今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

645 益田(島根県)人麻呂の最期を看取る夕日かな

2015-05-07 09:50:10 | 鳥取・島根
正岡子規は『病牀六尺』にこんなことを書いている。「左千夫曰ふ柿本人麻呂は必ず肥えたる人にありてしならむ。節曰ふ余は人麻呂は必ず痩せたる人なり。人間はどこ迄も自己を標準として他に及ぼすものか」と。子規がもし元気に旅ができ、石見の益田にやって来ていたら、人麻呂は太っていたか痩せていたか、判定を下したことだろう。かの歌聖がこの地に生まれ没したのだとすると、「人麻呂は痩せていた」と、子規に代わって私が断言する。 . . . 本文を読む
コメント

644 萩(山口県)静けさはいまのうちなり萩遺産

2015-05-06 20:31:44 | 山口・福岡
萩にハギが多いとは聞かない。この季節、街を埋めているのは桜である。指月城跡も橋本川の堰堤も、反射炉遺構でさえ桜花に埋もれている。訪ねた街が花で迎えてくれるのは嬉しいけれど、こうも桜漬けになると胸焼けしそうである。そこでツバキ祭りを終えて間もない笠山に行く。しっとり湿った園地に紅いツバキが無数に落花している。いささかほっとして周囲を見回すと、無人の広場で桜たちが無言の饗宴を展開しているのだった。 . . . 本文を読む
コメント

643 長門②(山口県)戦争を意図する者に怒り湧く

2015-05-05 09:16:03 | 山口・福岡
雨は降り続いている。瀬戸内の海を眺めて来た者には、雨の日本海はことのほか暗い。仙崎の街を離れ、仙崎湾を東へ回り込むと、山陰本線の長門三隅駅が現れて、香月泰男(1911-1974)が生まれた三隅町(現・長門市三隅)に入ったと知れる。湯免温泉という小さな温泉郷があって、香月泰男美術館はその一角にある。東京で絵を学び、戦争に駆り出され、シベリアに抑留された香月が、「ここが<私の>地球だ」と生きた地である。 . . . 本文を読む
コメント

642 長門①(山口県)みすゞさん、芽吹いた桜は花盛り

2015-05-04 13:26:30 | 山口・福岡
好天が続く山口路だが、長門は雨になる予感があった。金子みすゞと香月泰男が生きた街・長門。詩と絵画に天性の才能を輝かせながら、二人の悲運な生涯が投影しての予感である。案の定、本降りになった。傘を差して仙崎の街を歩く。しかし日が射すより、むしろその方が好もしい気分である。そして私が漠然と想像していたほどその人生は暗くはなく、日本海の山河の温もりに包まれていたことを知る。生地を訪ねてこその安堵である。 . . . 本文を読む
コメント