進出した大型店に押され個人商店が衰退して久しい。我が町の一角に昭和の代から70年余も続く八百屋がある。私が子どもの頃、自転車でリヤカーを引っ張り山積みの野菜を運ぶ家族の姿をよく見かけた。時は流れ、店主は親から子へ。兄弟家族は固い絆で切り盛りする。だが、専門家は「今どきこの店が残っているのが不思議だ」と。生前の母のお気に入りの店。今も季節の新鮮な野菜を届けてくれ、数年前から生花も扱い重宝がられる。近郊まで出掛けられない高齢化の時代。昭和の代から町内の台所を見守り続ける“生き証人”の八百屋である。
鹿児島市 鵜家育男 2012/12/10 毎日新聞鹿児島版掲載
鹿児島市 鵜家育男 2012/12/10 毎日新聞鹿児島版掲載