2002年7月、米国中西部ウィスコンシン州最大の都市・ミルウォーキーは、MLBオールスター・ゲームに湧いていた。ダウンタウンはALLSTAR WEEKのイベントでお祭り騒ぎ。そして試合当日の9日、市南郊のミラー・パークは満員の盛況である。国歌斉唱が終わって球場の日本製ドームが開き切った瞬間、上空を2機の戦闘機が通過して行った。轟音がこだまするグランドには大リーグ2年目のイチローがおり、スタンドに . . . 本文を読む
上州は、狸の産地なのだそうだ。佐藤垢石というご仁がそう書いている。「私の故郷の村は、利根川の崖の上にある。その崖に続いた雑木林の中には、私の幼いときまで随分狸が棲んでいた」と。何でも浅間噴火の土石流が流れ下った河原が楢や椚の雑木林となり、ドングリを落とす。それが狸の大好物だというのだ。上州の野山を思い出すと、これはなかなか説得力を持つ話だ。榛名山麓・箕輪城跡などは、いまもタヌ公に出会いそうである . . . 本文を読む
都心で最も静かな場所、つまり道路や鉄路に遠く、騒音に患わされない地点は、明治神宮御苑の菖蒲田あたりだと聞いたことがある。それだけ広大な苑地の奥深く、ということだろう。たまたま通りかかったのが菖蒲の季節。どれほど静かなのだろうかと入園してみた。ところが菖蒲園は花を愛でる人たちで大盛況。車や電車ではなく、人間の騒音に満ちていた。思えばこの人口過密都市で、静寂を求めるなどどだい無謀なことであった。
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松阪を歩くのはこれで3度目になる。しかしこれまでは本居宣長記念館に直行し、その展示を眺めて旧居「鈴屋」に立ち寄り、次の目的地に向かうという慌ただしさだった。今回も「鈴屋」までは同じことだったが、そのあと城跡をゆっくり見物し、市中も歩いてみる余裕があった。伊勢と関西をつなぐ交通の要衝にあり、城下町でありながら豪商が生まれる気風が宣長の学問にも関係していたように感じられた。暑い一日だった。
松阪を . . . 本文を読む
関東の北域、現在の群馬県と栃木県一帯は毛野(けぬ)と呼ばれ、巨大な前方後円墳が築かれた東国の一大勢力圏であった。やがて上毛野(かみつけぬ)から上野へと地域支配の形が整えられ、現在の群馬県に至る。その県域のほぼ中央に、最近まで群馬郡群馬町という町があった。今は合併して高崎市の一部になっているけれど、《群馬》がこれほど重なるのだから群馬の中心地と考えて間違いない。だから国分僧・尼寺が造営されたのであ . . . 本文を読む
善通寺の誕生院をひと巡りして東院に戻り、お遍路さんの集団に巻き込まれて金堂にお参りし、五重塔を見上げて南大門を出ようとすると、学校帰りの小学生4人に出会った。黄色の帽子に赤いランドセルの、小学4、5年生とみた。ああ、お大師さんもこのころは、こんな具合にあたりを駆け回っていたのだろうと微笑ましく眺めた。1235年前にこの地に生まれた佐伯真魚は、後に弘法大師空海という日本史の巨人になったのである。
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