今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

563 アローナ【Arona=イタリア】

2014-01-23 20:50:25 | 海外
ロンバルディア平原の北は、イタリアとスイス・オーストリア国境のアルプスへと続いて行く。その山塊が始まるあたりは、大小の湖が点在する湖沼地帯になる。そのひとつ、マッジョーレ湖のほとりにアローナという美しい街がある。ミラノ・マルペンサ空港から昼過ぎの直行便で帰国する私たちは、イタリア最後の日の午前中をアローナ散歩で過ごした。前日までの風雨が去って、目映いばかりの蒼空が私たちを迎え、見送ってくれた。 . . . 本文を読む
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562 パヴィア【Pavia=イタリア】

2014-01-23 08:54:12 | 海外
パヴィアの街から車で移動している間しつこく降り続いていた雨が、僧院に着くころにはようやくあがって、冷たく湿った空気が心地よく肌を刺す。何の木だろうか、ずいぶん高い梢が長い並木を作り、私には初めてとなるカトリックの修行の場へと導いてくれる。すでに夕暮れが近く、暮れなずむ空を背に白い聖堂が浮かんでいる。田園の中の広い森に包まれた院内に、響いているのは私たちの足音だけである。静寂に圧倒されそうである。 . . . 本文を読む
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561 トリノ【Torino=イタリア】

2014-01-22 14:26:17 | 海外
昨年のクリスマスはアムステルダムにいて、その前の年はフィレンツェを歩いていた。これは偶然ではなく、まとまった休暇がこの時期にしか取れず、いろいろな計画を練っても「せっかくだからヨーロッパに行こう」となるからである。かくて今年はミラノでその日を迎え、「どうせ街の活動が止まるのだから、トリノを見物して来よう」となったのである。敬虔なカトリックの国とはいえ、鉄道だけはいつも通りに運行しているのだ。 . . . 本文を読む
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560 ミラノ②【Milano=イタリア】

2014-01-22 10:38:40 | 海外
「そこの若いお方、どこからお出でかな」「Giappone!」「おお、あのヴェネツィア商人の息子が書いた黄金の国じゃな」「マルコ・ポーロのことですね。本当はそれほど黄金は多くないのです」「遠くからよくぞお越しを。してミラノには何をしに」「あなたの絵を観に来たのです」「あの《晩餐図》じゃな。ゆっくり見て行きなされ」「ありがとうございます」「お若い方と呼んでしまったが、どうやら私と同世代のようじゃ」 . . . 本文を読む
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559 ミラノ①【Milano=イタリア】

2014-01-21 17:41:48 | 海外
石畳は濡れていなければならないし、そこにはレールが埋め込まれ、電車が行き来していることが望ましい。そして人々は寒そうに背を丸め、足早に通り過ぎて行く。私は「いつかミラノに行く」と決めていたのだが、そのときの街の佇まいはこのようでなければならないとも確認していた。思いはいつか通じるものらしい。半世紀を経て私はミラノにやって来た。そして気がつけば、眼前の街は思い描いていた光景そのものではないか。 . . . 本文を読む
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558 ピサ【Pisa=イタリア】

2014-01-21 13:08:40 | 海外
ピサで名高いのは斜塔だけれど、ドゥオーモを訪ねた私はむしろ洗礼堂の美しさに釘付けになった。周囲の装飾を取り除けば実に単純な形状の建造物なのだが、その単純さが尋常でない。円形の基壇に対する高さの比率が、えも言われぬバランスなのだ。黄金比なのだろうが、それだけでは語り尽くせないほどの、天蓋に向かって収斂して行くドームの安定感と静かなリズム。陶芸に手を染めている私は、この姿を土に写し取りたいと思った。 . . . 本文を読む
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557 ファエンツァ【Faenza=イタリア】

2014-01-21 10:03:54 | 海外
イタリアに行くと言うと、誰もが「いいね」と軽く返事して驚かない。人気の旅行先だからそんなものだろう。だが「ファエンツァに行くんだ」と言うと、今度は「それはどこだ?」とようやく耳を傾けてくる。私は少し自慢げに「陶芸の街なんだ」とつぶやく。案内書にすら載っていない地方の街を知る人は少ない。私もその地の陶芸家、トラモンティの展覧会を観るまで、イタリアに有田や瀬戸のような陶磁産地があることは知らなかった。 . . . 本文を読む
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556 フィレンツェ【Firenze=イタリア】

2014-01-20 08:13:49 | 海外
ミケランジェロのダビデ像を見上げて、これこそ「人類の至宝」だと悟った。フィレンツェのアカデミア美術館。私はひたすら圧倒されて、台座の周りを何度も回った。するとダビデの右足前方から見上げるアングルが、最も整っていることに気づいた。この像は異様に頭部が大きく、正面から見ると余りバランスがよくない。天才にはきちんと意図があったはずだがそれは何か、長年の疑問の答えは「右足前方から見上げる」ことだった。 . . . 本文を読む
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555 ムラーノ【Murano=イタリア】

2014-01-19 16:19:19 | 海外
ほの暗い聖堂内に入る度に、高みから光をもたらすステンドグラスの美しさに見惚れるのが常だ。外部を遮断しながら同時に光を透過させるのは、ガラスが持つ優れた特性である。そこまでは理解しながら、私はガラス工芸がよくわからないでいる。ガラスによって造形された壷や皿やオブジェを前にして、陶磁器によるそれらから受ける感動を味わうことがないのだ。だからヴェネツィアに来たからには、ムラーノに渡らなければならない。 . . . 本文を読む
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554 ヴェネツィア②【Venezia=イタリア】

2014-01-19 11:46:25 | 海外
運河に架かるリアルト橋とゴンドラ・・・。「これがヴェネツィアだ!」と大声で自己主張しているような写真である。紀行文に小説に映画に、語られ、書かれ、描かれ尽くされた観のあるこの街を、今なお世界中から眺めにやって来る人の波が絶えないのはなぜだろう。かくいう私もその一人のわけだが、世にも奇妙な街の構造と、その「土地」の上に集積した絢爛たる文化に惹かれ、一度は実際に歩いて確かめたいと思うからなのだろう。 . . . 本文を読む
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553 ヴェネツィア①【Venezia=イタリア】

2014-01-10 08:41:16 | 海外
朝の光が海面に、サン・ジョルジュ・マッジョーレ教会の塔をくっきりと映し出している。それはまるで、この街にもたらされた世界の富の、やって来た方角を示しているかのようである。日本から1万キロを飛んでヴェネツィアに着いた私たちは、本島のサン・マルコ広場に建つ大鐘楼の上で、アドリア海から昇る陽を浴びている。望楼を吹き抜ける風は冷たいけれど、クリスマス直前の朝にしては割りと凌ぎよい日なのかもしれない。 . . . 本文を読む
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