いよいよ最終日の歩きが始まる。宿から竹屋敷までの3km以外は総て初めて歩く道になる。だから最後の日ではあるけれど、予定通りのバスに乗って帰れるような感じがあまりしない。
雨は完全にあがって空気はひんやりしている、大窪寺の門前に白い犬がいて、しばらくぼくの後をつけてくる。おとなしくてあまり気にならない、100mほど行くと立ち止まって見送ってくれる。なんだかそこにもお大師さんがいるような感じがした。
竹屋敷まではなだらかな下りが続くので、快調にとばす、竹屋敷から国道を離れ初めての道に入る。入り口は昨日確認していたので問題はない。2kmちょっとで国道377号に合流する。国道を1kmほど行くと中山というバス停があった。どうやらここがコミュニティバスの始発駅のようだ。ならば多和小学校まで戻らなくてもいい、予定の距離より3kmくらい短くなる。13時過ぎまでにここに戻ってくればいい、ここが今回の旅のゴールになる。すぐ三木町に入る、ここがさぬき市の南端だった、始発駅があるのも納得できる。377号はすぐ国道193号に突き当たる、この三叉路が香川県と徳島県の県境だ、ここからは20番までずっと徳島県脇町を歩くことになる。しばらく行くと清水温泉センター、廃業している。夏子ダムまでの11.8kmを休みなしの108分で来ることができた。時速6.56km、快調な出足だ。休憩所でおにぎりを頂く。
13分の休憩、7時丁度に出発、いよいよ標高差690mの山登りに入る。地図に載っている220mからの短絡路の入り口は見当たらない、初めから期待していなかった。次の270mから450mの短絡路は、昨日交流サロンで頂いた大瀧寺へのガイドプリントに行くのはほとんど不可能、と書いてあったのでこちらも無視してものすごい大回りの自動車道を行くことにする。入り口の印もペンキで塗りつぶしてあった。ここに入ると誰もが大変な目に遭うようだ。450mからの山道まで5.7kmを58分で来た、ちょっと不本意だった。というのも、そのプリントの著者も1時間で来たと書いてあったから、ぼくは普通の人よりだいぶ早いから45分で来られると踏んでいた、でもあとで距離を測ると、かなりいいペースだったことが判る。 山道の入り口にはちゃんと印があった、問題はなかったけれど、それは最初だけだった。ここから先は遍路標識は最低限以下だった。しばらく登って、道をはずしてしまった。曲がるべきところを曲がらず、まっすぐ行ったら自動車道に下りてしまう、引き返してまた登り口のところに戻ってくる、丁度30分無駄にしてしまう、このときにはもう半分パニック。行くのをやめようか、そうすれば花曼陀羅も、納経帳も御影帳も完成しないまま終わってしまう。そんなことができるわけがないと思い直し、また同じ道を登り始める。今度は慎重に本来の道を探しながら歩く。10分くらいのところに右後ろに折れる道があった。遍路札も掛かっている、でもこれは駄目だ、絶対気が付かない、10人の内気が付くのは2人か3人だろう、振り返らないと見えないところに掛かっている、正面の分かりやすいところに看板があれば誰も迷わない。あそこに掛けるのであれば、という思いが強い。悔しい思いを胸に時間を取り戻すべくひたすらつづら折りの山道を登っていく、また分かり難い分岐点に当たる、今度は慎重に遍路札を探すがどちらにもない、まっすぐ行くと行き止まり、また間違えてしまった。10分ほどのロス。もちろん今度は諦める気など起こりはしない。半分怒りながら分岐点に引き返す、よく見たら遍路札があった。葉っぱが生い茂って隠れていた、ここにも看板を立てておいてくれえ、と言いたかった。この2ヶ所に大きめの遍路標識さえあれば誰もが迷わず最後まで行けるはずだ。88ヶ所の遍路道には無駄なくらい遍路札が掛かっている山道がある。そのいくつかをこちらに分けてくれい、と言いたくなる。役に立たない札が本当に役立つ札になるように。 そのあとはもう、迷わなかった。怒りをエネルギーに買えて、バスの時間に間に合うようにとにかく登り切る。9時48分、2回目登り始めてから1時間20分だった。今度は思ったよりずいぶん早かった、何とかバスの時間には間に合いそうだ。でも30分以上無駄にしたので、ゆっくりする余裕まではない。
今回の結願の寺、大瀧寺には誰もいなかった。静かだ、お参りを終えて、納経所のブザーを押す、すぐに住職が出てきてくれる、記帳のあとキャンディの缶を取り出して3,4個渡してくれた。思わず笑みがこぼれる、ようやく総てが終わった。あとは今来た道を戻るだけ、もう迷う心配もない。15kmだから3時間はかからないだろう。
33日目の歩行距離 37.1km
歩行時間 6時間36分
平均時速 5.62km
雨は完全にあがって空気はひんやりしている、大窪寺の門前に白い犬がいて、しばらくぼくの後をつけてくる。おとなしくてあまり気にならない、100mほど行くと立ち止まって見送ってくれる。なんだかそこにもお大師さんがいるような感じがした。
竹屋敷まではなだらかな下りが続くので、快調にとばす、竹屋敷から国道を離れ初めての道に入る。入り口は昨日確認していたので問題はない。2kmちょっとで国道377号に合流する。国道を1kmほど行くと中山というバス停があった。どうやらここがコミュニティバスの始発駅のようだ。ならば多和小学校まで戻らなくてもいい、予定の距離より3kmくらい短くなる。13時過ぎまでにここに戻ってくればいい、ここが今回の旅のゴールになる。すぐ三木町に入る、ここがさぬき市の南端だった、始発駅があるのも納得できる。377号はすぐ国道193号に突き当たる、この三叉路が香川県と徳島県の県境だ、ここからは20番までずっと徳島県脇町を歩くことになる。しばらく行くと清水温泉センター、廃業している。夏子ダムまでの11.8kmを休みなしの108分で来ることができた。時速6.56km、快調な出足だ。休憩所でおにぎりを頂く。
13分の休憩、7時丁度に出発、いよいよ標高差690mの山登りに入る。地図に載っている220mからの短絡路の入り口は見当たらない、初めから期待していなかった。次の270mから450mの短絡路は、昨日交流サロンで頂いた大瀧寺へのガイドプリントに行くのはほとんど不可能、と書いてあったのでこちらも無視してものすごい大回りの自動車道を行くことにする。入り口の印もペンキで塗りつぶしてあった。ここに入ると誰もが大変な目に遭うようだ。450mからの山道まで5.7kmを58分で来た、ちょっと不本意だった。というのも、そのプリントの著者も1時間で来たと書いてあったから、ぼくは普通の人よりだいぶ早いから45分で来られると踏んでいた、でもあとで距離を測ると、かなりいいペースだったことが判る。 山道の入り口にはちゃんと印があった、問題はなかったけれど、それは最初だけだった。ここから先は遍路標識は最低限以下だった。しばらく登って、道をはずしてしまった。曲がるべきところを曲がらず、まっすぐ行ったら自動車道に下りてしまう、引き返してまた登り口のところに戻ってくる、丁度30分無駄にしてしまう、このときにはもう半分パニック。行くのをやめようか、そうすれば花曼陀羅も、納経帳も御影帳も完成しないまま終わってしまう。そんなことができるわけがないと思い直し、また同じ道を登り始める。今度は慎重に本来の道を探しながら歩く。10分くらいのところに右後ろに折れる道があった。遍路札も掛かっている、でもこれは駄目だ、絶対気が付かない、10人の内気が付くのは2人か3人だろう、振り返らないと見えないところに掛かっている、正面の分かりやすいところに看板があれば誰も迷わない。あそこに掛けるのであれば、という思いが強い。悔しい思いを胸に時間を取り戻すべくひたすらつづら折りの山道を登っていく、また分かり難い分岐点に当たる、今度は慎重に遍路札を探すがどちらにもない、まっすぐ行くと行き止まり、また間違えてしまった。10分ほどのロス。もちろん今度は諦める気など起こりはしない。半分怒りながら分岐点に引き返す、よく見たら遍路札があった。葉っぱが生い茂って隠れていた、ここにも看板を立てておいてくれえ、と言いたかった。この2ヶ所に大きめの遍路標識さえあれば誰もが迷わず最後まで行けるはずだ。88ヶ所の遍路道には無駄なくらい遍路札が掛かっている山道がある。そのいくつかをこちらに分けてくれい、と言いたくなる。役に立たない札が本当に役立つ札になるように。 そのあとはもう、迷わなかった。怒りをエネルギーに買えて、バスの時間に間に合うようにとにかく登り切る。9時48分、2回目登り始めてから1時間20分だった。今度は思ったよりずいぶん早かった、何とかバスの時間には間に合いそうだ。でも30分以上無駄にしたので、ゆっくりする余裕まではない。
今回の結願の寺、大瀧寺には誰もいなかった。静かだ、お参りを終えて、納経所のブザーを押す、すぐに住職が出てきてくれる、記帳のあとキャンディの缶を取り出して3,4個渡してくれた。思わず笑みがこぼれる、ようやく総てが終わった。あとは今来た道を戻るだけ、もう迷う心配もない。15kmだから3時間はかからないだろう。
33日目の歩行距離 37.1km
歩行時間 6時間36分
平均時速 5.62km