「切れが悪い。なんで捨てたのね。確認しないとダメヨ!」。お昼前、キャベツの千切りを始めた母が強い口調で言う。
また昨日の話か……。包丁を研ごうとした母は、私が台所用品の断捨離で、変わった形の品を研ぎ器とは知らず捨てたことを知り、叱責したのだった。
戦後の物不足の時代を生き、生活用品を大切に使って来た母には、それは許し難いことで、怒りの感情は時間がたっても残っていたのだろう。
91歳になり足腰は弱ったが、料理好きの母は今日も台所に立っている。その後ろ姿は頼もしく、私は二度目の反省をする。
宮崎市 磯平満子(66) 2021.9.11 毎日新聞鹿児島版掲載
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