暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

北村美術館と四君子苑-1

2013年11月08日 | 美術館・博物館

灑雪庵・秋の茶会があり、書けなかった出来事を振り返っています。

10月27日、四君子苑公開の最終日にやっと出かけました。
四君子苑は、毎年、春と秋に公開されているのですが、
忙しい時期なのでいつも見そびれていたのです。

最初に北村美術館の展示「夕ざりの茶」を見ました。
前回は9月28日、大徳寺月釜でお会いした藤沢市のKさんと訪れ、
感想を話し合ったり、お好みを選んだり、楽しいひと時でした・・・。
今回は珍しく主人と一緒です。
特別展示の水墨画を見せたい・・・と連れてきたのでした。

それは、与謝蕪村筆、墨画淡彩鳶烏図 双幅(重要文化財)です。

             

「烏」
しんしんと降る雪の中、
雪に覆われた古木に留まる二羽の烏、
寒さをじっと耐えて身を寄せ合っています。
降る雪の音だけが聞こえる静寂の中・・・
動かぬ一処だけ幽かなぬくもりを感じます。

「鳶」
びゅう~びゅうう~ん
細い枯枝にとまる一羽の鳶。
横殴りの風と雪が容赦なく鳶に襲い掛かります。
厳しい寒さに耐えているというよりむしろ
襲い掛かる風雪に頭をもたげ、昂然と対峙している孤高の姿です。
枝のたわみ、ふくらませた羽根の幽かな揺れまで感じさせてくれます。

「静と動」「縦と横」「右と左」などの対比も興味をそそります。
いつまでも何度でも鑑賞したい水墨画に出合えて、楽しみが増えました。
京都で水墨画を習いだした主人も熱心に鑑賞しています。
(気に入ったみたい・・・です!)

              

今回の茶道具の展示テーマは「夕ざりの茶」。
暮れの忙しい最中に仕事を早々に切り上げ、いそいそと茶を楽しむ
・・・そんな数寄者たちを彷彿させる展示内容でした。

夕ざりの茶事は、季節も内容も決まりごとがないこと、
昼間(陽)と夕方から夜(陰)の異なる風情が楽しめること、
支度もゆっくり出来るので、大好きな茶事です。
特に蝋燭の元で行われる濃茶は主客共に精神統一しやすく、
たぐいまれなる時間を生み出してくれます。

展示は茶事の順番になっているので、
「夕ざりの茶」に招かれた、贅沢な気分を味わうことができました。

寄付の「時代栗木地殴」の汲出盆、
荒々しい殴が時代を経て、やさしく栗盆を引きたてています。
この頃、古い木地や盆(木、金属)がとても気になっています・・・。

濃茶席(小間)の茶入は「利休好 中棗 盛阿弥作」、
このような中棗を使い包帛紗の点前で濃茶を点ててみたいと憧れます。
仕覆は利休漢東、青の色合い、細かな漢東が印象的です。
金森宗和作の茶杓も一本深い樋が通り、色艶もよく、華奢で
仄かな色気を感じます。

続き薄茶の替茶碗、「真葛長造作 仁清写 ゆずり葉」
歳暮の時期にふさわしくゆずり葉の登場です。
すっきりとしたゆずり葉が外と内に伸びやかに描かれていて、
飽きのこない茶碗です。二人ともお気に入りに認定しました。

いよいよ「四君子苑」ですが、ゆっくり書きたいので次回にします。

北村美術館 「夕ざりの茶」 
展示期間:平成25年9月6日~12月8日

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