その街の名からして、ポートランドは海沿いの港町だと思っていた。しかしオレゴン州・ポートランドは太平洋からコロラド川を遡り、さらに支流のウィラメット川に入り込んで到達する、かなり内陸部の街である。ただその名は、街を拓いた開拓者の故郷で、大西洋岸の港湾都市、メイン州・ポートランドにちなんで命名されたという。確かに「川のポートランド」ではある。米国の街の成り立ちは日本と大いに違う。
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坊やは妻の膝上がいたく気に入ったらしい。母親が「ご迷惑でしょ」と抱き取るのだが、またヨチヨチと歩いて来て繰り返しよじ登る。妻があまりの可愛さにホホズリなどするものだから、もう抱かれたまま離れようとしない。手に負えなくて母親は、スマホでパパを呼び出し、様子を実況中継して見せている。スマホのパパは大笑いだ。シアトルのキングストリート駅。私たちはポートランド行きの特急列車を待っている。 . . . 本文を読む
バンクーバーの南、もう米国との国境が近いフレーザー川の河口にスティーブストン(Steveston)という漁港がある。今ではリッチモンド市に含まれるが、19世紀末からおよそ100年間、サケ漁とそれを缶詰に加工する水産業で大いに栄えた土地だ。漁民として、あるいは缶詰工として、日本からも多くの労働者が海を渡った。勤勉な彼ら彼女らは大戦の荒波を乗り越え、大きな日本人コミュニティを形成した。 . . . 本文を読む
この美しいご婦人方は、何のグループなのだろう。お揃いの黒のパンツで勢ぞろいし、先住民芸術の前で記念撮影に興じている。ここはバンクーバー・スタンレーパークのトーテムポール広場。この地には、遥か昔ベーリング地峡を経てアジアからやって来たファースト・ネーションやイヌイットの長い生活があるのだが、ヨーロッパ文明が進出して来たのは17世紀になってからだ。建国は1867年、実に若い国だ。 . . . 本文を読む
市章ではないようだが、Vancouver City Hallの標識に、二人の若者のプレートがはめ込まれている。一人は斧を、もう一人は網を持ち、「BY SEA LAND AND AIR WE PROSPER」と刻まれている。「この海と大地で、我らは繁栄を目指す」とでも訳すのだろうか。船と砦や先住民のトーテムポールも描かれ、海を越えて移住してきた人々が、この地の先住者とともに新たな生活を築く決意を示しているかのようだ。
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君は「カナダ」を知っているか、と問われたら、何をバカなことをと言い返そうとするのだろうが、そこで私は思い当たるに違いない、実は何も知らないことに。週末は、妻が焼いてくれるホットケーキにメイプルシロップをたっぷり浸していただく。その時だけは私は「カナダ」を意識する。しかしその歴史は? 国の成り立ちは? となると何も知らないことに改めて気が付くのだ。だからバンクーバーにやってきた。
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