今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

1176 ハワイ④【米国】

2024-07-16 09:32:30 | 海外
「ハワイに来るのに、水着を持ってこない人がいるなんて」と呆れられ笑われてしまったけれど、私は「もう、泳ぐ年齢でもあるまい、浜辺で足首を海に漬けていれば結構」と考えていたのである。ところが「すっごく綺麗なビーチがあって、魚がたくさん見られるんですって。やっと予約が取れたんですから」と、引きずられるようにしてやってきたのはオアフ島南東端のハナウマ・ベイだ。海に入るのに予約が必要なビーチとはどんなところなのだろう。



オアフ島には島の南部を東西に、州間高速道路ハワイ1号線が通じていて、どこに行くのもこの高速道が便利だ。ダイヤモンドヘッドを南に望んで島の東端に向かう。ハナウマ湾は全米のベストビーチに2度も選ばれている、ハワイでも屈指の美しいスポットなのだという。海の透明度が高く、熱帯魚や、時にはウミガメにも出会えるのだそうで、私も「それなら!」と、ハーフパンツのまま海に入り、シュノーケリングに挑戦する。大きな魚がいた!



「ハナウマ」はハワイ語で「曲がった湾」という意味なのだそうで、かつては王族以外は立ち入りを禁じられた聖地だったという。現在は州の自然保護区で、入場人数や時間が厳しく制限されている。湾を一望すると、それが火山のクレーターであることがすぐにわかる。伊豆大島の波浮港そっくりなのだ。陸地から海を丸く取り囲むように延びるクレーターの外縁が、外洋に接する部分で崩落し、外海と結ばれている。注意事項を聴いて崖を降りる。



40年前、ミクロネシアのトラック島で楽しんだシュノーケリングを思い出す。ツンツンと肌を刺激する小さな熱帯魚と戯れていると、海底に日本軍の沈没した船が揺らめいていた。あの海と繋がっているのだと、当たり前のことながら感慨を覚える。広大な大洋州は、日付変更線東側のポリネシアと、変更線西側赤道以北のミクロネシア、以南のメラネシアに分けられる。ポリネシアほど大柄でなく、メラネシアほど黒くないのがミクロネシアだ。



ポリネシアの北端に位置するハワイには、5世紀前後、南のマルキーズ諸島から先住民となるポリネシアンが渡ってきたとされている。いきさつは忘れたが、米国ミネアポリスを訪問した際、大画面のある劇場に案内され、人類がハワイに到達する海洋冒険の映画を観たことがある。屈強のポリネシアンがカヌーを漕いで大海原を渡る冒険は勇壮で夢がある。今回、ホノルルのビショップ博物館でカヌーの展示を見て、あの海の勇者が懐かしくなる。



1986年、ミクロネシア連邦が米国の信託統治から独立し、日本の新たな隣国が誕生した。初代のナカヤマ大統領は日系で、当時はポナペと言った首都の島でお会いした。南洋の大きなパンの木が珍しく、「お腹が空いたらこの実を取って食べれば、働く必要はないですね」と愚かなことを言うと、「すべての木に所有者がいるのですよ」と教えられた。土地を外国人に売ることは固く禁じるなど、島には島の掟があり、生きる厳しさがあるのだった。



3つの「ネシア」から成る太平洋の島嶼国は、かつてはゴーギャンが娘たちを描き、水爆実験の厄災を被り、目下、地球温暖化による海面上昇の危機が迫っている。さらには海洋進出を強める中国の暗躍で、政治的緊張が伝えられもする。ハナウマ・ベイの海は、すべての島々と「海の道」で結ばれている。地球上で、せめてオセアニアの海くらいは穏やかな平和が広がっていて欲しいと、砂浜の椰子の木陰で、大海原の彼方を見やるのである。(2024.6.29)







(伊豆大島・波浮港)








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