今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

1145 小平(東京都)「いまやらねばいつできる」と叱られる

2024-01-20 15:05:37 | 東京(都下)
小平市の中央南部、玉川上水沿いの閑静な住宅街である。庭の一隅に巨大なクスノキの胴部を置く邸宅がある。上部には雨除けの傘が懸けられ、高さは2メートルにもなろうか。胴回りは大人二人でようやく抱えられるほどの太さに見える。98歳でこの地に転居してきた彫刻家が、100歳で購入した木彫用材なのだという。「わしがやらねばたれがやる」と、107歳で没するまで創作意欲を燃やし続けた平櫛田中(1872-1979)の居宅跡である。 . . . 本文を読む
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1138 昭島(東京都)黄色く染まりイチョウと語らう

2023-11-24 11:09:16 | 東京(都下)
テレビをつけていると、やれ何処かの山肌が錦の絨毯だとか、どこそこの庭園の紅葉がまさに見ごろだとうるさいほどだ。晩秋に植物が色づくのは当たり前の自然現象だろうにと、ここは鼻曲りの年寄りらしく部屋で一人毒づいている。ところが「昭和記念公園のイチョウ並木が色づいてきました」と声を弾ませるレポーターの声に、「近いな、そういえば立川で、観たい陶芸展が開催中のはずだ」と耳を盗られ、いそいそと支度をするのであった。 . . . 本文を読む
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1085 井の頭(東京都)昔から人は花を見て死を思う

2023-03-02 12:58:05 | 東京(都下)
この時季になると、決まって足が向く場所がある。井の頭公園の西園広場だ。早咲きのエドヒガンザクラが並んでいて、まだまだ冬のたたずまいの公園に、突然華やかなピンク色を広げるのだ。「足が向く」と言っても、いつもの散歩コースをちょっと迂回する程度なのだけれど、これが「花の誘引力」というものか。点在するテーブル付きのベンチはお年寄りのグループが占拠して、笑顔を広げている。人は昔から、満開の花を愛でると死を思うらしい。 . . . 本文を読む
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1078 東久留米(東京都)清流に花の香乗せて竹の叢

2023-01-23 09:54:05 | 東京(都下)
竹林を写真に収めることは実に難しい。ひたすら真っ直ぐ伸びる姿は変化に乏しく、ファインダーを覗きながら様々に構図を変えてみるのだが、なかなかサマにならない。ではつまらない被写体かと言えばそんなことはなく、潔く天を衝く姿は美しく見飽きない。今日は東久留米市の竹林公園にやって来てカメラを構え続けているものだから、いささか首が痛くなってきた。傾斜地3600平米に2000本の孟宗竹。斜面の下には清水が湧いている。 . . . 本文を読む
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1070 国立(東京都)くにたちの記憶をつなぐポッポみち

2022-11-21 19:57:58 | 東京(都下)
妻のお供で国立(くにたち)に出かける。久しぶりの国立駅に降りると、駅は高架になってすっかり様変わりしている。それほど久しぶりということだ。洋裁が趣味の妻は、生地問屋や洋裁工房が余った布を処分するなどのセール情報をキャッチするのがうまい。それが今日は国立駅から北口徒歩8分ということで、引きこもりがちの私を散歩に引っ張り出したのである。高架下のショッピング街を抜けると、「ポッポみち」の標識が立っている。 . . . 本文を読む
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1013 禅林寺通り(東京都)ささやかな緑化推進沈丁花

2022-03-02 10:24:50 | 東京(都下)
わがマンションのエントランスで、沈丁花が開花した。微かに春の香りが漂っている。小さな株を通り沿いの鉢に植えたのは昨年11月。春が来て、通行人が香りに気づいて「あれっ」と振り向き、ちょっと驚いてくれたら楽しいな、と水遣りを続けてきた。三鷹駅南口付近から南へ、まっすぐ延びる道路は「禅林寺通り」と言う。突き当たりは江戸初期創建の禅林寺になる。私はその通りの入り口付近に建つ、古いマンションの緑化委員なのである。 . . . 本文を読む
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1010 三鷹(東京都)この街で暮らし始めて20年

2022-02-04 06:21:23 | 東京(都下)
写真の中央に浮かんで光っているのはシャボン玉である。三鷹市新川の三鷹中央防災公園の広場で、保育園児が遊んでいる。保母さんが石鹸水に浸したリングをサーッと振ると、たくさんの水玉が尾を引いて浮揚し始める。園児たちは歓声を上げてそれを追いかける。キラキラ光ってとっても綺麗だから私も追いかけたいのだが、年齢による自制がそれを許さない。だから何度もシャッターを押す。しかし難しい。唯一この1枚が球体を捕らえていた。 . . . 本文を読む
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970 南大沢(東京都)ゆっくりと街をつないでモノレール

2021-09-08 04:13:36 | 東京(都下)
モノレールとは、1本(mono)の軌道(rail)に客車を跨がせたり、懸垂状に吊り下げたりして移動させる交通システムである。戦後になって全国で20カ所ほど運行されたようだが、メンテナンスを含めた採算性の難しさなどから廃止された路線が多く、現在も一般共用されているのは10路線程度らしい。わが家に最も近いモノレールは、立川と多摩センターを結ぶ多摩モノレールだ。乗り心地と沿線の風景を確認したくて、乗ってみる。 . . . 本文を読む
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969 調布(東京都)街をカラフルにしてパラ・アート

2021-09-04 09:03:36 | 東京(都下)
調布で「PARA ART 2021」が開催されているというので出かける。福祉作業所など市内16の団体が「誰もがそれぞれに、文化豊かな街づくりに参加する」というコンセプトで作品を持ち寄ったパラアート展だ。会場は多様な色彩と形が賑やかに語り合って愉しい。私の娘が参加団体の一つ「しごと場大好き」に長年通所しているので、知った名前のアーティストにも出会う。その作業所の会報に、求められてこんな一文を寄せたことがある。 . . . 本文を読む
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968 仙川(東京都)文学も音楽もある小さな街

2021-08-31 00:00:00 | 東京(都下)
調布市の東端、世田谷区に隣接して仙川という街がある。調布で暮らしていたころ、幼かった子どもたちと武者小路実篤記念館に来たことが、この辺りのわずかな記憶である。縁はそれくらいしかない、ほとんど知らない街なのだが、今回、三鷹の自宅から自転車を漕いでやって来たのは、最近知己を得た若い陶芸家が、仙川のギャラリーで個展を開くと案内をくれたからだ。実篤記念館は隣の若葉町になるのだが、私の中では一帯が「仙川」である。 . . . 本文を読む
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966 深大寺(東京都)幼な児はなんじゃもんじゃと成長し

2021-08-29 01:00:00 | 東京(都下)
「孫はかわいい」とは誰もが言うが、それは当然であって、子供はみんな可愛いのである。それでもさらに孫が可愛いのは、抱っこできる存在だからかもしれない。ジジは孫がやって来ると、もう触って抱いて頰ずりしたくなる。この感情爆発はどこから来るのだろう。「血の繋がり」などと考えてみても、外見からそんなことはわからない。どこか昔の自分に似ているのではと、面影を追い求めるのかもしれない。だがもうとにかく、可愛いのである。 . . . 本文を読む
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965 富士見(東京都)ふるさとを見つけましたと「双子に年子」

2021-08-28 02:05:22 | 東京(都下)
富士山が見えるエリアに「富士見」という地名はいくつあるだろうか。日本人は富士山が大好きだから、それは数え切れないほどであるに違いない。ここは東京・調布市の富士見町、それも2丁目のことである。甲州街道北側の、電気通信大学が大きなキャンパスを広げる住宅地だ。バス通りに面して新築されたマンションに入居が始まったのは1980年の秋だった。5階建て66戸の中に、三つ子のような子供たちが暮らす賑やかな家があった。 . . . 本文を読む
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964 下連雀(東京都)老いてなお気分は若い阿波踊り

2021-08-27 09:20:07 | 東京(都下)
三鷹の駅前商店街で、生後80日の赤ちゃんを抱く家族に出会ったのは、3年前のこの季節だった。東京西郊の、鄙びた風情を留める商店街が、年に一度の賑わいを見せる三鷹阿波踊りの夜である。祭りはここ2年、新型コロナの蔓延で中止が続いているけれど、小さな赤ちゃんはすくすく育って3歳を越え、弟もできたという。私は久しぶりに写真を眺め、時間が永遠に待っているに違いない小さな命と、残り少なくなった自分の今を考え合わせる。 . . . 本文を読む
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960 小河内(東京都)ニッポンが竣工に沸いて60年

2021-07-23 11:14:02 | 東京(都下)
都民の水甕・小河内ダムに来ている。東京の子供たちは遠足にやって来るのかもしれないが、成人してから都民になった私には初めての訪問である。この機会に「上水道について考えたい」などと殊勝なことを言ってもみたいけれど、猛暑とはいえ奥多摩湖の湖畔に立てば、広大な湖面を渡る風は爽やかで、甘露でさえある。とりあえず何も考えず、木陰に座る。明々後日にはオリンピックが開幕するらしいけれど、世俗の騒動などどうでもよい気分だ。 . . . 本文を読む
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959 奥多摩(東京都)渓谷に張り付き生きる森の街

2021-07-22 10:10:13 | 東京(都下)
最高気温が34度になると予想されているこの日、私は臆することなく奥多摩散歩を決行する。コロナ・パンデミックは衰えを知らず、東京は4度目の緊急事態宣言下にあるけれど、家に閉じ籠もるのは耐えられない不良老人は、「都県境を越えないから構わないだろう」「ワクチン接種は済んでいる」と勝手な理屈をつけ、不要不急の外出へと飛び出してきたのだ。多摩川をひたすら遡ってやって来た奥多摩町は、「東京で一番広いまち」なのだという。 . . . 本文を読む
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