映画『男はつらいよ』で寅さんは、決まって「ワタクシ生まれも育ちもカツシカシバマタです」と仁義を切る。この「シバマタ」の響きが実にいい。仮にその舞台を「柴又」ではない他の土地に求めたとすると、車寅次郎のキャラクターは途端に曖昧になってしまう。それほどあの映画は街に馴染んでいて、七五三で賑わう帝釈天の人出もその記憶が大いにあずかっているのだろう。そんななかに中学同級のジジババ5人組が溶け込んでいる。 . . . 本文を読む
30年ぶりに「シモキタ」で降りた。下北半島ではない、東京・世田谷の住宅過密地にあって、小田急線と京王井の頭線がアクロバット的に交錯する狭苦しい街・下北沢のことだ。新宿・渋谷の巨大ターミナルにほど近いごちゃごちゃ感がいいのだろう、「シモキタ」は若者らに独特のブランド力を維持しているようだ。この街が都市計画で揺れていると聞いて久しいが、なるほど駅周辺で再開発が進みはじめている。街は変わるのかもしれない。 . . . 本文を読む
人それぞれであるにしても、例えば「代々木」で何を思い浮かべるかでその人の人生が浮かび上がるかもしれない。「畏くも明治神宮」とか「練兵場」などとおっしゃる方は別格として、「国立競技場」「公園」「予備校」と様々であろう。なかには「オリンピック村」や「共産党本部」を連想する向きもあるだろう。つかめそうでいて曖昧な、新宿に近い渋谷区の街が代々木である。さしずめ最近の私なら「高速バス乗り場」と答えてしまいそうだ。 . . . 本文を読む