年明けの人形町を歩いている。年末年始を東京のホテルで過ごした新潟の友人が、帰る前に付き合えというので案内したのだ。彼は「しかし天気が違うなぁ」と呟き、眩しそうに冬晴れの空を見上げる。新潟ではめったに見られない日差しが、東京では当たり前のように降り注いで空気を乾燥させている。だから「唇がカサカサして痛い」という。私も東京に出てきた50年前はそうだった。たまに空が曇った日は、気持ちが落ち着いたものだ。
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「1枚の写真に触発されて旅に出ることは、珍しいことではない」(立花隆『エーゲ・永遠回帰の海』)とは私も同意見だが、さらに「1枚のポスターが、その土地で営々と続けられてきた暮らしを知るきっかけになることがある」とも付け加えたい。加賀平野の旅の終わりに、JR北陸本線の小松駅で降りた時のことだ、「日本遺産認定」と大書されたポスターが眼に飛び込んできた。「珠玉と歩む」とある。はて? 無知な私は首をひねった。
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