暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「野月の名残りの茶事」・・・(1)野月の和歌

2023年11月14日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

  (10月29日は満月だったのでお供えをしました。

    月見団子は石井菓子舗製(横浜市旭区都岡)です)

 

もうおぼろですが、大田垣蓮月の和歌が暁庵の心に強く残ったのは、平成19年10月の某茶事の会で名残りの茶事の亭主を務めた時のことです。その時の待合に掛かっていたのが蓮月の尾花の画賛でした。

  尾花

    夜な夜なの 月の野守と 我なりて

        なるる尾花が 袖まくらかな     蓮月

夜な夜な、月の野守となって野原をさまよい、月を愛で月と語り、尾花を袖枕にして夜を明かす蓮月・・・いろいろな場面が目の前に浮かんでは消えていきました。

以来蓮月の和歌の短冊を探していましたが、なかなか気に入ったものに出逢えませんでした。今年4月に縁あって、野月の短冊が私の元にやってきたのです。あれから15年の年月が経っていました・・・。

  野月  

    むさし野の 尾花が末に かかれるは

        誰がひきすてし 弓張の月     蓮月

 

・・・嬉しくって! 9月初めから、野月に因む立礼の茶事を3回続けました。

1回目は9月2日の「夕去りの茶事」、8月30日が満月だったので立待月の野月でした。16時30分席入の夕去りだったので、初座は花、後座の床に野月の軸を掛けました。

2回目は9月30日の「野月の茶事」、9月29日が中秋の名月だったので十六夜でした。11時30分席入の正午の茶事でしたが、初座の床に野月の御軸を掛け、後座は暗くし蝋燭を灯し、夕去り風でお楽しみいただきました。

・・・そして3回目、令和5年10月29日(日)に「野月の名残りの茶事」をしました。正午の茶事で11時30分の席入です。

その日は満月だったので、薄、月見団子、秋の実りをお供えしました。 

 

     (野月の和歌の短冊)

この日のお客さまは4名さま、正客KTさま、次客オーネルさま、三客EKさま、詰AYさまです。コロナ禍もあり4年ぶりに来日したスウェーデン在住のオーネルさまが参加してくださいました。

その日の気温は高めで・・・悩みましたが、着物は単衣の無地紋付です。利休鼠色の地味な色ですが、錆朱に鳳凰図の帯を締め、華やかさを出しました。異常気象の暑さに単衣が大正解でした・・・。

志野の汲出しにシュウメイ菊の一片を入れた白湯をお出ししました。

待合の御軸は、蓮月の野月の短冊です。

頃合いを見て濡れ釜を風炉に掛けてから迎え付けです。お客さまと無言の挨拶を交わしました。

初座の床に「曉雪満群山」の御軸を掛けました。坐忘斎お家元の御筆で、教授拝受の折に記念に・・・と思いお願いしました。暁庵の宝物です。

(この御軸を掛けると、いつも身が引き締まる思いが・・・)

オーネルさまの長年の茶道研鑽の努力が認められ、この度坐忘斎お家元から茶名を拝受されました。嬉しいことにそのお祝いも兼ねたお茶事にもなったので、お家元に御軸でお出ましいただくことにいたしました。

そんなこともあり、社中の方やごく親しいお客様お一人お一人と嬉しくご挨拶を交わし、懐石になりました。いつものように給仕は半東Y氏にお願いし、懐石は小梶由香さんが腕まくりです。水屋でお相伴する美味しい懐石が毎回楽しみでした・・・。

お二人のプロがしっかり支えてくださって、本当に有難いことです。

 

献立と写真を掲載します。(献立作成 小梶由香)

 飯   一文字
 汁   蓮根 辛子 合わせ味噌
 向附  しめ鯖 緑酢 三つ葉 生姜


 椀盛  菊花帆立 白舞茸 隠元 柚子


 焼物  焙烙焼き 甘鯛 車海老 大黒しめじ 栗 銀杏


 預鉢  鳥丸 蕪 春菊

 箸洗  南瓜の種

 八寸  小巻(月に見立て・・) うさぎ長芋
 湯斗
 香の物 沢庵 胡瓜粕漬
 酒   ひやおろし 純米吟醸 山田錦
     (岐阜県養老郡養老町  玉泉堂酒造株式会社)

 

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