(さぁ~ 蓮華院の薄茶席へどうぞ)
蓮華院が薄茶席で、土間が待合です。
第4席のお客さまを待合へご案内し、扉を閉めました。出来るだけうす暗い中で蓮華院の土間の雰囲気や素晴らしさを味わってほしい・・・と思いました。
(大好きな蓮華院の待合の土間)
土間の真ん中にそびえる円柱は宇治平等院の翼廊の古材です。繰り抜かれた柱穴、刻まれたしわや木目、時代を経たものが持つ風格に圧倒されます。
壁にはめ込まれたモダンな格子戸も同様に平等院の古材だそうで、太い円柱や格子戸が土間の空間を引き締めて、寺院にいるような静寂と緊張感を醸し出しています。
もう一つ、太い柱の脇に方形の石造物があり、これは五重塔などの屋根の頂に置かれる露台が使われています。
いずれも三溪翁の好みを色濃く感じるもので、蓮華院は三渓翁がご自分の構想に基づいて作った茶室なのです。
(「喫茶来」の御軸、紫野 太玄老師筆)
六畳の広間が薄茶席で、床には「喫茶来」(きっさこ)の御軸、紫野 太玄老師の御筆です。
「さぁ~お茶でもどうぞ召し上がれ」という意味です。
本床の横に琵琶床があります。原三溪翁が茶会を催した際に奈良東大寺三月堂の不空羂索観音が手に持っていた蓮華を飾ったそうで、蓮華院という名前の由来になっています。
(青磁花入・・・元時代・龍泉窯)
この琵琶床に何を飾るか・・いつも難題でして、今度の茶会でもN氏は最後まで悩んだことと思いますが、青磁花入(元時代・龍泉窯)を選びました。
元時代の竜泉窯で造られたそうですが、細く繊細な首や美しいフォルム、唐花や葉のような浮彫がモダンさを感じさせます。とても上品で格調高く、琵琶床に映えている・・・と思いました(てまえ味噌ですみません)。
(ひさごの掛花籠に秋の草花が溢れて・・・)
床柱のひさごの掛花入に秋の花が生けられていました。
尾花、小菊、竜胆、狐のしっぽ草、山芋の蔓、吾亦紅の6種、どの花もお互いを引き立て合ってステキでした。
お花担当のSさんが前日からあれこれ考えて用意して活けてくださったのですが、とても斬新な美しさを感じました(てまえ味噌ですみません)。
蓮華院薄茶席はKTさん、M氏、Iさん、Sさん、Y氏が担当しています。
(風炉先・・屋久杉組子 風炉・・唐銅平丸 藤井宗喜造
釜・・・筒姥口糸目釜 橋本辰敏造 )
(棚・・寿棚 水指・・雲錦色絵 福森阿也造)
薄器・・・吹雪 四君子 一兆作)
第4席のお点前はM氏、後見はIさんでした。
暁庵は用事があり遅れてお席に入ったのですが、すぐに水屋から薄茶が運ばれて来て、美味しい薄茶をたっぷりと頂戴しました。干菓子は柚子琥珀とハローウィンのおひがしの2種(いずれも永楽屋製)、薄茶は金輪(丸久小山園詰)でした。
あいにく末席からM氏のお点前は見えにくかったのですが、安心してM氏にお任せしてお話の輪に加わりました。
Iさんの丁寧な説明が心地よく、濃茶席とは違って私まですっかりくつろいでしまって、まさに「喫茶来」のひと時でした。
茶碗のこと、横浜に窯を築いた真葛香山のこと、蓮華院の変遷など、いろいろ和やかにお話が弾みました。
主茶碗は、御本雲鶴の歌銘「玉帚(たまははき)」です。遠州流・小堀逢露の箱書があり、箱裏に和歌が書かれていて、外函に遠州流茶道12世・小堀宗慶極めがあります。
初春の 初子(はつね)の今日(けふ)の玉帚
手にとるからに ゆらぐ玉乃緒 (大伴家持 万葉集)
替茶碗は日之出鶴(永楽妙全作)、御本写し 銘「秋の風」(半泥子作)、古楽山焼、「柿の図」(真葛香斎作、鵬雲斎在判)、乾漆・染付山水(吉田華正作)などで、社中の方のお持ち出しです。
薄器と茶杓が拝見に出され、S先生からお尋ねがあり、薄器は吹雪、輪島の一兆作、独楽の中に四君子蒔絵が描かれています。
こうして蓮華院薄茶席は終わったのですが、いつまでも名残り惜しく、蓮華院の入口でこれから三渓園を散策するというお客さま方を見送り、春草蘆の社中席へ戻りました・・・。
最後に春草蘆広間で社中の皆様とご挨拶を交わし、無事に茶会終了となりました。
お客さま、社中の皆さま、本当にありがとうございました! (この章終わり)
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