(床に「曉雪満群山」の御軸を掛けました)
春草蘆の濃茶席(第1席)へ7名が席入りしました。
三畳台目席ですが、京畳と窓が全部で9つあるので、思ったより広く感じると思います。それでもとても暗いです。
床(台目)には「暁雪満群山」(ぎょうせつぐんざんにみつ)の御軸、坐忘斎お家元の御筆です。
令和3年4月に教授を拝受した記念に坐忘斎お家元に書いていただいた書です。三渓園茶会でS先生はじめ皆様にお披露目が出来て一安心しました。
暁の陽光が山の頂の雪を茜色に染めはじめ、次第に群山まで普く照らし、どの山も美しく輝き始める・・・雄大な暁の雪山の景が目の前に現われて来る書です。・・・そして、「あなたの茶の道を頑張りなさい」という励ましの声が聞こえるようでした。
(点前座の設え)
点前座にはやつれ風炉、N氏奮闘の藁灰が敷かれ、釜は真形羽落浜松文(喜多庄兵衛)です。水指は古丹波の種壷(大徳寺十代管長・森山歓渓師花押)、そしてその前に茶入(古備前丸壺茶入、小堀大膳宗中箱書 銘「かわな草」)が莊られています。
第1席で心配でしたが、火相も湯相もよろしいようで安堵しました(ふっ~!)
Aさんのお点前が始まりました。落ち着いて袱紗捌きも美しくお点前に集中していらして、嬉しく拝見しました。客一同はきっと自分がお点前をしているような気持で拝見したと思います。
ちょうどその時、一匹の狸が現われて春草蘆の前に座ってこちらを見ているではありませんか。
お点前中でしたが、「狸がそこに座って、ご一緒しています」とご紹介しました。
(狸もうっとりと、お点前に見惚れたのかな?)
濃茶が練られ、黒楽茶碗(一入作、藪内流7代桂陰斎の銘「不老門」)で香り高くよく練られた濃茶を頂戴しました。濃さも丁度好く、まろやかな濃茶が喉を潤し、内心「狸もきっと飲みたいでしょうね」と思いました。
次茶碗(御本三島)で濃茶が練られ、次客ルースさんが頂き、次々と替茶碗で全員が濃茶を味わいました。濃茶は「松花の昔」(坐忘斎家元好み、丸久小山園)です。
10時を過ぎた春草蘆には点前座左横の窓から陽光が差し込んで、畳が走水のように美しく輝いています。そんな光線の妙を楽しみながら、狸も加わった一座建立の春草蘆・濃茶席はとても思い出に残るものとなりました。
もう一つ、夏に下見に来たときのことを思い出しました。春草蘆は長い事閉め切ったままだったせいか、夏だというのにひんやりと、空気が重苦しく、とても寂しい印象でした。
でも今、喜寿を祝ってくださるお客さまやスタッフを迎えて、なんと!茶席が和やかで温かく、キラキラと輝いているのだろう・・・と。春草蘆が喜んでくれているようでとても嬉しかったです。
夏は 涼しく
風が 窓から窓へ
戯れながら吹き抜けて
季節の匂いを運んだことでしょう。
冬は 小間ゆえ温かく
障子に差し込む淡い光は、
色や影のうつろいを
朝な夕なに映したことでしょう。
後見のN氏がお道具の説明をしてくださいました。
第1席では替茶碗のことを書いておきます。各服点なので三客様からは水屋からお出ししました。三客様から赤楽・光悦乙御前写し(香野壮明作)、次いで萩焼(十一代三輪休雪作)、黒楽(十一代慶入作、数印)、朝鮮唐津、古唐津(玄々斎の銘「鳴海」)です。
ご挨拶が終わり、床、点前座などをじっくり拝見して頂き、半東NYさんが蓮華院の薄茶席へご案内しました。(つづく)
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