今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

861 霧島(鹿児島県)霧島はアートの森と天孫降臨

2019-02-16 11:17:33 | 熊本・鹿児島
九州は巨大な火山が点在する島で、そのいずれもが響きのいい呼称を与えられている。雲仙、阿蘇、霧島などだ。なかでも「霧島」は、峰々が雲海を突き抜け、あたかも霧に浮かぶ島々のような雄大な風景を連想させる。天孫降臨の舞台は諸説あるようだが、霧島の峰のひとつ高千穂峰は確かにふさわしいと、山麓を巡りながら感じ入った。日本神話の作者は、この峰の神々しい姿を見知って物語を編んだに違いない、と . . . 本文を読む
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859 志布志(鹿児島県)山頭火空の寂しさ詠う街

2019-02-01 12:57:33 | 熊本・鹿児島
湾に突き出た小さな岬に建つホテルから、空が白み始めた志布志湾を眺めている。今日もいい天気になりそうだ。眼下の海に白い航跡を残して、小さな漁船が港に帰って行く。どこから飛んで来たのか、視界にトンビが割り込んできて大きな円を描くと、その向こうに志布志港がうっすら姿を現し始めた。貨物船がいくつも停泊している。なかなか大きな港湾のようだ。私はなぜ、こんなに遠くまで来ているのだろう。 . . . 本文を読む
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511 天草(熊本県)島だって橋で繋げば半島だ

2013-04-26 15:29:10 | 熊本・鹿児島
おそらく戦前までのことであろうが、天草の食料事情を土地の人は「ネタクリカンチョにイワシのシャーレ」と表現したそうだ。これは「練った甘藷とイワシのおかず」のことだと、宮本常一編『島』で杉本尚雄という人が書いている。アマクサなる牧歌的な響きとは裏腹に、離島の暮らしは厳しいものだったのだろう。不知火の海を眺めているうちに、わずかでもその土を踏んでみようと思い立ち、天草五橋を渡って千巌山に登った。 . . . 本文を読む
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504 小国(熊本県)山里に湯煙浴びて鯉のぼり

2013-04-16 17:25:17 | 熊本・鹿児島
坂本善三(1911-1987)という画家がいる。熊本県北奥の小国町に生まれ、東京―パリと活動の場を広げながらも、制作の軸はいつも阿蘇の大地に置いた画家である。戦後の抽象絵画で作家の位置を固めたけれど、世俗的な意味での有名画家というわけではない。没後、郷里に「坂本善三美術館」が建てられた。「行ってみたい」と思い続けているといつかは実現するものらしく、山を越えてやって来た私は、座敷で作品と向かい合っている。 . . . 本文を読む
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503 阿蘇(熊本県)轟々と地球のつぶやき噴き上がり

2013-04-15 22:31:52 | 熊本・鹿児島
阿蘇に登ることにはいささか感慨があった。熊襲の地を「火国」と呼ばせた山とはいかなる巨魁か、対面する日をずっと楽しみにして来たのだ。しかし結論を先に述べると、期待はずれの拍子抜けという始末だった。つまらないとか、来たことを後悔したわけではないのだけれど、想念が膨らみ過ぎていたのか、あるいは火口まで車で乗り入れるという横着が祟ったか、山の霊気に触れたといった厳粛な気分には至らなかったのである。 . . . 本文を読む
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502 白水(熊本県)天空の花とミルクと外輪山

2013-04-14 17:32:13 | 熊本・鹿児島
春が近づくと飾る絵がある。群青が翠色と交わる空を背景に、画面の大半を満開の桜が埋めている。そこから無数の花びらが放たれ、下部に漂う深いブルーへと散って行く。作者はこれを「阿蘇の水源に咲いていた桜です」と言った。「眺めていたら風が吹いて来て、花びらが空を埋めるように舞ったのです」とも付け加えた。夢中で描き『天空の花』と名付けた。同じ場所かどうか、私もいま阿蘇にいて、大きな桜を前に外輪山を眺めている。 . . . 本文を読む
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501 五木(熊本県)私とて盆が早よ来りゃ早よ戻る

2013-04-13 21:59:14 | 熊本・鹿児島
九州の地図を眺めていて、人吉からまっすぐ北上する道の先に「五木」と「五家荘」があることを知った。子守唄と、平家の落人伝説が思い浮かぶ里である。私のイメージではいずれも秘境中の秘境のはずだ。訪ねてみたいけれど、無事に帰って来られるだろうかという思いも湧く。そこで五木村観光協会を探し、電話で問い合わせてみる。「普通の車で行けるでしょうか?」。対応に出た女性は「大丈夫ですよ」と言ってホッホと笑った。 . . . 本文を読む
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500 人吉(熊本県)球磨川の瀬音に目覚め人は善し

2013-04-13 11:00:14 | 熊本・鹿児島
夜通し驟雨が続いたのだなと思いつつ目が覚めた。肥後・人吉の朝である。本降りになったに違いないと窓を開けると、それは眼下の球磨川の瀬音なのだった。ホテル最上階の部屋まで届くほど、急流はせめぎ合い響いている。橋を行く人は傘を差しているものの雨脚は微かで、対岸の城跡は靄に包まれている。仲居さんは「大雨になると、その中洲も流れに埋まってしまいます」と事も無げに言ったけれど、それは恐ろしい光景であろう。 . . . 本文を読む
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499 美山(鹿児島県)異境にて土を焼きつつ400年

2013-04-06 22:31:11 | 熊本・鹿児島
薩摩焼はどうも苦手だ。特に白薩摩の、ヌメッとした肌と細やか過ぎる細工、繊細な絵付けは、私には体質的に合わないようだ。確かに超絶した技法の裏付けがあり、絶賛されて不思議ではないけれど、私にとってそれは、薩摩人がキビナゴと薩摩揚げの郷土料理こそが至上のご馳走だと自慢し、奨めてくれる際に味わされる気分に似ている。ただ沈壽官窯には行ってみたかった。15代も続く朝鮮陶工の窯場を、見てみたかったのである。 . . . 本文を読む
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498 鹿児島(鹿児島県)噴煙を今日も噴き上げ桜島

2013-04-05 16:48:05 | 熊本・鹿児島
日本で絵に描かれた山は、おそらく富士山が最も多いのだろうが、錦江湾に浮かぶ桜島も、画家の魂を激しく揺らす姿なのだと思われる。私もかつて、城山に建つホテルから初めてこの山を観て、気持ちが高鳴った経験を持つものだから、そうした画家の衝動は理解できる気がする。だからもう一度、心ゆくまで眺めてみたいと長いこと思い続けて来た。鹿児島市内に着いたのは午後もいささか遅くなっていたから、急いで城山に登った。 . . . 本文を読む
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497 枕崎(鹿児島県)南端の街を元気に体操帽

2013-04-04 17:29:58 | 熊本・鹿児島
交差点を制服姿の小学生が渡って行く。男子は半ズボンと、体操帽の白い側を出して被ることが規則なのかもしれない。今日は「修了式」で、明日から春休みになるらしい。私らの時代は「終業式」といったものだが、何が違うのだろう。ただ休暇に突入する子供たちが、楽しくてたまらないとじゃれ合っている姿は、半世紀以上昔の私と変わらない。ここは枕崎。九州最南端の街で、懐かしい自分を眺めている自分が不思議である。 . . . 本文を読む
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496 知覧(鹿児島県)特攻と武士の屋敷と茶の香り

2013-04-03 11:24:07 | 熊本・鹿児島
錦江湾を左手に見て、私たちは南下している。花曇りのせいか、桜島はほとんど判別できない。鹿児島市の郊外になるのだろう、埃っぽい町が続いている。直進する指宿方面を右に折れる案内標識に「知覧」が現れた。辻に立つ看板は「武家屋敷庭園群」でも「特攻平和会館」でもなく、「知覧茶」と大書された特産のお茶の広告看板だった。薩摩半島の懐深く、確かにどこまでも茶畑が続く。鹿児島県は全国第2位のお茶どころなのだ。 . . . 本文を読む
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495 水俣(熊本県)花冷えの苦海に浮かぶ恋路島

2013-04-01 14:39:38 | 熊本・鹿児島
水俣を訪ねた日、春は「花冷え」であった。不知火の海に沿って北上してきた薩摩街道・出水筋は、ずっとのどかな桜街道が続いていたのだけれど、午後になってむしろ気温が下がったのだろうか、水俣で市立水俣病資料館の丘に立つと、真冬のコートが欲しくなるほどだった。資料館に展示された「公害の原点」に触れたことで、被害を受けた人々の痛ましさと、それを拡大させた人間の愚かしさに心が萎えたことも影響したのだろう。 . . . 本文を読む
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194 加計呂麻島(鹿児島県)・・・青と白緑に赤を加計合わせ

2009-03-07 12:29:36 | 熊本・鹿児島
奄美の海の蒼さは尋常でない、と前回、書いた。紺碧、群青、翠緑・・・、私の貧しい語彙力ではとうてい表現できないほど澄んで、深く濃い色合いである。島人は「それだけ開発が遅れているということ。石垣島には敵わないけれど、沖縄本島よりはきれいでしょう」と自虐的に自慢するのだが、私には石垣の海より綺麗に見えた。さらに奄美大島の南部に連なる加計呂麻島に渡れば、海はもはや「美しい!」を超絶して、神秘的ですらある . . . 本文を読む
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188 名瀬(鹿児島県)・・・虹の島苦しきことの多かりし

2009-01-21 14:02:12 | 熊本・鹿児島
奄美大島で虹を見た。3日間滞在して、3日とも見た。何しろ空模様はクルクル変わる。雲が切れて、強い日が差してきたかと思うと、間もなくパラパラと雨が落ちて来て、おや、これは困ったと思案する暇もなく、また日が差し込んで来る。そして気がつくと、島の地平に見事な虹が架かっているのだ。「虹がきれいですね」と興奮して話しかけると、島人は「冬はだいたいこんな具合さ」と素っ気ない。何という贅沢か! 冬場はオフシ . . . 本文を読む
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