暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

古希をお祝いする茶事に招かれて

2023年11月21日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

 

 

11月3日にS先生の東京教室で共に研鑽に励んでいるYさまの古希をお祝いする茶事へお招き頂きました。

あれから日が経ちましたが、今でもYさまのおもてなしの心意気に満ち溢れたお茶事だった・・・と、ため息をつきながら思い出します。

感激のままにすぐに後礼のお手紙を差し上げました。こちらに忘備録として記します。

 

  

霜月なのに記録的な暑さが続いておりますが、心地好い風を感じながら

一昨日の茶事のあれこれを思い出し、余韻に浸っております。

この度は古希をお祝いする茶事にお招き頂きまして、誠にありがとうございました。

何度もため息が出るほど、好いお茶事でございました・・・Yさまのお茶事への熱い思いや、これまで歩んできた茶の道の歴史が伝わってくるお茶事でした。

 

 

いろいろな場面が思い出されますが、初座へ席入りすると、新しい畳の香りが満ち、広い御床に坐忘斎お家元御筆の「「松無古今色」が清々しく迎えてくださり、正客として身が引き締まる思いがしました。

炉の初炭では、亡き恩師から譲られたという美しい瓢炭斗が運ばれ、ご亭主の初炭手前を新鮮な気持ちで拝見でき、炉の時期の到来を嬉しく思いました。

鵬雲斎大宗匠好みの雲鶴釜の堂々とした大きさや形、青海波の炉縁に魅せられ、連客の皆様と和やかに炉を囲み、初炭手前や後炭を楽しませて頂きました。

 

 お忙しいにもかかわらずご自分で調理されたという懐石は一つ一つ作り方やコツを伺いたいほど美味しく、特に煮物椀の銀杏真蒸が絶品でした。そして懐石では喫架を用意してくださり、本当にありがとうございました。

後座の席入りで襖を開けると、照葉(ジューンベリー)とピンクの西王母が素晴らしい青磁下蕪花入に生けられていて、その空間の見事な美しさに息を呑みました。

火相と湯相も程よく、心を込めて練ってくださった濃茶のなんと!薫りよくまろやかで美味しかったことでしょう。「寿ぎ」という銘の紅白の金団も美味しゅうございました。

そしてYさまが長い時間と愛情を注いで集められた茶道具の一つ一つに、その時の出逢いのご縁や、Yさまのお茶に取り組まれているご様子が垣間見られ、そんなことを想像しながら、濃茶や薄茶を美味しく頂戴いたしました。

今思い出しても、使われた茶道具の一つ一つが生き生きと輝きを放ち、この日を待ちに待って一緒に喜んでいるようでした・・・客としてご亭主とお道具の縁のお話を伺うのが楽しく、とても幸せな時間ございました。

お心入れの茶道具の中で特に印象深いのは、濃茶を頂いた旦入作の赤楽茶碗と茶杓(大宗匠作)です。

小ぶりの赤楽茶碗は各服点にピッタリで、釉薬がとても複雑な景色を生み出して魅力的でした。古瀬戸の肩衝茶入の端正な形や味わい深い色合い、そして珍しい裂地の仕覆が今も目に残っています。

亡き恩師もきっと天国からこのお茶事を見守って喜んで大声で笑っていらっしゃるのでは・・・と、茶杓「呵々(かか)」を拝見しながら思いました。

 

 

いつまで出来るかわかりませんが、とにかく出来るところまで一生懸命にお茶を生徒さんに教え、同時に今自分に出来る「立礼の茶事」に取り組んでいこう・・・と決意して五月の初風炉からやっと踏み出しましたが、その初風炉の茶事にお出ましくださり、刺激を受けたというお言葉が有難く、嬉しかったです。

これからも力強くYさまの茶の道を歩んでいってほしいと心から応援しておりますし、どうぞ素敵なお茶事を大いになさって下さいませ。

末筆になりましたが、半東や水屋を務めてくださった社中の皆さまによろしくお伝えください。

三日間(?)の茶事を成し遂げて、きっと今頃はお疲れがどっと出ているのでは・・・と案じています。

どうぞくれぐれもお体を大切にお過ごし下さいませ。   かしこ

    令和五年霜月吉日        暁庵より