今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

340 只見(福島県)・・・空遠く山の彼方の奥会津

2011-04-29 21:50:13 | 山形・福島
地球規模で俯瞰すれば、日本列島など取るに足りない面積ではあるけれど、その列島に暮らす身にとっては広大過ぎてつかみ切れない地域がある。奥飛騨や紀伊山地とともに、私にとってそうした特別なエリアの一つが南会津、あるいは奥会津と呼ばれるあたりなのだ。浜通り・中通り・会津と、地域を三つに大別する福島県にあって、奥会津は関東から見れば日光や尾瀬の奥、越後からは雪を戴く山脈の向こう側になる。どんな世界なのか? . . . 本文を読む
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339 喜多方(福島県)・・・寄り添ってラーメン啜る空広し

2011-04-27 10:30:22 | 山形・福島
喜多方を思い出している。会津の「北方(きたかた)」にあって、磐梯山の西麓を北上する米沢街道に営まれた宿場町である。訪ねたのがいつだったか、思い出せなくなってしまうほどの時間が経過したが、福島原発の事故で故郷を追われた人たちの、避難所の一つになっているとの話から、静かな蔵の街の佇まいが思い出されたのである。太平洋と日本海からほぼ等距離の、つまり本州の最も奥深いあたりに、人々の寄り添う暮らしがあった。 . . . 本文を読む
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338 岡山(岡山県)・・・瀬戸内に新たな国を置いてみる

2011-04-24 13:00:04 | 岡山・広島
中国地方の中心都市は岡山か広島か。東日本人の私には体感的理解ができないからの疑問かと思っていたら、ネット上で熱い論争になっているので驚いた。道州制の導入論議が盛んになって「その場合、どの街を州都にするか」と、具体的なイメージが浮かぶようになったからだろう。現状では広島優位のようだが、地理的な将来性は岡山にあるといった意見も多い。広島から東へ、山陽路の街をたどりながら岡山に着いたところで考えた。 . . . 本文を読む
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337 吉祥寺(東京都)・・・行列の人が溢れて事も無し

2011-04-21 09:24:25 | 東京(都下)
金曜日の午後に発生した東日本大震災は、首都圏に膨大な帰宅困難者を生じさせた。そして週明けの月曜日、東京は今度は通勤パニックに陥った。都民はそのときようやく、自分たちも震災被害の渦中にいることを悟った。その象徴のように、駅の外に延々と続く通勤者の長い列が映し出されたのが吉祥寺だった。だが吉祥寺のいつもの雑踏は、震災1ヶ月を経ずして戻って来た。電車が動き、井の頭公園の桜が散歩心を弾ませるからだろう。 . . . 本文を読む
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336 児島(岡山県)・・・ジーンズをはいて無人の通り行く

2011-04-19 10:38:25 | 岡山・広島
石畳がしっとりと濡れているせいであったかもしれない。あるいは長く延びた黒塀の木の質感によるものだろうか。私は初めての街のガランとした通りに立って「この懐かしい気分は何だろう」と考えていた。倉敷市に合併するまで児島市といった街で、最も賑やかだったといわれる味野商店街に迷い込んでいる。湧きあがる懐かしさの根源は、人の暮らしが自然と創り出した、緩くカーブして続く狭い通りの佇まいにこそあるようだった。 . . . 本文を読む
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335 丸亀(香川県)・・・瀬戸内を朝に渡って昼帰り

2011-04-18 18:02:49 | 香川・徳島
まず広島に行き、岡山へと戻りながら途中の街を見物する今回の旅のプランを、立てたのは私である。山陽路は行ったことがないという彼女に、尾道や倉敷を案内したいと考えたのである。行程を練りながら、最終日に余裕があることが分かった。そこでひらめいたのが瀬戸内海を渡って四国に行くという大胆なアイデア。だが岡山から電車に乗れば1時間足らずで丸亀に着く。瀬戸大橋のおかげで大胆でもなんでもないことだった。 . . . 本文を読む
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334 倉敷(岡山県)・・・川面から空を見上げて美観地区

2011-04-17 20:05:16 | 岡山・広島
倉敷は市中心部の観光整備地域を「美観地区」と呼んでいる。何とも芸のない名称ではあるけれど、古くからの街並みを活かした観光スポットを整備するといった、いまでは全国で盛んに行われている町おこしの、先鞭をつけた街が倉敷ではなかったか。だとすれば美観地区といった、いまでは古風に響く表現も、歴史的重みを持って来るというものである。私が初めて訪ねた30年前には、すでに地区の形は完成していたことを思い出す。 . . . 本文を読む
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333 福山(広島県)・・・城跡を分断してでも新幹線

2011-04-15 11:24:51 | 岡山・広島
新幹線で福山駅を通過する際、すぐ近くにお城がちらりと見える。どこか今どきの作り物のように見えて、ホンモノかどうか気になっていた。今回、途中下車する時間があって訪ねてみると、天守閣こそ戦後の再建ではあるけれど、なかなかどうして本格的な城郭なのだった。見ごろになった桜を楽しみながら天守に登り、水野・松平・阿部の歴代のお殿様に「失礼いたしました」とお詫びした。福山はほぼ30年ぶりの訪問なのである。 . . . 本文を読む
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332 尾道(広島県)・・・花と海備後の空は春霞

2011-04-14 09:35:12 | 岡山・広島
私は16歳の夏、山口県宇部市で開催された高校総体に出場するため東京駅から夜行列車に乗った。東海道新幹線が開通する2年前のことである。山陽道のどこかで夜が明け、広島で乗り継ぐまでの長時間、山陽本線に揺られて「何と退屈な風景が続くのだろう」と飽き飽きしたことを憶えている。広島から岡山まで、そのとき以来の列車の客になって、車窓からの景色の凡庸さに変わりがないことを確認した。ただ尾道だけは、海が美しい。 . . . 本文を読む
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331 広島(広島県)・・・願わくば花の下にて春生きん

2011-04-10 11:34:44 | 岡山・広島
東日本大震災による福島原発の崩壊で、日本が再び放射能の恐怖に対峙しているさなか、広島の平和記念公園を訪れた。「再び」とはいっても、私を含めほとんどの日本人が広島・長崎以後世代である。原爆の苛烈さは、写真資料で得た知識だ。だから原爆ドームに初めて対面すると、激しく動揺する。彼女も凍り付いてしまった。立ったまま身じろぎできない。つばの広い帽子に隠れて見えないけれど、泣いているのかもしれなかった。 . . . 本文を読む
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330 立川(東京都)・・・都市軸を行きつ戻りつ伸びる街

2011-04-04 11:53:43 | 東京(都下)
前にも書いたことだが、JR中央線の立川駅に降りると、乗降客のあまりの多さに驚かされる。7年前に発表された立川市の「都市軸沿道地域まちづくり誘導指針」によると、「JR立川駅の乗車人員は平成13年度には14万人を超え、吉祥寺駅を抜いて新宿駅より西では1位になった」と書いてある。混み合う駅は暮らし難い街の象徴にも思えるが、逆に人々の押し合う熱気が、伸び盛りの街には不可欠の栄養源だということだろうか。 . . . 本文を読む
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329 八王子(東京都)・・・賑わいの夢から覚めて高齢期

2011-04-03 19:33:03 | 東京(都下)
街にも成長期や円熟期、そして老年期というものがあるのだろうか。東京の真ん中をひたすら西に延びて行く中央線に乗り、二つの駅に降りてそんなことを考えた。八王子と立川である。江戸開府とともに関東を束ねる代官所が置かれた八王子は、400歳にもなろうかという街である。片や立川は、市域の中心を占める米軍基地が返還された1977年を新生立川の誕生年だとすれば、30代を迎えたばかりの若い街ということになる。 . . . 本文を読む
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