今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

633 向島(東京都)墨堤で粋と野暮とがすれ違い

2015-03-27 08:00:54 | 東京(区部)
東京に開花宣言が出されて2日、隅田川を挟んで延びる隅田公園のソメイヨシノは、前夜来の寒の戻りで蕾を閉じてしまったようだ。しかし呑兵衛たちは我慢できないのだろう、墨田区側の旧水戸藩下屋敷庭園では、日本酒パックを真ん中に据えたオヤジたちが宴開始である。一方、晴れ晴れとスカイツリーを望む桜堤でも、2日後に迫った桜祭りの準備が進む。江戸の名残りの常夜灯周辺は、夜桜見物用のボンボリ設置にてんてこ舞いだ。 . . . 本文を読む
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632 松濤(東京都)何だろう絵とは街とは闇の中

2015-03-19 14:10:12 | 東京(区部)
人間はなぜ《絵》を描きたがるのだろう。その疑問が、不惑をとっくに過ぎた私をなお惑わせ続けている。絵は《創作》活動全般と言い換えてよい。人間には、人間だけが突き動かされる、創作に対する情念のようなモノが潜んでいるに違いない。それは何なのか、そのヒントが見つかりそうな予感がして、松濤に出かける。渋谷区立の松濤美術館で、ロベール・クートラスの展覧会が開かれているのだ。さて、長年の謎は解消されるだろうか。 . . . 本文を読む
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631 宮古(岩手県)開港し400年の夢の跡

2015-03-18 17:08:35 | 岩手・宮城
宮古とはどんな街だろう。40年も昔のことになるが、盛岡に出張した折り、宮古に駐在する先輩がたくさんの海の幸を担いでやって来てくれて、「地方は面白いぞ」と気炎を吐いた。それ以来、宮古は関心のある街になったのだが、訪れる機会がないまま津波被害を耳にすることになった。今度の北三陸の旅の終着として、宮古の駅に降りた。盛岡行きの列車まで3時間ある。案内所で市街地図を入手し、中心商店街らしき通りに向かった。 . . . 本文を読む
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630 田老(岩手県)何度目の津波だろうか生き抜いて

2015-03-18 13:53:48 | 岩手・宮城
三陸鉄道の田老駅は、入り江を囲む街の後背地にある。高台だから津波もここまでは達しなかったというが、ホームから東の街並みはすべて波にさらわれ、海まで遮るものはなくなった。その海に向かって、幼児がしきりに「じいじいー」と呼びかけている。あたかも海で被災した祖父を偲んでいるかのような光景だが、聞けばそうではなく、里帰りした母子を迎えに来るジィジィが、大漁なのだろうか、海からの戻りが遅れているのだという。 . . . 本文を読む
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629 久慈(岩手県)はるばると琥珀の軽さ確かめに

2015-03-18 11:08:19 | 岩手・宮城
「三陸海岸」が始まる八戸から、ローカル線を乗り降りしながら南へ、海と松林とトンネルと、そしてたまに現れる小さな集落を通り過ぎながらやって来た久慈は、ずいぶん大きな街のように見えた。私の眼が都市に飢えていたのだろう、街を歩いて間もなく「そうではない」ことに気づかされた。街の疲弊は隠しようもなく、地震の傷も未だ重苦しく漂っているようである。しかしそんななかでも、とびっきりの笑顔に出会える私は幸せだ。 . . . 本文を読む
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628 種差(青森県)芝原で潮騒を聞く夢を見る

2015-03-17 19:01:50 | 青森・秋田
確かに、眼前のクサハラが鮮やかな緑となって足に土の感触を伝え、その先できらめく海に溶け込んで行っているとしたら・・・そして世界すべてが蒼穹の輝きに包まれ、聞こえて来るのは潮騒と松風だけだとしたら・・・私は「世はすべて事もなし」と呟いて眼をつむるだろう。訪れるのが三ヶ月も遅ければ、私はそうやって岩に座り、大きな深呼吸をしているところだ。三陸海岸の北辺、青森県八戸の種差海岸。まだ草原は枯れている。 . . . 本文を読む
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627 八戸湊(青森県)始まりはイサバの朝飯三陸路

2015-03-17 10:29:49 | 青森・秋田
こうしたおばさんが「イサバのカッチャ」なのだろうか。早朝、JR八戸線の陸奥湊駅で降りると、イカを手にしたおばさんの石像が大笑している。その前掛けにそう書いてあるのだが、なるほど駅前通りがそのまま朝市になっていて、着ぶくれたカッチャたちが冬陽を浴びてカッカと談笑している。八戸漁港に近い湊地区.。街の奥へと歩いてみると、巨大な磐座を祀る古い社もある。ひょっとするとここは、八戸発祥の地なのではないか。 . . . 本文を読む
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626 十和田(青森県)ちょんまげとアートと馬が同居する

2015-03-16 16:03:12 | 青森・秋田
不思議な街を歩いた。青森県十和田市である。鉄道も廃線となった辺鄙な内陸部にあって、乏しい本数のバスに揺られてようやく中心部にたどり着くと、整然と区画された街路が延び、広い舗道に松と桜の古木が見事な並木を創っているではないか。一方、山中にしては合点の行かぬ淀んだ水路が、川というには不自然なほどの直線で街を区切っている。私は面白い美術館があると聞いてやってきたのだが、街自体が十分に面白そうである。 . . . 本文を読む
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625 二戸(岩手県)雪原で地球の磁場を考える

2015-03-14 13:18:45 | 岩手・宮城
「ここからご覧ください」と書かれた足のマークに立って窓外を眺めると、等間隔に並んでいるだけだった白い柱列がぴたりと繋がり、穏やかな老人の顔が浮かび上がった。ここは岩手県北部の二戸市。春の雪が残る広場で微笑む老人は明治の物理学者・田中館愛橘博士だ。そしてこの騙し絵的像の作者は、数々のデザインで知られる福田繁雄氏。いずれもこの北辺の街に生まれ、世界で活躍した方だ。私はその記念館を独り占めしている。 . . . 本文を読む
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