今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

736 松山(愛媛県)俳諧を俳句に育て日が落ちる

2016-11-04 07:00:00 | 愛媛・高知
松山で今回の四国の旅を終える。三連休初日の土曜日、松山の繁華街「大街道」の昼下がりはほどほど賑わい、三越の駐車場入口は空きを待つ車が列を作っている。松山は人口が50万人を超え、四国で一番大きな街だ。しかし7年前に来たときにも感じたのだが、どこかのんびりした田舎っぽさがある。「坊ちゃん」が苛々したのは、悪童のイタズラ以上にこの間延びした街の空気なのだろう。それが松山の最も好ましいところでもありそうだ。 . . . 本文を読む
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735 砥部(愛媛県)ミカン咲く陶街道は綱も引き

2016-11-03 20:26:12 | 愛媛・高知
今回の四国行は当初、松山から始める計画だった。しかし日程の終わりの週末に、砥部で「窯出し市」が開催されると知り、予約を全てキャンセルし、砥部の市に行けるよう組み直した。私の陶芸好きは産地巡りへと広がって、なかなか止まらない。陶芸の里は窯出しで賑わっていたけれど、ひときわ大きな歓声は、丘の上の町営グランドで響いている。体育の日の恒例行事か、街の様々なグループが綱引き対抗戦に全力を挙げているのだ。 . . . 本文を読む
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734 大洲(愛媛県)川風を葉擦れに替えて大ケヤキ

2016-10-30 07:00:00 | 愛媛・高知
大洲の街を意識したきっかけは、中江藤樹である。琵琶湖のほとり安曇川町にこの近江聖人を訪ねた折り、若き日の与右衛門(藤樹)が仕官し、後に脱藩した地であると知ったからだ。脱藩は重罪のはず。しかし与右衛門はその後、郷里で私塾を開き、41年の天寿を全うしている。それを黙認した大洲とはどのような土地なのか、歩いてみたいと思ってきた。肱川のほとりの小盆地。南予地方北部の、松山と宇和島の中間にある街だった。 . . . 本文を読む
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733 宇和島(愛媛県)牛鬼が邪気を払って真珠採り

2016-10-29 07:00:00 | 愛媛・高知
四国の形をおおざっぱに横長の長方形だとすると、私が知っている四国はその上辺と下辺部分に限られる。だから今回はその左辺、つまり西海岸に行ってみたいと考えた。おそらくその中心的な街だと思われる宇和島を目指している。朝、黒潮町を出立してもう昼に近い。愛媛県に入ってからずっと続く下り坂が、ようやく平坦になったところが宇和島市街だった。港まで行くと「道の駅・きさいや広場」があって、大漁旗が翻っている。 . . . 本文を読む
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732 四万十(高知県)清流をただひたすらに遡る

2016-10-28 07:00:00 | 愛媛・高知
四万十川を遡る。四国の川はほとんどが清流らしいけれど、四万十には「清流本家」のような響きがあって、朝靄がたなびく茫漠とした風景さえ何だかありがたい。流れが蛇行するあたり、大きな石原が広がっている様子は紀伊の熊野川を思い出させる。ただ、そこに沈潜橋が架かっていると、やはりここは四万十川なのだと思う。欄干が無く、増水時には流れに沈む橋は、私には歩くことさえ危ういのに、地元の車は平気で渡っていく。 . . . 本文を読む
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731 大方(高知県)この海が襲ってくる日を覚悟して

2016-10-27 07:00:00 | 愛媛・高知
黒潮町の入野海岸である。いい波が来るのだろう、サーファーが日の傾きを惜しんで繰り返し海に向かっていく。7年前にこの海岸で1泊し、とても気持ちがよかった。だから今度の二人旅も、この砂浜に立ち寄ろうと思った。砂浜は静かに広がり、松原は緑の城壁を延ばしている。風景は7年前と何も変わらないけれど、その後に発表された南海地震の被害想定で、ここには最大34.4mの津波が襲って来るとされた。そのことが変わった。 . . . 本文を読む
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730 南国(高知県)貫之の古き館でもの思ふ

2016-10-26 08:47:39 | 愛媛・高知
「貫之の古き館で見上ぐればひつじ雲分けジェット機が往く」。これは古今和歌集の歌ではない。土佐の国司に赴任(930年)した紀貫之が、5年ほどを暮らした館跡で、私が詠んだ1首である。写真左上空の機影にお気づきだろうか。南国市比江の田園地帯。俳句・短歌の投稿箱が備え付けられていて、専用の用紙も置いてある。だから「はい、どうぞ」と妻に急かされ、推敲も程々に口を突いて出た、拙速そのままの歌だと言い訳したい。 . . . 本文を読む
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729 高知(高知県)ハチキンは今夜も飲むさ土佐だもの

2016-10-25 09:59:36 | 愛媛・高知
高知で、地元の方に飲みに誘われたことがある。はりまや橋からアーケード街が続く繁華街だった。中央にテーブルが並び、その周りに様々な酒の肴を売る店があって、各自が好きなものを買って飲む、楽しい酒場だった。今回は奥方を案内したいのだが、場所が判然としない。ホテルで説明し、「まだ在りますか?」と訊ねると、すぐに承知で案内パンフレットまで手渡された。「ひろめ市場」という地元飲兵衛の人気スポットなのだった。 . . . 本文を読む
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277 四万十(高知県)・・・清流は語ることなく悠々と

2010-05-05 17:00:34 | 愛媛・高知
記憶が薄れる前に書いておかなければならない。高知の中村市のことだ。いまは市町村合併で「四万十市」を名乗る街だが、私には「中村」の方が分かりがいい。黒潮町での所用を終えて高知市に戻る際に、少し逆方向に足を延ばして立ち寄ったのである。「柳の葉のような小さな街」だと何かに書かれていた記憶があるが、数時間の寄り道をした旅人にとっては、とても歩き切れたものではない。清流・四万十川は、街の西縁を南下していた . . . 本文を読む
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275 桂浜(高知県)・・・太平洋見据える先はアメリカか

2010-03-29 15:30:51 | 愛媛・高知
空の玄関を「龍馬空港」と自称するほどの、毎日が「龍馬デー」といった具合の高知だが、11月はその誕生日と命日が重なっているということで、さらに特別な「龍馬月間」なのだそうだ。そこでこの間、桂浜の龍馬像には足場が組まれ、龍馬と同じ目線で11月の太平洋が眺められる。私も100円を支払って10メートルほどの高みに登ってみると、同じレベルで見る龍馬の横顔は下から見上げるより厳しく、凛々しいのだった。 小 . . . 本文を読む
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251 黒潮(高知県)・・・黒潮が孵す卵の日の出かな

2010-01-15 20:32:14 | 愛媛・高知
黒潮の彼方から昇る太陽に見惚れていたら、どこから現れたか、お遍路さんが立っていた。「奇麗なものですなぁ」「ほんとに、素晴らしいですねぇ」。同年代と見定めて、互いに気楽な言葉を交わす。ここは四国の入野松原。今日の日の出は午前6時29分。遍路さんは足摺岬の38番・金剛福寺を目指し、夜明けとともに出立だという。88の札所の中で、37と38番の間が最も離れている。ややくたびれた遍路装束が、残月の懸かる西 . . . 本文を読む
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221 今治(愛媛県)・・・美しき眺めと城の海事都市

2009-06-11 17:32:52 | 愛媛・高知
この地に封じられた藤堂高虎が「今から治める」と宣したから「今治」の名が興ったと、駄洒落のような由来が伝わる地名ではあるが、Imabariという音の響きは悪くない。瀬戸内の水門であるかのように連なる「しまなみ」に面し、水軍とも海賊とも区別できない豪の者たちが、渦巻く海流に小舟を操り、跳梁した記憶が今も「造船の街」「船主の街」として刻まれ続けている。ここはまた重と軽の工業が仲良く同居する「タオルの街 . . . 本文を読む
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220 大三島(愛媛県)・・・きらきらと武門の誉れ総鎮守

2009-06-11 07:58:00 | 愛媛・高知
瀬戸内の島に、甲冑武具の時代史を語るに欠かすことのできない神社があることは知っていた。その神社の名が大山祇(おおやまずみ)というのであったことは、耳にすると「ああ、そんな名前だった」と思い当たる程度には記憶していた。しかしその所在の島が大三島ということや、今やその島へ、しまなみ海道を通って車で行くことができるとは知らなかった。しかも実際にそうやって訪ねることになるとは、思いもよらぬことだった。 . . . 本文を読む
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219 道後(愛媛県)・・・神の湯で足を伸ばせば眠くなり

2009-05-31 13:28:41 | 愛媛・高知
松山に行くにあたって、案内を買って出てくれたW君に「道後温泉にたっぷり浸かりたいものだ」と、当然そうなるだろうと考えて連絡した。とたんに「あんな所は詰まらん」と却下されてしまった。これでは日本最古(本当かな?)の温泉に入りそびれてしまうかもしれないと慌て、松山に着くや、待ち合わせの前に急ぎ出かけることにした。太宰府に向かう万葉人さえわざわざ寄り道した温泉だ、一度くらいは入っておくことが、地主神へ . . . 本文を読む
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218 松山(愛媛県)・・・ゆるゆるとおくれんかなもし松山は

2009-05-30 00:05:09 | 愛媛・高知
すでに還暦を過ぎたというのに、足を踏み入れたことのない土地が二つもある。47の都道府県で愛媛県と香川県だ。なぜ未だ行く機会がないのかと腹を立てていたところ、松山に行くことになった。かねて関心の街である、張り切らないはずがない。《坊ちゃん》なら「馬鹿にしていらあ」と啖呵を切るであろうほどあっけなく、飛行機は瀬戸内の島々をグーンと回り込んで着陸した。夜には学生時代のゼミ仲間と飲むことになっている。 . . . 本文を読む
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