山に籠る時間が長くなると、無性に海が見たくなる。逆に海の開放感に浸っていると、今度は山に分け入り、内向きの気分を味わってみたくなる。これは私が常々感じている自身の性癖なのだが、坂口安吾も「夏が来て、あのうらうらと浮く綿のやうな雲を見ると、山岳へ浸らずにはゐられない」と書いている。「都会に足を留めねばならぬとき、彼は一種神経的な激しい枯渇を感じて、五感に奇妙な乾きを覚え、不眠症に犯されてしまふ」というのだ。 . . . 本文を読む
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