼いたしました・・・。
 せっかちな者ですから、いつも早すぎる!と師よりお叱りを受けております」
でも、堂々と茶道口で待っておられました。

挨拶ののち、正客のHさんが軸についてお尋ねしました。

   荷尽己無雨蓋
   菊残猶有傲霜枝

   荷(はす)は尽きて己(すで)に雨を(ささ)ぐるの蓋(かさ)無く
   菊は残りて猶(なお)霜に傲(おご)るの枝有り

蓮の葉は枯れて雨をさえぎる傘のような姿はもう見られないけれど 
菊は残っていて霜にもめげない枝をなお保っている・・・という意味で、
「色即是空 空即是色」の禅の境地を表わしているそうです。

「名残りにぴったり・・・」と伺いながら、
つい2週間前に行った三溪園・蓮華院の茶会盛夏の蓮華、
今は枯れ果てた蓮池の様子が脳裏を横切って行きました。

                 

           (2)へつづく        
  

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