居間から見える前庭の空は久しぶりの青空。サルスベリの淡い桃色の花に、2匹の蝶がたわむれながら飛び回っている。
私ささやかな朝食をとりながら、その姿を何気なく眺めていると、テレビから、広島原爆の日の鐘の音が聞こえた。耳を澄ませ、黙とうする。
永遠とも思われる時が流れたのに、人々の悲しみは消えない。私は戦いの日は知らないが、末息子を20歳の若さで亡くした祖父の顔が浮かんだ。
今閉じこもりの日々ではあるが、小さな喜びを見つけ、静かに暮らせるのもまた平和なればこそ、とありがたい。
宮崎県日南市 永井ミツ子(73) 2021.9.12 毎日新聞鹿児島版掲載