今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

826 ロンドン⑦(英国)

2018-07-25 06:00:00 | 海外
薔薇を嫌いだという人はあまりいないだろうが、英国人はことのほかこの花を愛しているのではないか。公園や花屋の店先で、主役はどこもバラだ。早朝のリージェンツ・パークを散歩して、色とりどりの薔薇たちと窃やかな交歓を交わす。これだけでもロンドンまでやってきた甲斐がある。イングリッシュガーデンは西洋の庭園様式の一つで、自然美に重きを置く構成だから、フランス式より日本人は馴染みやすい。



早朝の庭園は鳥たちの天下だ。目覚めたばかりの鵞鳥が芝の広場を我が物顔にのし歩き、白鳥が上品に水面を揺らす湖面を、孤独なアオサギが樹上から見下ろしている。餌場の動きを察知したのだろうか、鵞鳥たちが猛ダッシュを始める。リスは踏みつけられてはたまらないと、ぴょんぴょん逃げ回る。大きな散水車がやってきて、薔薇たちにたっぷり水を撒く。前日のゴミを拾って歩く黒人は、出稼ぎ労働者だろうか。



残月が未練がましく、西の空に張り付いている。私はすっかり鋭気を回復し、「さあ、今日も行くぞ」とアパートに戻る。週末の蚤の市を目指すのだ。ロンドンは蚤の市的路上マーケットが実に多い。私が行く先々の街で蚤の市に立ち寄るのは、掘り出し物を期待する下心がないわけではないけれど、街の生活臭に触れるのに、これほど手っ取り早く、確実な場はないからだ。売り手買い手の素振りを見ているだけで、飽きない。



まずはロンドン最大のアンティーク・マーケットといわれる「ポートベロウ・マーケット」に行ってみる。ノッティングヒルの住宅街に延びる2キロほどの通りが、毎週土曜日、テントと人で埋め尽くされる。アンティーク・雑貨・古着と、大まかに3ブロックに分かれ、いずれも大賑わいだ。頭上には「150YEARS」と書かれた横断幕が掲げられているから、日本の明治維新と同年に始まったマーケットなのだろう。



ここでは地元の買い物客より観光客の方が多いように見受けられるが、衣料品が中心だというイーストエンドのマーケットにまで足をのばすと、アフリカ系黒人女性が多くなる。どれも1ポンド(約150円)のパンツやシャツが投げ売りされていて、路上に広げられたテーブルに段ボールから商品がエイっと投げ出されると、彼女らは奪い合うようにそれらを抱え込む。路上マーケットにもそれぞれ客層があるようだ。



さて私はというと、マーケットをはしごしながら、面白い雑貨はないかとうろついている。しかしさっぱり見当たらない。ストックホルムなど北欧の街で「欲しがり虫」を抑えるのに苦労したことがウソのようだ。どうやら私は、大英帝国的センスと好みが異なるようだ。確かに猫足の家具や、ウエッジウッドのきらびやかな磁器に興味は向かないし、ウイリアム・モリスの壁紙にしても、優れていると思うが使いたくはない。



世界は多様性に満ちているのだから、私の「欲しがり虫」が疼かない街があっても不思議はない。ただロンドンのマーケット巡りで、物価も家賃も高いこの街で生きる、人々のしたたかなパワーを感じた。そして路上喫煙が野放図であることに辟易した。間接喫煙規制を強めようとしている日本だが、路上や歩行喫煙の制約を徹底しなければ、喫煙が店内から店外に移るだけだと、ロンドンが実証している。(2018.6.24-7.2)
















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