暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

初詣-2  日向大神宮

2014年01月06日 | 京暮らし 年中行事
            
(つづき)
昨年末、吉行和子さんとお杉さん出演のテレビ(番組名は不明)で
紹介していた「日向大神宮」へ行ってみました。

「京のお伊勢さん」として古くから(式内社)信仰されていて、
山上には伊勢神宮遥拝所もあるとか。

平安神宮から南禅寺をめざし、地図を確かめると
南禅寺近くにある「インクライン」の山側に鎮座しています。
「インクライン」とは、舟で物資を運ぶ時に、舟ごと台車に乗せ、
坂を上り下りする線路のことです。

明治時代、琵琶湖疏水が舟運、灌漑、水車などの利用に建設されました。
滋賀方面から物資を乗せ疏水を通って来た舟は、蹴上舟溜りに到着すると、
舟ごと台車に乗せ、線路で南禅寺舟溜りへ運ばれました。

             
             「インクライン」蹴上舟溜り

「インクライン」の遺構を見ながら上って行くと、
「日向大神宮」の石灯籠が見えてきました。
平安神宮に比べると、ウソのように人出も少なく、
時折参拝者と行き交うくらいの狭い参道を登って行きました。

             

             
                   伊勢大神宮遥拝所

最初に「伊勢大神宮遥拝所」へ。
山の気を感じながら急な山道を行くと、見通しが好い場所に
「伊勢大神宮遥拝所」があり、伊勢の方角へ向かってお詣りしました。
ここは太陽の通り道になっているそうで、
反対側には平安神宮の赤い大鳥居と左大文字が一線上に見えます。

             
                     太陽の通り道

日向大神宮には八百万の神を祀る社がありますが、
その一つ「えんむすびの神 福士神社」へ。
大黒主命が祭られている社前には、願いごとが書かれたかわらけが
高く積まれていて、若い女性が熱心に祈っていました。
うず巻くエネルギーに圧倒されながらもお詣りし、願いごとを・・・。

粟田山の懐深く、神々を祀る聖なる地でありながら、
ほっこり温かみを感じる境内に、雅な神明造りの社がありました。
こんなステキな神社があるなんて・・・
すっかり気に入り、嬉しくなりました。

日向大神宮は伊勢神宮のように外宮と、その奥に内宮(本宮)があり、
先ず外宮からお詣りし、橋を渡って内宮でお詣りしました。
祭神は天照大神です。

             
                内宮でお詣り・・・二拝二拍手一拝

神前に若水と書かれた、浄めの水が用意されています。
青竹の器に水を汲み、口に含むと、まろやかな味です。
あとで巫女さんに若水のことを伺うと
「橋を渡った右奥に湧き出ている「朝日泉(あさひのいずみ)」の御神水で、
 水神さまを祀る社がございます」
と教えてくださいました。

           

           
              御神水・・朝日泉(あさひのいずみ)

内宮のすぐ横の山に「天の岩戸」と呼ばれる岩屋があります。
中に戸隠の神様が祭られていて、通り抜けたら厄祓いが出来るとか。
興味深く、浪漫を感じる岩屋に入り、厄祓いをしてきました。

           
           天の岩戸の通り抜け

とても満足して帰途へつく時に
「ところで、日向ってなんて読むのかしら?
 ひむかい、ひのむかい、それともひゅうが・・・」

丁度通りかかった年配のご婦人に尋ねると、鹿児島からいらした方でした。
でも、印刷した分厚いネット情報をとりだし、調べてくださいました。
すごい情報量にびっくり!
日向大神宮は京都人でも知る人ぞ知る穴場だと思うので
鹿児島からお詣りにいらしてくださって嬉しいです!

正しい読みは「日向(ひむかい)大神宮」でした。
お薦めの神社です。ぜひお詣りしてくださいまし。

                               

       (初詣-1 平安神宮で「翁」をみる)へ




初詣-1 平安神宮で「翁」をみる

2014年01月03日 | 京暮らし 年中行事
            

元日の初詣は平安神宮へ。
12時30分から平安神宮神楽殿で京都能楽会新年奉納が
あるというのです。
神楽殿へ行くと満席に近く、かろうじて後方に座り込みました。

            

まもなく、最初の演目「翁」が始まりました。
能「翁」の呪文のような神にささげる歌です。

   とうとうたらりたらりら
        たらりあがりららりとう・・・

翁は「能にして能にあらず」といわれ、能が正立する以前の
「猿楽」の形を残した能です。
天下泰平、五穀豊穣、国土安穏を祈る能なので、
新年を寿ぐのにこれほどふさわしい能はありません。

            
                    千歳の舞

以前観た能「翁」とはだいぶ違い、日吉式となっていました。
面を着けずに千歳、翁、三番叟の三人が次々と謳い舞う、
とてもシンプルな「翁」で、能が成立する以前の神楽「翁」を
再現しているかのようでした。

           
                    翁の舞

以前、金剛能楽堂へ見学に行った折、
金剛永謹氏が翁で使う面(白色尉と黒色尉)を手にして
次のようなことを話してくださいました。

  その昔、「翁」は神楽として神官が演じていました。
  あるときに神官から能楽者へ丸投げされたのです。

  神官ではない能楽者が神前で「翁」を奉納するためには
  大変な努力をしなくてはなりませんでした。
  別火を行い、身を浄め、神に近づくために「面」をつけ、
  祈りのための「翁」を演じるのです・・・と。

そんなお話を思い出しながら「翁」を拝見しました。

           
               力強い三番叟の舞

「翁」に続いて「高砂」まで拝見してから、本殿の参拝の列へ並びました。
並ぶこと30分、やっと神前に進み、小さな幸せをお願いしました。
初詣後は恒例のおみくじです。
「末吉  願い事は叶うけれど、たゆまぬ努力をしなさい・・・」
大いに納得して、次の「日向大神宮」へ向かいました。

      
          初詣-2 日向大神宮へつづく
                                 ときどき時雨


 
(参考)       
京都府 【京都能楽会新年奉納】
12時半  平安神宮神楽殿
★翁 日吉式 浦田保浩 田茂井廣道 茂山良暢 
 笛 森田保美 小鼓 林吉兵衛 林大和 林大輝 井林久登
★舞囃子 高砂 金剛龍謹 
 笛 杉信太朗 小鼓 曽和尚靖 大鼓 石井保彦 太鼓 井上敬介
★仕舞 鶴亀 吉田篤史 
    東北 キリ 河村晴久 
    猩々 宮本茂樹
★仕舞 田村 クセ 種田道一
★小舞 三人夫 網谷正美 松本薫 山口耕道
★舞囃子 嵐山 片山伸吾 
 笛 左鴻泰弘 小鼓 吉阪一郎 大鼓 渡部諭 太鼓 前川光長




暁天講座2013  建仁寺座禅会

2013年07月31日 | 京暮らし 年中行事
7月2日の半夏生の日に立ち返りますが、
建仁寺塔頭・両足院で半夏生を見た後で、建仁寺へ寄りました。
庫裏の玄関の衝立に
   大哉
   心乎
とあり、ちょうどそこにいらしたお坊さまに読みと意味をお尋ねしました。
すると、
   大(おお)いなる哉(かな)、心(しん)や。
   
と読んでくださり、禅語の意味する処はムニャムニャ・・・・うーん。
「心は自由で大きく、東西南北いずれへも広げられる」
・・というようなお話だったような。

お話を伺って勝手ながら
「関 東西南北活路通」
「応無処住 而生吾心」
という二つの禅語を頭に思い描いておりました。

            

あとで建仁寺開山・栄西禅師の著書「興禅護国論」の序と知りました。

   大(おお)いなる哉(かな)、心(しん)や。
   天の高きは極むべからず、しかるに心は天の上に出づ。
   地の厚きは測るべからず、しかるに心は地の下に出づ。
   日月の光はこゆべからず、しかるに心は、日月光明の表に出づ。
   大千沙界は窮むべからず、
   しかるに心は大千沙界の外に出づ。
   それ太虚か、それ元気か、心はすなはち太虚を包んで、元気を孕むものなり。
   天地は我れを待って覆載(ふうさい)し、日月は我れを待って運行し、
   四時は我れを待って変化し、万物は我れを待って発生(ほっしょう)す。
   大なる哉、心や。

                         

お尋ねしたお坊さまから7月12日~14日まで暁天座禅会があるので
ぜひいらっしゃいと、お声を掛けて頂きました。

            
                 金澤祥子書 「風神雷神」

7月14日(日)6時、建仁寺へ自転車で出かけました。
前日の激しい雷雨が上がり、清々しい気が方丈に満ちていました。
方丈の部屋には座禅用座布団が用意され、
すでに座禅を組み、めい想に入っている人もいます。
まもなく座禅の仕方や作法の教えがあり、腹式呼吸を調えながら
約300名の参加者が座禅に入りました。

眠気に襲われたり、心に雑念を生じると、
手を合わせて身体を前に倒します。
それが合図となり、お坊さまが警策で背中を二度敲いてくださいます。
15分づつ、休みをはさんで30分、雑念を祓い、ひたすらめい想します。
それは心が洗われるような気持のよい時間でした。

              

              

建仁寺の暁天座禅会、なんかやみつきになりそうな座禅会です。
・・・と思っていたら、月に一度、座禅会を開いているとのことでした。
次に建仁寺管長・小堀泰厳老師の講演を拝聴しました。

暁天座禅会の終了後、漬物(梅干と沢庵)と粥がふるまわれました。
その際に、食作法についてもご指導があり、
「器を回しますので、施餓鬼といって
 食べる前に粥を少しこの器に入れていただきます。
 沢庵一切れは残して、最後に湯が出ますので、それで食器を清めます」
さすが、四ツ頭之式で名高い建仁寺の朝粥の作法・・と思いました。

              
                      朝粥の席

              


その後、方丈前の庭を眺めてくつろいだり、法堂天井の双龍図を拝観し、
庭へ出て茶室・東陽坊と露地を見学したり・・・
座禅と講話で清められた心を広く遊ばせて頂き、お接待にただ感謝でした。

                                    


祇園祭2013-2 祇園祭へ友 来たる!

2013年07月18日 | 京暮らし 年中行事
                 ステキな「山鉾・鯉山の見送り」は
                 16世紀ベルギー製のタペストリー 

祇園祭献茶式へ茶友KさんとYさんが関東からやってきました。
15日の宵々山へ繰り出す前に灑雪庵へ寄ってもらい、
粗茶一服差し上げたいと思いました。

特に趣向もありませんが、花屋さんへ行くと、
「この花は?」
初めて見ますが、大好きな檜扇水仙に似ています。
「檜扇(ヒオウギ)です。
 祇園祭の花で、四条通や鉾町では祇園祭にこの花を生けるんです。
 それを見て歩くのも楽しいですよ」
「あらっ、私もこれにするわ。 1本でもいいかしら?」
檜扇は、葉っぱが扇を広げた姿に似ていることから名づけられたとか。 

                  
                                季節の花300提供

床は「滝 直下三千丈」、黄梅院・太玄和尚筆です。
檜扇と山ゴボウを有馬篭に入れました。

Yさんとは2年ぶりでしょうか?
顔を拝見した途端、いろいろなことが次々と思い出されて
「お久しぶりです。よくいらっしゃいました・・・」
両親の介護、母上との別れなど大変な日々を過ごされたことが推察され、
今回の祇園祭を本当に楽しみにいらっしゃったのでした・・・。

ご挨拶のあと、お菓子をお出ししました。
炭手前は省略し、すぐに濃茶点前です。
湯相もよく、濃茶をたっぷり練りました。
「お菓子のあとにキリッとした渋みの濃茶が最高でした」
(・・・あぁ~よかった・・)
濃茶は一保堂の青雲、手製のきんとんの銘はそこ紅、
濃茶茶碗は志戸呂焼・利陶作です。

干菓子の代わりに「したたり」(亀廣永製)をお出しし、
長刀鉾絵と蓮絵の茶碗で薄茶を点てました。
薄茶は洗い茶巾、
茶巾の絞り方、音の聞かせ方などを教わりながら・・・楽しかったです。
それから「いざ!宵々山へ」。

                

                
                     菊水鉾の茶席(遠州流)

初めに初日に訪れた菊水鉾の茶席へお連れすると、15日は遠州流でした。
席は空いていましたが、お点前が終わる所でしたので案内の方へ
「お点前を是非拝見したいのですが・・・」
すると、
「それでは次回へ入って頂きますので、こちらでお待ちください」
と待合席へ案内されました。

三人揃って最前列の席へ座ることが出来ました。
「したたり」が運ばれ、薄茶も美味しく頂戴しましたが、
なかなかお点前が始まりません。すると、隣席から
「毎年、遠州さんの点前を楽しみに菊水鉾の茶席へ来ています。
 ぜひ、拝見したいのですが・・・」
とお声が掛かってお点前が始まりました。

                
                     仕組んだ茶筅の向きに注目

男性の、きちんとした丁寧なお点前に三人とも惹きつけられました。
右腰につけた帛紗、膝上で帛紗をたたむ所作、袱紗捌き、
目の前で千鳥茶巾のように茶巾を優雅にたたみ、柄杓や茶筅の持ち方の違い、
点前の中に濃茶のような所作もあり、もう興味津々でした。
薄茶がYさんへ運ばれてラッキー! これも好い思い出となります。

拝見に回された茶碗が印象に残りました。
厚手の白磁ですが雨漏り手のような内面、胴に呉須で蟹と海老が描かれています。
はてな? と思い、お尋ねすると
「遠州七窯の一つ、古曾部で、江戸時代の作です」
古曾部焼の茶碗は野趣を感じる、味わい深いものでした。

               

菊水鉾を出ると、夕闇が迫っています。
一歩通行のムンムンする雑踏の中へすぐに呑み込まれて行きました。

                                     

         祇園祭2013の項    前へ      次へ 


祇園祭2013-1 占出山と菊水鉾茶席

2013年07月15日 | 京暮らし 年中行事
                  占出山の社(会所)

7月13日(土)、菊水鉾の茶席と北観音山の曳き初めへ行くつもりでいたら、
昼頃急に雷雨があり、出鼻をくじかれました。

雨があがったので、もう大丈夫かしら? と出かけました。

山鉾の挽き初めも感動ものですが
山鉾を華麗に彩る山飾りが宵山の期間だけ展示公開されています。
ぶらぶら見て歩くのも宵山の楽しみの一つです。

最初に寄ったのが占出山(うらでやま、錦小路通室町東入)。
神功皇后が新羅出兵の折に肥前国の松浦川で鮎を釣って戦勝を占ったという
故事に由来し、 「鮎釣山(あゆつりやま)」とも呼ばれています。

占出山には他の山鉾にはない小さな社(会所)があり、ご神体は神功皇后です。
神功皇后は懐妊中に出兵し、凱旋後に無事出産したことから
「安産の神」として古くから信仰され、
社では安産祈願のお守りや腹帯を授与しています。

             

私が訪れた時にも安産のお守りを求めている女性がいらっしゃいました。
占出山の巡行順番が早いと、その年のお産は安産だといわれていますが、
2013年は12番です。

社の反対側に展示場があって、
日本三景より前懸は「宮島」、胴懸は「松島」と「天橋立」の綴錦、
新調された「三十六歌仙」の刺繍絵の水引などが展示されていました。

             

             
                  三十六歌仙(水引)と松島(胴懸)

             
                  三十六歌仙(水引)と宮島(前懸)

             
                  精巧な刺繍にうっとり

ここでバケツをひっくり返したような大雨に合い、
しばらく展示品と稲光の空を眺めながら雨宿りです。       

小雨になったので菊水鉾の茶席へ向かいました。
歩いて5分もかからない近さなのですが、途中雨宿りをしながら・・・。

               
                  雨の菊水鉾
茶席は会所の2階で、
初日は昨年と同じ、裏千家流の鈴木宗博先生のお席でした。

鈴木先生のお点前でしたが、途中からなので拝見できず残念・・・。
鈴木先生もお運びの方も涼しげな浴衣姿で、祭りらしさを感じます。
雨にもかかわらず着物姿の女性がたくさん参加しているのにもびっくり、
白い菊皿にのった「したたり」(亀廣永製)が運ばれ、
刷毛目の数茶碗で薄茶をたっぷり頂戴しました。

               

               
                  菊水鉾の茶席にて

                    

目を惹いたのは水指で、菊水鉾のような水指でした。
これは13日限り・・・と会記にありましたが、何の説明もお話もなく、
ものたらなく感じたのは私だけでしょうか?
宵山の山鉾で唯一の、皆が楽しみにしている茶席なのですから
一席ずつ時間と人数を決めて、もう少し丁寧に応対して頂けないかしら?
トコロテンのような押し出し方式が残念に思いました・・・。

               

気を取り直して「北観音山」の曳き初めへ向かいました。
また、雨が・・・・。

          祇園祭2013の項  次へ