はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

一雨1億円

2016-09-07 21:51:11 | はがき随筆
 連日熱い。猛暑だ。日本列島が南下しているのではと思う異常気象だ。それに夏特有の夕立すら降らない。
 畑の作物は可哀そうだ。野菜も一雨も二雨も欲しがっている。焼け石に水だと思いながらも、毎日夕方1時間余りかけて水を掛けている。成長はほとんどないが、生きているので掛けないよりましだ。
 ここで一雨降れば野菜も息を吹きかえし、喜んでグッと伸びる。一雨は1億円の価値がある。一雨欲しいのは私だけではあるまい。
 「天の神様お願いします」と雨ごいしたい。
  出水市 畠中大喜 2016/9/7 毎日新聞鹿児島版掲載

著作権フリー

2016-09-07 21:44:44 | はがき随筆
 江戸川乱歩が亡くなってから昨年で50年がたち、作品が著作権フリーになった。電子図書館で著作のデジタル化が進められ。処女作「二銭銅貨」を皮切りに無料作品がアップされている。
 小学校時代に毎週楽しく見たテレビドラマ「少年探偵団」で乱歩の名を知った。しかし、親に「乱歩の本が読みたい」と言うと、一種名状し難い表情を見せた。彼独特の猟奇・幻想趣向の作品に、子供の私が手を出さないかと案じていたのだろう。
 そんなこともあり、いつか全作品に触れてみたいと思っていたが、運よく彼の著作権フリーと私の定年退職が重なった。
  鹿児島市 高橋誠 2016/9/6 毎日新聞鹿児島版掲載

あの夏

2016-09-07 21:36:38 | はがき随筆
 短大の卒業は昭和30年3月。母の裾模様の紋付きにサージ新調の袴を着けた。「おおきに卒業できました」と母へあいさつすると「勉強は一生すいもんじゃ、終わりはなかど」と一喝。半年してやっと勤め先の右左がわかりはじめたので通信教育を受けることにした。もちろん東京のである。既修単位の認定が済んで入学許可になった。次の夏スクーリングに行き、品川の会社の寮からお茶の水まで歩き、YMCAの店に入ってカレー注文。やたら水をのんだ。カレーが出る頃はもう心身ともに水に満ちあふれてしまった。東京、夏の初日の思い出だ。
  鹿児島市 東郷久子 2016/9/5 毎日新聞鹿児島版掲載

十九の春

2016-09-07 21:27:01 | はがき随筆
 沖縄メロディーを集めたCDがある。「十九の春」の歌詞をじっくりかみしめて聴いた。そうだったのか……。
 恋仲の2人の物語と思いきや、道ならぬ恋の歌だ。1銭のはがきは全国どこへでも届くのに、同じ町に住みながらなかなか会えない身の上を嘆いている。なんだか誰かに似ているぞ。
 19歳は遠い遠い昔の事だが、人が人を思う気持ちは幾つになっても変わらないのでは?
 「昔はものを思わざりけり」と権中納敦忠も詠んでいる。何もなかった状態にリセットできないのが人生であり、恋ではないだろうか。
  鹿児島市 本山るみ子 2016/9/4 毎日新聞鹿児島版掲載

待つこと

2016-09-07 21:18:16 | はがき随筆
 鉢物を露地植えにしてこの数年楽しんでいたが、1月の思わぬ寒波で枯らしてしまった。それぞれの半分を処分した。ところが芳香を放って咲いていたシンビジウムは、枯れた葉の中から新芽を6月に出してきた。根は生きていたのだ。デンドロビウムも節々が膨らみ、その先に芽を出してきた。赤紫の包葉が美しいこの時期に、やっと根元に芽をだしてきたブーゲンビリア、それぞれが生きていたのだ。処分した株が惜しまれた。もっと気を長く待てばよかったと後悔した。思えば早合点して失敗したことも多かった。ゆっくり待つことの大切さを学んだ。
  出水市 年神貞子 2016/9/3 毎日新聞鹿児島版掲載

アシメ

2016-09-07 21:09:40 | 岩国エッセイサロンより
2016年9月 6日 (火)
岩国市  会 員   安西 詩代

「何よ、その髪」。孫2人に会うと同時に笑った。2人の前髪が斜めに切ってある。下の孫息子は母親が切っている。「お母さん、下手ね」と言うと「うん、いやなんよ」。高校生の孫娘は自分で切ったそうだ。「2人とも変よ。ばあちゃんが揃えてあげようか」。上の孫が「これ流行っとるんよ。アシメというんよ」という。アンシンメトリー(非対称)の略らしい。
 流行と言われると、そうかというほかない。リオ五輪の閉会式で日本紹介時のダンサーの髪がアシメだった。やはり流行っている!
 ついていけぬ事が多い。アシラ(あ~知らん)だ。
   (2016.09.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
リアルタオル ハチワレ ねこ…

山滴る

2016-09-07 20:59:24 | はがき随筆
 娘の4歳と1歳の男子2人が幼稚園の夏休みだというので帰省した。長男が市電に乗りたいというので一日共通券600円を購入して約2時間、市電に乗った。
 変化をもたせるためにシティビューで城山まで行った。日本自然百景のこの景色を孫も見て、さすがに感嘆の声をあげて「桜島がみえる」と興奮している。そしてドン広場に行って孫を喜ばせ、新緑のクスノキを見上げて青空とのコントラストで夏マッサカリの「山滴る」である。
 下るバスの中、孫は疲れて膝の上でお休みタイムになった。
  鹿児島市 下内幸一 2016/9/2 毎日新聞鹿児島版掲載