池波正太郎の
『江戸の味を食べたくなって』
という小説の中の、「十一月 葡萄と柿」という章が興味深いとおっしゃって、私同様にワイン好きの、我が会派の関口幹事長が本を貸して下さいました。
その内容は、戦後のこと。
作家がご近所さんから、実家の甲州ブドウをもらった際に、目の前で、一粒つまみ口へ入れた。
それを見た彼から、甲州式のブドウの食べ方について、教授を受けたという話から始まります。
その食べ方は、一房のブドウを手にして高く持ちあげ、その下へ大きく開けた口をもってゆき、下からガブガブと頬張り、何粒のブドウをしゃぶり、残ったタネと皮をまとめて吐き出すといったもの。
作家は、その食べ方と味わいに感心し、以来、この食べ方を実践しつつ、ある時訪れた、フランスのペリゴール地方の道端で、日本のブドウにそっくりなブドウを目にし、いつもの食べ方でブドウを味わっていたところ、通りかかった村のお爺さんと娘が瞠目して作家に近寄り、フランス語で何かを言い、真似をして食べ始めた。
言葉は理解できないが、うまいと言っていることは理解できたので、今頃、そこでは甲州式のブドウの食べ方が流行しているかもしれないという、ブドウの逆輸入的な実に面白いエピソードでした。
そこで、関口幹事長と、
「フランスのブドウの食べ方はどうなんだろうな?」
「池波正太郎が食べたフランスのブドウの品種は何だったんだろう?」
と、しばし小説とは離れたところで話が盛り上がりました。
フランスでは、皮とタネも一緒に食べることはスタンダード、だった記憶が...
話は戻り、この小説は、江戸の味に始まり、後半は、作家が仕事で訪れたフランスでのレストラン、人との出会い、映画の思い出など、フランス好きの私には、引き込まれるしかない小説でありました。
この秋は、フランスに関連した、池波ワールドにハマってみたいと思います。
もちろん、鬼平犯科帳ファンは、変わりませんが!