今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

890 中之島(大阪府)大阪の街は綺麗になったけど

2019-11-29 16:41:54 | 大阪・兵庫
久しぶりに中之島界隈を歩いて、大阪は綺麗になったと驚いた。1年間ほど単身赴任したのは30年も昔になるのだから、そのころと比べて街が変貌するのは当然だろうけれど、あのころの大阪は緑が実に少ない街だった。だから夏は耐え難い暑さで、水の都という呼称が恨めしく思われたものだ。当時も中之島あたりは、大阪としては整備が行き届いた地域と感じていたものの、緑と高層ビルが増え、様相は様変わりだ。



中之島となれば、私がまず目指すのは東洋陶磁美術館である。日・中・朝鮮の陶磁の名品は、何度観ても見飽きることがない。安宅産業の破綻によって流転したコレクションが、大阪市に寄贈されたことで生まれた美術館だ。企業破綻を喜ぶものではないけれど、おかげで私もこうやって心ゆくまで鑑賞できるのはありがたいことで、大阪に所用ができた折は、駆け足でもこの美術館にだけは立ち寄ることを楽しみにしてきた。



そのうえ今回は「フィンランド陶芸」の特別展も開催中だ。昨年の夏、目黒区美術館で観た展覧会が巡回してきているのだ。もう一度ルート・ブリュックの青い陶版に会えると思うと、ワクワクドキドキである。目黒では撮影厳禁だった展示が、こちらは特別展も常設展も「どうぞご自由に」だ。美術展における写真撮影はFreeがずいぶん増えてきた。鑑賞者の迷惑にならない範囲で、自由に写せるのがもはや潮流であろう。



今回はもう1館、中之島に新設された国立国際美術館に行く楽しみもある。昨年同館に収蔵されたジャコメッティの「ヤナイハラⅠ」を観たいからだ。このところコペンハーゲンでもバンクーバーでも、ジャコメッティに出会ってばかりいるのだが、矢内原伊作像はどうしても観たいと願ってきたものだから、じっくり鑑賞する。巨大な地下空間で開催中の美術展はいずれも賑わっていて、大阪人の美術好きが伝わってくる。



国立国際美術館から堂島川を渡り、福島浜緑道に並ぶオブジェを楽しみながら大阪駅まで歩く。途中、関西電力本社前では高層ビルに建て替わっていることに驚いて見上げる。エントランスは静まり返っていたものの、後で知るにはこの日、役員らが長年にわたって高浜原発の地元業者から高額な金品を贈られていたことが発覚、夕刻に記者会見を開くということで、ビルは外観とは裏腹に、内部は大混乱だったようだ。



街に緑が増え、オフィス街は鉄とガラスの高層ビルに変わった。外から見る限り、街は綺麗になったけれど、関西電力のようにその内情は腐臭が漂っているのかもしれない。贈られた高級仕立券でタダで仕立てたスーツを着て、一流ビジネスマン面をしている連中のなんと浅ましいことか。そのワイロが電力料金から来ていることに思い至りもせずに、贈り贈られ便宜を図るというこの国のワイロ文化は一向に衰えていない。



大阪へは松江から特急「やくも」を利用、伯備線を経由して中国山地を縦断、岡山から新幹線に乗った。高梁川添いに新見、高梁、総社など、訪れたことがない街をいくつも通過する。この歳になっても、知らない街はたくさん残っているものだと改めて思う。若いころはこうした際は「いつか来るさ」と当然のように思ったものだ。しかしこの歳になると「もう機会はなさそうだ」と噛み締めるしかない。(2019.9.25-27)







































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