暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

如月の茶事へ招かれて (2)

2012年02月23日 | 思い出の茶事
床の掛物をお尋ねすると
「林和靖(りんなせい)と梅の画と和歌(狂歌)が書かれていまして、
 小堀権十郎の手によるものでござます」

林和靖は中国・宗時代の詩人、
長く山中に隠棲し、梅を妻の如く愛で、鶴を子どもの如く可愛がった風流人
として知られています。

小堀権十郎(遠州の三男)の狂歌をお詠み上げ頂き、
しばし梅の花と香りを愛でる林和靖その人になってみました。
この画賛を遠州流の表装で仕立てられ、一文字と中回しは時代裂のようで、
一入のお心入れを感じました。

初炭が始まりました。
釜が上げられ、羽箒で掃かれ、炉縁へ寄って中を見ると、
湿し灰は乾き、下火にはジョウがついていて、先ほどの緊迫感のある景色と違い、
時の移ろいを映し出しています。 色即是空  空即是色 

初代畠春斎造の透木釜は、荒木村重由来の平蜘蛛写(・・と記憶?)。
羽根のゴツゴツした荒肌が魅力的で、古武士のような味わいのある釜は
私のお好みです。
炭が置かれ、香が焚かれ、香合の拝見をお願いしました。

マンションなので気密性が良すぎて、熱を敏感に察知して警報が鳴りだすそうで、
すぐに障子を開けてくださいました。
火伏の効果も狙って、透木釜を選んでくださったご亭主に感謝です。

                

香合は、鶴・・・でした。
首が細く、立っている優美な姿は、林和靖が愛でた鶴のイメージにぴったりです。
尾張藩お庭窯の御深井焼(おふけいやき)ですが、
一瞬、大阪・藤田美術館で見たデルフト窯のハクチョウが頭をよぎりました。

「すてきな鶴の香合がないかしら? と念じていたら、
 茶事の直前に偶然出会ったのです」 と、にっこりのご亭主。
こちらまで嬉しくなってしまいます。 香は松栄堂の加須美です。

                

懐石が運ばれた頃、ちょうどお腹が鳴り始めました。
プロにお願いしたという懐石は、品よく美しく美味しかったです。
アツアツの一文字の甘味、ご亭主手作りのなますがつぼつぼで出され、
貝と分葱の酢味噌和えが春を運んできて、シアワセでございました・・・。

ご亭主やご連客とお話ししながら時季のものを食し、酒を酌み交わす(呑めませんが・・)。
後座の濃茶への備えながら、いつも楽しく、主客の親しみが増していく貴重な時間です。
茶室を造る際に一札を入れたエピソード、雪の山形や茶所名古屋のお話し、
名席茶会の思い出などいろいろ伺えて、楽しゅうございました。

食するのを躊躇するような、かわいらしい鶯の練きり(赤坂の塩瀬総本家製)を頂戴しました。
鶯はまだ笹鳴きかしら?
長屋門公園・正午の茶事で鳴らしたウグイス笛を想いだしながら、中立しました。


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