暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

2014年甲午の初釜  雅中庵にて

2014年01月08日 | 献茶式&茶会  京都編
               (写真は薄茶席その他です)

2014年1月5日、甲午年の初釜へお招き頂きました。
2回目なので、少し余裕を持って早めに有馬温泉へ到着でき、
東京からいらしたOさんとホテルで待ち合わせました。

茶室棟は別棟にあり、「雅中庵」の扁額は鵬雲斎大宗匠筆です。

待合の床には、三幅の絵「竹に雀」「大黒天」「柳に鶯」が掛けられ、
一方の床に掛蓬莱(ヒカゲノカズラの輪飾り)が掛けられています。
ヒカゲノカズラは古生代に栄えたシダの一種で、神事に使われ、
天照大神が天岩戸に隠れたとき、アメノウズメノミコトが
これを冠にして踊ったと伝えられています。

      

奥様のお接待で点心と一献を頂戴し、菓子席へ。

葩餅(はなびらもち、末富製)をパクつきました。
ごぼうと白味噌餡とピンク色の餅を、求肥で包んだ菓子ですが、
とても柔らかく切りにくいので、そのままパクつくのが一番なのです。
600年の伝統ある葩餅は雅な宮中おせち料理の一品とか、
白味噌餡が程よい甘さでした。
忘れずに!(稽古でよく忘れるので・・)しっかりと拝見した縁高は
蓋、蓋裏、側面に唐花(吉野絵)が漆で画かれ、六代宗哲造です。

            

濃茶席へ席入すると
床に「和敬清寂」、又妙斎筆です。
裏千家流の精神をあらわす深淵な語句はいつ拝見しても
身の引き締まる思いが・・・。

花は曙椿と鶯神楽、もう鶯神楽が咲いているのですね。
花入は竹一重切、めったにお目に掛かれない見事な花入は、
銘「君主」、名前の如く堂々と端坐しています。

大きな釜が目に入りました。
「撫肩」、名越弥五郎造です。
鐶が口近く高い位置にあり、そのために撫肩の形が美しく栄えています。
小振りの三角形水指が大きな炉釜と対照的でした。
水指は古備前(初期・鎌倉時代から織豊時代までの備前焼)、
茶入は・・・あとのお楽しみです。

            

濃茶席「有喜庵」は四畳半本勝手、又隠(ゆういん)の写しで、
道庫と突上げ窓もありました。
茶道口が開けられ、S先生の濃茶点前が始まりました。

道庫を使う点前は教本がなく、亭主があれこれ考えて
点前を工夫するそうなので、一同、固唾をのんで見つめています。
柄杓が青竹の蓋置に引かれ、総礼すると、
「あけましておめでとうございます
 本年もどうぞ宜しくお願い致します」
と挨拶が交わされました・・初釜を一番実感するシーンです。

茶入が清められ、濃茶が入り、湯が汲まれると
芳香が茶室に満ちてきます。
さらさらと三碗(9人分)の濃茶を点ててくださいました。
たっぷりと程よい濃さの濃茶(二椀目)を緊張しながら味わいました。
緊張のあまり、お服加減になんとお答えしたのかしら? 
(記憶にないのです・・・もしや?)
香りよくマイルドな味わいの濃茶は遊亀の昔、伊藤園詰です。

            

三つの茶碗を拝見しましたが、それぞれ心に残る茶碗でした。
主茶碗は、華頂宮様の御手造りの黒楽、
嘉永2年霜月、今日庵御立ち寄りの折に玄々斎が拝領した茶碗です。

私は二椀目の古萩、銘「富士」で頂戴しました。
歪のある形と侘びた肌合いが霊峰にふさわしい深みのある味わいで、
世界遺産登録の話題も嬉しい一碗でした。

三碗目は、赤楽、銘「大雄峰」当代吉左衛門造、
確か、昨年はこの茶碗で濃茶を頂いた思い出が・・・。

道庫もですが、突上げ窓が実際に使われているのも珍しく、
茶事の時に、窓のつっかえ棒をお詰に預けておく亭主もいるとのことで、
先生自ら、突上げ窓を開けて見せてくださいました。
・・・すると、一条の光が茶室へ射して、次客さんを照らしました。
とても神々しく、茶室の空気が一変する光の演出にびっくりです。

            

最後に、茶入と茶杓について書いておきます。
茶入は、不動清寂を感じる、瀬戸破風窯の翁手、
1年ぶりの嬉しい再会でした。
小堀権十郎箱書に次のような和歌が書かれていました。

   人問はば知れる翁の夜語りを
        昔にかえす和歌の浦波

象牙の茶杓ですが、塗りがあり、三代宗哲造。
利休形(好)で、当時は象牙に漆を塗っていたそうです。

            

Oさんと薄茶席へ、社中のグループが持ち回りで薄茶席を担当しています。
こちらも和やかで愉しい席でした(写真は薄茶席です)。
2回目の初釜ですが、どのお席も気持好く、素晴らしい思い出になりました。
今年も新たな決意でお茶に取り組めそうです。
ありがとうございました!