今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

318 飛田給(東京都)・・・武蔵野の土地を給いて空広し

2010-11-25 11:22:22 | 東京(都下)
風変わりな地名である。東京・調布市の郊外にあって駅名にもなっているから、風変わりな割りにはよく知られているけれど、由来ははっきりしない。飛田という地元役人が領主から賜った土地だからとか、古代の福祉施設・悲田院の給田地だったから「ヒダキュウ」が「トビタキュウ」に変化したとか定まらない。ただ「給田」という古い用語にちなんでいることは間違いなかろう。正しくは飛田給田(あるいは悲田給田)ではないか。 . . . 本文を読む
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317 小金井(東京都)・・・こんこんと黄金の水はハケの道

2010-11-24 08:18:19 | 東京(都下)
石組みの井戸から絶えず水が湧き出していることは、池面に広がる小刻みな水紋の動きで分かる。そんな命の水をもたらす井戸に感謝して、昔の人はこれらを《黄金井》と呼んだ。それが「小金井」の地名の由来だと聞いたことがある。東京・小金井市中町にある小さな美術館の裏庭の、「はけ」と呼ばれる薄暗い雑木林の井戸に湧き出す地下水は、池に紅葉を映し揺れ続けている。こうした湧水が、江戸有数の野菜産地を育てたのだろう。 . . . 本文を読む
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316 浅間(東京都)・・・日だまりにミレーとカラス同居して

2010-11-23 10:22:38 | 東京(都下)
東京・府中市の浅間山は、山とは名ばかりの標高80㍍にも満たない小丘で、大昔に多摩川の蛇行によって削られた崖線(はけ)が、あたかも独立した山のように残った街なかの貴重な自然地域である。私は今日、その山にいるのではない。崖線下の台地に広がる都立「府中の森公園」を目指している。その所在地が浅間町1丁目なのである。山にしても森にしても、中心市街地からほど近い距離に、よくこれだけ緑が残ったも . . . 本文を読む
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315 人見(東京都)・・・新田の末裔たちの並木道

2010-11-21 14:22:35 | 東京(都下)
東西に細長い東京都の、地図でいえばそのほぼ中ほどの限られた区間を、やはり東西に延びる道がある。人見街道だ。江戸時代、府中と杉並の大宮八幡を結び、周辺の畑地から江戸へ野菜を運ぶ牛車が往き交った生活道路である。その街道を今も街の主要路としているのが三鷹市で、市役所など行政機能はこの街道沿いに多い。だが昔サイズの街道だから道幅は狭く、歩道を十分に取る余裕はない。ところが最近、立派な並木が出現した。 . . . 本文を読む
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314 青山(東京都)・・・美に疲れ爆発の地でひと休み

2010-11-18 20:12:46 | 東京(区部)
岡本太郎が終生のアトリエとした居宅は東京・南青山にあって、現在は記念館として公開されている。「写真もご自由に」と実にオープンな運営で、本人の等身像が手を広げて迎えてくれる。吹き抜けのアトリエには絵の具が飛び散り、机の筆や画材が生々しい。庭には巨大な芭蕉の葉と競うかのようにオブジェやそのミニチュアが並べられ、賑やかなことこのうえない。没後15年を経ようとして、特異な才能はむしろ存在感を強めている。 . . . 本文を読む
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313 南青山(東京都)・・・芸術は虚飾の街に目隠しし

2010-11-17 14:33:54 | 東京(区部)
瑞々しい竹林を行くような思いになるけれど、ここは大都会のまっただなか、それも東京・南青山というきらびやかな街の中である。高名な建築家の設計になる新装・根津美術館。光琳の国宝や中国・殷の青銅器など、たぐいまれな財宝が待つエントランスへと誘うこの通路は、それら美との出会いへ心を鎮める仕掛けだと解説にある。しかし建築家は竹を密植させることで、街の虚飾が侵入して来ることを断とうとしたのではないか。 そ . . . 本文を読む
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312 駒場(東京都)・・・静けさに蹄の響き遠ざかり

2010-11-16 15:54:51 | 東京(区部)
駒場とは馬に関わる土地のことだから、同じ地名は北海道に多い。ただここでいう《駒場》は東京・目黒区の北端にあって、渋谷区と世田谷区の間に奇妙なほど割り込んでいる地域のことだ。「区界」という言葉があるかどうかは知らないけれど、その不自然な区界からして、そこは人跡よりも駒の足跡が遥かに多く刻まれた広大な疎林であったと推察される。それが時を経て、大学や研究機関、それに裕福な住宅が建ち並ぶお屋敷街になった . . . 本文を読む
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311 豊科(長野県)・・・夕暮れの私の町の美術展

2010-11-09 15:21:44 | 新潟・長野
長野県にはシナの付く地名が多い。蓼科、更級、埴科と挙げて行ったら切りがなく、安曇野も豊科、仁科と例外ではない。「信濃」自体、本来は「科野」と表記した方がふさわしいのかもしれない。ところがこの「シナ」の意味がわからない。シナノキが多く自生していた地だからという説や、シナは「坂」のことで、傾斜地が多い山国だからだという考えもある。「山の信濃は坂の国」などと連想しながら、今は安曇野市になった豊科に向か . . . 本文を読む
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310 穂高(長野県)・・・碌山の手の跡に見る秋の空

2010-11-08 22:36:51 | 新潟・長野
安曇野周遊バスは10月末で運行を終了、この高原の観光シーズンはすでに終わっているらしい。だから穂高温泉郷の小さなペンションは貸し切り状態で、遠く19㌔山奥から引かれているという温泉に心行くまで浸ることができた。その勢いで星座見物に出たのだが、カシオペアを確認しているうちに山の冷気がたちまち身体を震えあがらせる。アカマツの林に黒く縁取られた夜空は地上よりむしろ明るく、何やら哲学的でさ . . . 本文を読む
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309 安曇野(長野県)・・・風渡り雲ちぎれ行く安曇野よ

2010-11-07 17:11:08 | 新潟・長野
文化の日の安曇野は日差しに恵まれ、北アルプスから湧き出して来る白雲もここを翳らすまでの力はない。先日の台風通過で高山は冠雪したといい、有明山の奥では燕岳(2763㍍)が白く輝いている。梓川が犀川と名を替え、穂高、高瀬の両川を飲み込むこのあたりで標高は540㍍ほどだ。この日の予報最高気温は8度ということだが、むしろ心地よい小春日和である。気ままな散歩を続けながら、私は《 . . . 本文を読む
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308 藤野(神奈川県)・・・山道は紅葉とアートのコラボなり

2010-11-05 12:11:12 | 埼玉・神奈川
丘陵を縫う山道に、ブロンズの女性像が佇んでいる。カメラに収めようと構えたとたん、ファインダー内に疾走する自転車が飛び込んできた。急坂だから、そのスピードの速いこと、確認する間もなく視界から消え失せてしまったが、カメラには女性が写っていた。画像は流れているものの、人の気配の薄い山里にあって、とてもおしゃれな出で立ちだとわかる。山道から垣間見えた別荘族のお方であろうか。ここは神奈川県の北端、藤野町で . . . 本文を読む
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