今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

1126 稚内②(北海道)国境と風を資源に生きる街

2023-09-30 19:08:28 | 北海道
私が覚えた街の名で、「稚内」は最も早い一つではなかったか。小さな手で兄の地図帳を繰り、日本で一番北にある街を探して覚えたのだった。以来70年、何度も訪ねようとしたが叶わない。古希を迎えた幼なじみ三人組で、北海道(ほぼ)1周旅行を企画し、稚内のホテルも予約したのに、胆振地方を巨大地震が襲い、旅を自粛したこともあった。しかしすでに喜寿。最後の機会だと妻を誘ってやって来た。丘から街を見晴らし、私なりの感慨に耽る。 . . . 本文を読む
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1125 稚内①(北海道)最北の街を見晴らす氷雪の門

2023-09-30 18:52:39 | 北海道
海があるから内陸部ほど気温は下がらないものの、11月から4月いっぱいは非常に寒く、なかでも12月から3月は「最高気温が氷点下を越えるのは数日だけ」と極寒の日々が続く。夏の2ヶ月を除けば「風の街」で、冬場は25メートル超の暴風で外出が危険なほどになる。春は遅く桜の開花は5月半ば。短い夏は快適だが霧雨に烟り、秋には雷が多発するーー。以上は稚内地方気象台の「宗谷の四季」に描かれる最北の街・稚内の一年である。 . . . 本文を読む
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1124 サロベツ(北海道)湿原に花と小鳥と泥炭層

2023-09-19 10:07:21 | 北海道
サロベツ原野を少しだけ歩いてみる。環境省が「釧路湿原や尾瀬ヶ原とともに残る代表的な湿原だ」と強調する「利尻礼文サロベツ国立公園」の一角である。花の季節はほぼ終わり、木道を行きながらひたすら枯れ草を眺める。茫漠とした野の向こうに、遠く利尻山が裾を広げているのが僅かなアクセントだ。かつてアイヌの人たちが川で魚を獲り、内地からの入植者が酪農を夢見て土地を広げてきた遥か以前から、泥炭化する植物が積もる大地だ。 . . . 本文を読む
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1123 利尻(北海道)どこまでも美しく聳え利尻山

2023-09-16 16:17:56 | 北海道
海上からも空の上からも、そして上陸して近くから眺めても飽きることがない。北海道最北の日本海に浮かぶ利尻山である。海の上に、整った形の円錐をそっと置いたような姿だ。鹿児島の開聞岳とよく似ているけれど、標高が倍近い利尻(1720m)は迫力が違う。山がすなわち利尻島で、ほぼ全域が利尻礼文サロベツ国立公園に含まれる。その雄大な山容は約30キロ離れたサロベツ原野からも望まれる。自然の造形力の何と偉大であることか。 . . . 本文を読む
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1122 礼文(北海道)北限は花の浮島礼文島

2023-09-15 10:18:33 | 北海道
稚内から2時間ほどフェリーに揺られ、西方60キロに浮かぶ礼文島に渡る。日本海最北の離島である。島は南北に細長く、面積は伊豆の大島より小さいけれど八丈島より大きいから、人の暮らしは十分に成り立つ広さだ。ただ気象条件が極めて厳しく、稲作や畑作はもちろん酪農も不可能で、海産物以外の食糧は全て本土から運ばれている。全島が礼文町で、1955年には9800人を超えた人口は、直近では1244世帯2305人になっている。 . . . 本文を読む
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1121 宗谷岬(北海道)最果ては生きる労苦も果てしなく

2023-09-13 13:57:37 | 北海道
宗谷岬にやって来た。つまり列島の北端に来たことになる。穏やかに晴れ渡っているせいだろうか、海辺の小さな広場は「最北の岬」から連想される厳しさや寂しさを感じさせない。だが目を凝らすと、微かにサハリンの稜線が望まれ、国境の宗谷海峡を強く意識させられる地ではある。北極星にちなむ碑で、観光客がおどけたポーズで写真を撮り合っている。少し離れて立つ間宮林蔵と私は、彼女らは何をはしゃいでいるのだろうと訝むばかりである。 . . . 本文を読む
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1120 上高地(長野県)夏雲や神を仰いで上高地

2023-09-04 06:23:46 | 新潟・長野
岳沢と呼ぶらしい、氷河が削ったような巨大なV字状渓谷を、遠く前穂高と奥穂高が見下ろしている。振り向けば焼岳の孤峯が、ケショウヤナギに縁取られている。尾瀬と上高地は山の景勝地の双璧だろうか。いやいや山に疎い私が知らないだけで、自然が生み出す美しい景観はもっとたくさんあるに違いない。ただ上高地がその一つであることに異論は出ないだろう。河童橋の畔で、梓川と山塊の大パノラマに眼を奪われている私がその証人である。 . . . 本文を読む
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1119 黒部(富山県)放水が黒部渓谷に虹を懸け

2023-09-03 07:58:43 | 富山・石川・福井
室堂平から、立山山頂直下に掘られた3.7キロのトンネルをトローリーバスで抜けると、大観峰という名の標高2316メートル地点に着く。確かに眺めは「大観」で、緑の壁の底に黒部湖が、深い翠色を湛えて横たわっている。前日、宇奈月からのトロッコ電車で途中まで遡った黒部川の、最上流ダム湖を見下ろしているのだ。黒部の渓谷は立山連峰と後立山連峰を裂いて南北に延び、私たちは後立山の赤沢岳や爺ヶ岳に対面していることになる。 . . . 本文を読む
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1118 室堂(富山県)雷鳥を見たのだろうと言い聞かせ

2023-09-02 02:09:50 | 富山・石川・福井
そろそろ黒部ダムに向かう時刻だなと、室堂のベンチから腰を上げたその時、頭上を鳥が飛んで行った。鳩より少し大きいほどの、ずんぐり太めの体型に見えた。腹の辺りは白いけれど、首から背にかけては黒っぽい。続いてもう一羽が、華麗とは言い難い羽搏きで追いかけ、草原を渡って行く。ひょっとして私は、雷鳥に出逢ったのではないか。雷鳥は「飛ぶべき時は翔ぶ」そうだから、あれは特別天然記念物の二羽に違いないと、興奮して妻に伝える。 . . . 本文を読む
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1117 立山(富山県)神々が宿るか立山霧晴れて

2023-09-01 02:16:43 | 富山・石川・福井
私は「街」を訪ね歩くことが好きだが、だからと言って「自然」に興味がないというわけではない。海や山の美しく雄大な景観には心惹かれるし、何よりも澄んだ空気を胸いっぱい吸い込むと、この惑星が愛おしくなる。ただ「山」は登らねばならないから困るのである。登り坂が苦手なのだ。だから山への旅は少なくなるのだけれど、今回は珍しく、その代表格として立山にやって来た。標高2450メートルの室堂平で、超高峰の威容を眺めている。 . . . 本文を読む
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