暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

大西清右衛門「茶の湯釜の世界」

2014年01月12日 | 美術館・博物館
               
                       京都駅の摩天楼

大西清右衛門「茶の湯釜の世界」を覗いてきました。
会場は美術館「えき」KYOTO(JR京都伊勢丹7階隣接)、
会期は1月2日~1月15日です。

市中にいながら、三条釜座の大西清右衛門美術館
なかなか足が向きませんでした。
その理由の一つ、「お釜大好き」で見るのも好きなのですが
見れば欲しくなるし、荷物を増やしたくないし、お金もないし・・
つまりストレスになりそうで・・・敬遠してました。

茶道を再開してすぐの頃夢中で求めた愛するお釜たち、そして
釜師・長野新氏に制作依頼した「桐文車軸釜」、
みんな置いてきて、責紐釜1つを持って京都へやって来ました。
責紐釜は背丈が低いので、風炉と置炉に両用できるからです。

               

・・・でもね。ぐちゃぐちゃ言っても
「たくさんのお釜に逢えて嬉しい!」

御釜師400年の仕事と銘うった展示会は、
初代浄林、2代浄清から当代・大西清右衛門まで16代の釜師が
制作してきた「釜」が歴代順に展示されています。
大西家だけでなく、芦屋、天明、西村道仁、名越弥五郎、名越浄味
などの釜も展示され、一度に総数50点以上は嬉しい悲鳴でした。

歴代の釜師たちが守り伝えた技を見るというより、
異なる作風の釜は釜師たちが追及したであろう美学を
浮かびだしていて、興味深く拝見しました。
時代背景、注文した茶人の好み、制作する釜師の人となりまでを
釜が代弁しているかのようでした。

大きさも普段見慣れている大きさではありません。
総じて初期の時代(16世紀?)に大型の釜が多いのは
大きな台子を使っていた名残りでしょうか。
それとも寺の茶所に掛けられた釜なのでしょうか。
まだ炉の大きさが今のように決まっていなかったせいでしょうか、
茶の湯が男性だけのものであった・・と思い知らされる大きさでした。

              

侘び茶人・善法所持の茄子形手取釜写(13代浄長作)には
とても興味深いエピソードがありました。
秀吉がこの手取釜を欲しがりますが、善法は断る口実に
釜を打ち割ってしまいます。
後悔した秀吉は利休に命じて釜師辻越後に手取釜の写しを2つ作らせ、
1つは善法に与え、これが粟田口・良恩寺に伝来しているそうです。

私のお気に入りは「(48番)菊水釜 2代浄清作」、
菊と流水の文様をあらわした小さな釜で、
鐶付は大鯰の背に猿が乗った猿鯰、
掴みは松笠で座にあるアオイのような一葉がステキです。

主人のお気に入りは「糸目撫肩釜 鯰鐶付 初代・大西浄林作」
すっきりした撫肩の大振りの釜で、
シンプルかつ繊細な糸目が美しい、私も好きなお釜でした。

              

異形の釜も多く、
鶴ノ釜、蓬莱釜、馬ノ釜などの中で尾上釜が目を惹きました。
いつか、道成寺のテーマにどうかしら・・・。
(29番)尾上釜 大西五郎左衛門作
播州加西の尾上神社にある朝鮮鐘を写したもので、天女が舞い、
掴みは梵鐘の釣り手の竜頭です。

見ごたえのある「茶の湯釜の世界」でしたが、
最後に展示会場に設えた茶席の道具組を記録しておきます。

  床  「鐵技(てつぎ)」 如心斎筆
  花   白椿
  花入  唐銅袴付 曾呂利盆  西村道弥作
  釜   桐  2代大西浄清
  炉縁  金毛閣古材  即中斎在判
  水指  瀬戸渋紙手
  茶器  黒大棗  覚々斎在判
  茶碗  伊羅保  銘「曙」
  替   黒織部
  茶杓  瀬田掃部  覚々斎筒
  建水  唐銅 槍の鞘  大西浄林作
  蓋置  竹節