暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

魂のコルトレーン茶会へ

2019年12月04日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)



11月20日、播磨在住のKさんの茶会へお招き頂きました。

1年ぶり・・・7回目の訪問です。
今年1月にKさんに不幸があり、お見舞いに伺いたいと思っていたところ、「車で四国遍路」へ出掛ける直前にメールが届きました。
「よろしかったら四国遍路の帰りに播磨へお寄りくださいませんか?」
ツレが一緒だったし、2人とも疲れ切っていると思うので、別の機会に伺うことにしました。
・・・そして、この度やっと「偲ぶ茶会」へ伺うことができ、「魂のコルトレーン茶会」と名付けました。


10時過ぎの電車に乗り、Kさん宅へ10時30分頃に到着しました。
Kさん宅は紅葉の真っ盛り、きれいに掃き清められたアプローチには水がたっぷり打たれ、一歩一歩石畳を踏みしめ、目の覚めるような庭木を鑑賞しながら玄関へ。
中へ入ると待合が調えられ、俳句が書かれた短冊と花が掛けられていました。

   石段の落ち葉上より掃き下ろす



     紅葉が真っ盛りのアプローチ


ご亭主Kさんが汲出しを持って現われ、
「白湯をお飲みになりましたら、庭へ出ていただき、石のテーブルの椅子に腰かけてお待ち下さい」

お気に入りの石のテーブルに木を刳り貫いた盆が置かれ、灰皿とJAZと書かれたマッチ・・・いつもの変わらぬ佇まいに安堵感を覚えます。
落ち葉の季節なのに、きれいに掃き清められた庭や瑞々しい緑苔にKさんの心意気を感じます・・・。
最初に来た時も12月初めで、まだ木々の紅葉が残っていたことを思い出しながら、天蓋の紅葉の下の椅子に座り、気をいっぱい浴びながら迎え付けを待ちました。
 
水桶を持ったKさんが現れ、蹲を清め、迎え付けです。
いつもと同じように、無言の挨拶を交わし、Kさんを見送りました。




席入りすると真っ暗な茶室、手燭と燭台の灯が床や点前座へ誘います。
床にかわいらしい子供の写真(5歳の時の写真だそうです)が掛けられ、香が焚かれていました。
数珠を持つ手を合わせ、亡き魂の安らかならんことを祈ります。
点前座に廻り、湯気を上げている手取り釜や炉中を拝見してから床前の席へ座りました。

この頃になって、暗い茶室にコルトレーンの曲が流れているのに気が付きました。
閑かに厳かに魂が清められるような・・・
「なんて、この場、この茶室にぴったりなんだろう・・・」
しばし目を閉じて、コルトレーンの演奏に耳を傾けていると、涙がにじんできました・・・・
Kさんの息子さんへの想いであり、魂の慟哭のようであり、あの世との会話であり、全身全霊の祈りのようでもありました。

Kさんがいつものように炉の流し点てで薄茶を点ててくださいました。
白い茶碗で薄茶を頂戴し、黒い茶碗でもう一服が点てられ、写真の前に供えられました。
1年間は供養のため、毎日、献茶し、息子さんと会話をしているとか・・・。
「能好きの親友から「もの狂い」と言われたけれど、その段階は済んだみたい・・・」
きっとその時は「もの狂い」の時間がKさんにとって必要だったのだ・・・と頷いていました。



     黄色いツワブキに冬の到来を感じます


「先ほどの石のテーブルで薄茶か珈琲を差し上げたいのですが、どちらにいたしましょうか?」
「珈琲にも惹かれますが、薄茶を頂きます」と私。

躙口から外へ出ると、待っていたかのように1匹の黄蝶が現われ、石のテーブルへ誘います。
石のベンチには暖かな座布団やひざ掛けが用意されていました。
盆略点前で薄茶を点ててくださいました。
茶碗、薄器(池川みどり作)、茶杓などの茶道具は全部前席のもので、さりげないおもてなしがシンプルで素敵です。
益々、無駄なものを削ぎ落し、シンプルな中にもコルトレーンの演奏のように魂を清められるKさんのお茶。
紅葉の美しい林間の一服は、忘れられない至福の一服になりました。ありがとうございます。





「こちらで少し休息していただいてから、待合の荷物を持って、裏のゲスト棟へお入りください。
 そちらでお昼のお好み焼きを差し上げます。電車の時間までおくつろぎください」

言われるままに、別荘のような素敵なゲスト棟でお好み焼きをたっぷりご馳走になりました。
珈琲(Kさんの珈琲はvery good!なの・・)も淹れてくださってニコニコでした。

帰りの電車の時間が迫っており、また再会を約して重たい腰を上げました。
関西旅行・最終日のその日は、姫路から新幹線で京都へ行き、京都国立博物館で閉館ぎりぎりまで「佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美」を見てから横浜へ帰るという、私にしては強行スケジュールでした。


      駅近くの変わらぬ風景が嬉しい・・・

初回に駅で出迎えてくれた、あの笑顔を思い出しながら、駅まで見送ってくださったKさんとお別れです。
また来年、きっと来るからね! 元気でお会いしましょう!  



(忘備録)この度で7回、Kさんの茶会へお邪魔しています。その感動を忘れないようにブログに一部書き留めています。よろしかったらお読みください。

  1.思い出の茶事  一客一亭 2008年12月
  2.あこがれのJAZZ茶会(一客一亭) 2010年11月
  3.Jazz茶会ー2  Moon Bow  2013年10月11日
  4.「どくだみ茶会」-1  2014年6月6日 
  5.夕去りのたけのこ茶会・・・播磨にて  2016年4月19日
  6.播磨・コルトレーン茶会・・・その1   2018年11月2日
  7.魂のコルトレーン茶会    2019年11月20日