暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

汲古庵・名残の茶事 (2)

2011年11月11日 | 思い出の茶事
懐石のあと、いよいよ初炭です。

五行棚に黒の紅鉢がお似合いですが、
火床が狭いので初炭まで火種を持たせるのは難しく、
ご亭主の腕の見せ所でもあります。

鵜篭の炭斗に炭が小さく切られ、かわいい枝炭も入っています。
炭が置かれ、香が焚かれました。
香合は妙喜庵古材で作られた銀縁四方でした。
香が薫るころに「パチパチ」という音が幽かに聞こえ、客一同も安堵しました。

微かな薫りと筧の水音に清寂と安らぎを覚えます。
初炭が終わるころ、露地に水を撒く音が聞こえてきました。
銀杏の練切(亀屋万年堂製)を頂き、中立です。

               

銅鑼の合図でにじり口を入ると
床には白い花がぼんやり浮き立って見えました。
近づくと、秋丁子、フジバカマ、白の岩シャジンが籠に生けられていました。
炭火の赤さが黒い紅鉢に映えて美しく、濃茶への期待が高まります。

濃茶点前が始まりました。
まもなく、墨蹟窓の簾が巻き上げられ、
この瞬間、花にもう一度命が吹きこまれたように、別の表情を見せました。
他の簾も巻き上げられ、陰から陽への見事な転換です。

細長い茶入より緑の濃茶が回し出され、湯が汲まれ、濃茶が煉られました。
さらさらと流れるような点前を皆、静かに吸い込まれるように拝見しています。
緊張感と充実感のみなぎるひと時・・・・。
「無心」という銘の黒楽で濃茶がだされ、客四名で頂戴しました。
「室閑茶味清」

濃茶は一保堂の雲門の昔でした。
細長く優しい形の茶入は肩衝長茶入、飯能焼の細井陶遊造です。
作者が志戸呂焼が好きで、土は志戸呂とのことでした。
仕覆は鹿羊文金襴。
茶杓は、えーと・・・・銘「時雨」でした。
 
                 

茶事を通じて思うことが二つありました。

名残の茶事にふさわしい道具のいくつかはご亭主の先生から、
さらには先生の先生から先生へ譲られたお品でした。
道を継ぐ人と場所(汲古庵)を得て、先生方も道具もきっと大喜びでしょう。

水撒き、簾あげなど縁の下の力持ち役の半東はKさん社中のHさんでした。
Hさんとは茶事入門教室以来のご縁ですが、
ご亭主の茶事の半東をこなされ、目を見張るばかりの上達ぶりです。
そして、いつも一生懸命の様子が好ましく、今後の活躍を楽しみにしています。

話しは尽きませんが、ご亭主さま、相伴させて頂いたお客さまと和やかに楽しく
汲古庵でのひと時を過ごすことができ、いろいろなご縁に感謝いたします。

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