IMARIはある時期、日本の街の名としては世界に最も流布した土地ではないだろうか。17世紀以降、有田で焼かれた陶磁器は、伊万里の津から長崎・出島を経てヨーロッパに運ばれ、Imari wareとして彼の地の富者たちを魅了した。それらは今も特別な敬意を込めて「古伊万里」と呼ばれる。私は今日、その伊万里にいる。師走の街は閑散として、かつての燦然とした街の記憶は、橋の欄干で酔っぱらう阿蘭陀人の姿に偲ぶし . . . 本文を読む
かつての肥前国は、現在の佐賀・長崎両県のほぼ全域にあたる入り組んだ地形を持ち、まとまった平地といえば有明海に臨む佐賀平野がわずかに広がる程度の、山々の重なる土地柄である。そこは九州本島部から西に突き出した半島のようなもので、幕藩下では鍋島、唐津、平戸、大村などの各藩によって分割統治されていた。日本の磁器生産は、そうした山あいから始まった。とまあ、こんな貧弱な知識を頼りに陶芸三昧の旅を始めた。
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