今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

1092 東京駅(東京都)東京でパリの裏町に迷い込む

2023-03-31 13:57:44 | 東京(区部)
東京駅丸の内北口の2階回廊から、コンコースを往き交う人たちを眺めている。ホームから降りて来る人々と、電車に乗ろうと改札を入って行く人たちが交錯を続ける広いコンコースは、都市の息遣いがこだましている。私はステーションギャラリーで開催中の「佐伯祐三展」を観てきたのだ。駅舎にあるギャラリーは、観終わるとこの回廊に出ることになる。だからしばらく人の流れを眺めることで、パリの街角へと浮遊した意識を戻そうとしている。 . . . 本文を読む
コメント

1091 小諸(長野県)快癒祝う古城のほとりの濁り酒

2023-03-26 12:28:25 | 新潟・長野
小諸で小さな同級会が開かれた。新潟市の中学校で同級だった後期高齢者の4人が、そのうちの小諸在住の一人が大きな病から快癒したことを祝おうと、集まったのだ。東京では前日に桜の満開が発表されているものの、信州小諸ともなると蕾はまだ固い。それでも「古城のほとり」あたりでは、千曲川の流れが春を運んでくるのだろうか、ミズキやモクレンが開花し始めている。幼馴染とは不思議なもので、会えばいっぺんに時間が溶けてしまう。 . . . 本文を読む
コメント

1090 鹿沼(栃木県)蒼天の鹿沼を歩き「はるのくれ」

2023-03-20 14:56:58 | 群馬・栃木
まばゆいほどの早春の光を浴びて、美しい桃色を広げているこの花の名は何だろう。桜でも梅でもない、花桃の一種かもしれない。鹿沼の名園の一つ、掬翠園の塀越しである。周囲はまだ冬の装いを脱していないというのに、ここだけは季節が進んでいる。だから通りかかる人は、写真に収めずにはいられないのだろう、背伸びをして頑張る。隣りで目を細めて眺めているのは芭蕉だ。334年前、奥の細道行脚の芭蕉は、3日目の草鞋を当地で脱いだ。 . . . 本文を読む
コメント

1089 今市(栃木県)巨木見上げ往く日光の杉並木

2023-03-19 15:36:21 | 群馬・栃木
日光杉並木は、日光街道・例幣使街道・会津西街道の、東照宮に通じる3本の街道に植林されている。総延長は37キロにもなる世界一長い並木道なのだそうで、今市で合流して聖域を目指す。国から特別史跡・特別天然記念物の二重指定を受けている極めて貴重な樹列は、心地よい木陰を作って今も生活の傍らにある。東武日光線の上今市駅前から始まる最後の日光街道部分を歩くと、天を衝く巨木に覆い包まれるようで、自分が小さくなっている。 . . . 本文を読む
コメント

1088 日光(栃木県)神橋も花粉に霞む杉並木

2023-03-17 15:30:13 | 群馬・栃木
閉山50年の足尾銅山を歩こうと計画した今回の旅は、帰路は再び「わたらせ渓谷鐵道」で戻るしかないと思っていた。ところが調べてみると、足尾から日光に通じるバス路線があるではないか。日光市は大規模な合併で、全国3位の広大な面積の自治体になったのだが、その市域を12の市営バス路線がカバーし、奥地の集落にも公共交通の便が届いているようだ。たとえ財政負担は重くても、それができないようでは合併した甲斐がないとの意気込みか。 . . . 本文を読む
コメント

1087 足尾(栃木県)「あかがね」が造って消えた「足尾千軒」

2023-03-16 08:49:00 | 群馬・栃木
渡良瀬川を最上流部へ遡り、時間も500年ほど巻き戻してみよう。杣人らの倹しい暮らしの場であった奥日光南面の足尾山地は、1610年、銅鉱脈が発見されたものだから江戸幕府直轄の鉱山となり、谷は「足尾千軒」の賑わいに一変する。明治になって「古河」がやって来て新鉱脈を発掘、日本一の大銅山となって38000人の街に膨れあがった。山はそうやって富を産み、毒を流し、脈が尽き閉山する。今、人口は1600人を割り込んでいる。 . . . 本文を読む
コメント

1086 神戸(群馬県)渓谷の花粉かき分けわれは行く

2023-03-12 09:43:13 | 群馬・栃木
鉄道唱歌に「山に続きて二里南 銅鉱出だす足尾あり」と歌われた足尾線は、70年間の国鉄・JR時代を経て1989年、地元出資の「わたらせ渓谷鐵道」に引き継がれた。群馬県桐生駅から渡良瀬川に沿って北上し、栃木県旧足尾町の間藤駅までを結ぶ44.1キロの山あいの鉄路である。紅銅(べにあかがね)色と言うらしい塗装を施されたディーゼル車両が、1時間に1本ほどのダイヤで運行している。その中ほどに「神戸(ごうど)」駅がある。 . . . 本文を読む
コメント

1085 井の頭(東京都)昔から人は花を見て死を思う

2023-03-02 12:58:05 | 東京(都下)
この時季になると、決まって足が向く場所がある。井の頭公園の西園広場だ。早咲きのエドヒガンザクラが並んでいて、まだまだ冬のたたずまいの公園に、突然華やかなピンク色を広げるのだ。「足が向く」と言っても、いつもの散歩コースをちょっと迂回する程度なのだけれど、これが「花の誘引力」というものか。点在するテーブル付きのベンチはお年寄りのグループが占拠して、笑顔を広げている。人は昔から、満開の花を愛でると死を思うらしい。 . . . 本文を読む
コメント