秋になると「キク」が食べたくなる。それも、越後・蒲原で《かきのもと》と呼ぶ食用菊でなければいけない。赤紫の細い花弁がぎっしり詰まった、ゴルフボールを半分に割ったほどの大きさの菊の花で、花として美しいとは言い難いのだけれど、おひたしにするとピンク色も鮮やかに、歯触りが澄んだ秋の空のように小気味よい。あくまでも控えめな香りと苦みは、山形あたりで産する《もってのほか》より上品で、はるかに美味なのである . . . 本文を読む
地下鉄の車内が猛烈にうるさいこと、高級時計と貴金属を売る店がやたらに多いこと、小姑娘が傍若無人であること・・・香港で驚かされたことはたくさんあったけれど、以上の3点は特に印象が強かった。郷に入ったら郷に従うべきであろうし、われわれの日常にも、外国人の目には不思議に映る光景がたくさんあるはずだから、いちいち驚いていても始まらない。そうした街の異相を楽しむこと、それが「旅」というものなのだろう。
. . . 本文を読む