今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

891 北軽井沢(群馬県)浅間山別荘ライフを見下ろして

2019-12-01 08:52:55 | 群馬・栃木
ここは標高1300メートルの浅間ハイランドパーク。浅間山(2568m)の北面に広がる北軽井沢リゾート地域の、最も標高が高いあたりだ。今日は秋恒例のクラフトフェアが開かれ、澄んだ光が集う人々と芝を照らしている。森の向こうに頭をのぞかせる浅間山は、近づく冬を前に日向ぼっこだろうか、山塊を陽に曝し、長閑な噴煙をうっすらたなびかせている。フェアに集う別荘族は、行く秋を笑顔で送っている。



北軽井沢は長野原町の地名だが、別荘・リゾート地としてのエリアは嬬恋村にも拡大している。軽井沢とは異なり、江戸期までは街道から遠く離れた不毛の高原だったのだろうが、明治になって軍馬を育てる牧場が拓かれ、開墾が始まる。大正期には軽井沢から草津温泉へ湯治客を運ぶ軽便鉄道が敷かれ、別荘が建てられていく。戦後は満州などからの引揚者が辛苦の開拓を乗り越え、高原野菜の美田を出現させている。



冬は「ビールを冷蔵庫にしまっておかないと、凍って割れる」ほどの寒さになるが、それでも清澄な空気に惹きつけられてか、様々なジャンルのクリエーターが工房を構えているらしい。このクラフトフェアはそうした地元のアーティストを中心に、陶芸や木工、ガラス、金属などの自作を展示販売する催しで、もう12年も続いている。70ほどのテントの出品者の中には、遠く新潟県燕市から来た金物作家もいた。



客層は私のような所在不明者も多いが、土着度合いといった雰囲気の差から、地元住民と別荘族は自ずと区別できそうだ。別荘族と開拓子孫は、一つのエリアでどのような折り合いを付け、地域社会を形成しているのだろう。ここで私は「別荘とは何だろう」という思いに囚われる。避暑や避寒などを目的に、生活主体の場とは違う所に家を持つ、その効用についてだ。生活の場を時折切り替えるのは、確かに刺激がある。



群馬県は、県内市町村役場の標高差が日本一大きい。草津町(1181m)と、渡良瀬遊水池に接する板倉町役場(17.6m)の落差は1163.4メートルにも及ぶ。北軽井沢以北の地形を大胆に単純化すると、長野県境の浅間山がひたすら北へ裾野を落として行って、標高600mあたりで吾妻川に行き着く。川を渡ってさらに北に向かうと、今度は登りとなって群馬・新潟・長野県境の白砂山(2193m)へと標高が高まって行く。



私はその途中の、草津町に近い標高1000メートルの陶芸工房へ通って8年ほどになる。宿舎を長期契約することで、別荘暮らしを味わうことと陶芸を楽しむ二つの意図で始めたことだ。市街地を離れ、自然の中で暮らすひと時を大いに楽しんできた。しかし陶芸はますます面白くなっているものの、別荘暮らしには飽き始めている。美しい自然は通い慣れると新鮮味が薄れ、近在もほとんど行き尽くして退屈になった。



かつて別荘ブームがあった。しかし経済が失速するやその熱気は失せ、私の工房周辺でも、朽ちていく別荘が散見される。もちろん別荘ライフを上手に楽しんでいる人は多いだろう。北軽は軽井沢の雑踏からは遠く、別荘地としての静寂をよく保っているようだし、古株分譲地の「大学村」は「関係者以外立入ご遠慮下さい」の看板の奥で、緑に埋もれている。別荘地は、ライフスタイルの展示場のようなものだ。(2019.10.5)















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