いくら暖冬だとはいえ、まだ２月。しかし井の頭公園の早咲き桜広場はとうに花盛りで、すっかり春めいている。この風情に幼子も心が弾むのだろう、女の子が花の下で思いっ切りジャンプした。花粉症の私には嬉しくない季節なのだが、この時期の散歩はやはり花に惹き寄せられる。さすがにジャンプはしないけれど、ベンチに座ってゆっくり眺めを楽しむ。そして「今月は忙しかった」と振り返る。なるほどこれが老年の日常というものか。 . . . 本文を読む
靖国通りをバスに揺られていたら「ゴジラを見た」ような気がした。ちょうど歌舞伎町あたりだ。こりゃ大変だ、と驚いて周囲を見回すと、昼下がりの歓楽街はけだるさが広がり、街行く人に慌てる様子はない。あれは一体何だったのかと、今日は確認するためにやってきた。こんな酔狂を実行できるのが年寄りのいいところで、妻が「もっと運動して！」とゴジラのように睨むものだから、ウォーキング先を歌舞伎町へと拡大したのだ。
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全体像がはっきりしない街、というものがあるようで、私にとって「本所」がその一例である。それは墨田区の町名の一つだとは承知しているけれど、しかし「町というより、もっと大きな地域なのではないか」という思いが、どうにも払拭できないでいる。そこで墨田区のホームページを開いてみると、東京府に区制が敷かれた明治11年以来、長らく「本所区」があったのだと知る。向島区と合体して墨田区になったのは戦後のことだ。 . . . 本文を読む
ブダペストへ向かう高速鉄道（あまり高速ではなかったけれど）で、退屈な車窓を眺めながら「帰ったら『悪童日記』読み返そう」と考えた。オーストリアからハンガリーへと国境を越えたあたりの街が、この奇妙で無類に面白い小説の作者、アゴタ・クリストフの出身地であることを思い出したからだ。第２次世界大戦をこの地で生きた少女は、21歳になった1956年、ハンガリー動乱を機に祖国を脱出、亡命先のスイスで書き始める。
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