テレビをつけていると、やれ何処かの山肌が錦の絨毯だとか、どこそこの庭園の紅葉がまさに見ごろだとうるさいほどだ。晩秋に植物が色づくのは当たり前の自然現象だろうにと、ここは鼻曲りの年寄りらしく部屋で一人毒づいている。ところが「昭和記念公園のイチョウ並木が色づいてきました」と声を弾ませるレポーターの声に、「近いな、そういえば立川で、観たい陶芸展が開催中のはずだ」と耳を盗られ、いそいそと支度をするのであった。 . . . 本文を読む
東京圏は「街」と言うには巨大すぎる。それはいくつもの大きな街の集合体であり、3000万人を超す人々が暮らす世界最大の人口集積地帯だ。そこに鉄道が、網の目のように張り巡らされている。そうした鉄路の一つ小田急線は、学生のころから頻繁に利用してきた私鉄だけれど、それは新宿から多摩川までのことで、その先についてはさっぱり土地鑑がない。だから首都圏で「住みたい街1位」に選ばれたと評判の「厚木」とはどんな街か、知らない。 . . . 本文を読む
年間を通じて、これほど日照・気温・湿度・風力などの指標が快適に揃う日は何日あるだろう。「揃う」とは、私のような街歩きを楽しむ者にとってである。前日「木枯らし1号」が吹いた関東だけれど、今日は間違いなく「勢ぞろいの好日」である。そのせいもあるだろう、初めてやって来た神奈川県西部の秦野の街がとても心地よい。四囲をなだらかな丘陵に囲まれ、西方から富士山が白く輝いて見守っている。豊かな地下水が湧き出す街だという。
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この一輪に出会えただけで、今日はここまでやって来た甲斐があったと、いささか大仰な思いになるほど美しい薔薇である。快晴の陽を浴びる黄金の一輪は、程よく開花し切った瞬間にあり、どの花びらにもまだ一片のシミもない。秋バラが見ごろを迎えている「習志野市谷津バラ園」で、私はうっとりと立ち尽くしている。「世界のバラ800種類7500株」の園内は色彩と笑顔が溢れ、余りにうっとりしてしまった私は、品種名を確認し損ねた。 . . . 本文を読む
東京・三鷹駅と千葉駅を結ぶJRの路線がある。車体の黄色いラインが目印の「中央総武線各駅停車」だ。私は三鷹に住んでいるのでよく利用するのだが、この呼称が正式な路線名かどうか、いまだ知らない。また「三鷹発津田沼行き」という電車が多いので、津田沼という駅名は馴染みがある。ところが津田沼は行ったことがないから知らない街だ。よく利用するのに知らないまま乗っているわけで、いつもモヤモヤした気分が残る電車なのである。 . . . 本文を読む