はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

言葉の一人歩き

2016-09-01 07:28:36 | はがき随筆
 言葉というものは面白いもので、時と場合によってあらぬ方向へ一人歩きをするものです。
 このたびの東京都知事の攻防にしても「第三者」や「パラシュート」などは、ちまたていろいろな意味に使われ初めています。母親からやかましく聞かれると「第三者に聞いてよ」とか、会社で上司からとがめられると「第三者から言われたんです」と逃げたり「専務のパラシュートでは頼りにならんしね」「かまわねえ、俺がパラシュートになってやるから」など、皆上手に使っているようです。
 ひょっとすると今年の流行語大賞になるかもしれないね。
  鹿児島市 高野幸祐 2016/9/1 毎日新聞鹿児島版掲載

山が呼んでいる

2016-09-01 06:55:01 | はがき随筆


 我が家の二階自室から高隈連山が眼前に見える。知る人ぞ知る日本三百名山の一つであり、鹿児島のシンボル桜島を見下ろす広葉樹の綺麗な山だ。
 本格的な夏を迎えようとするこの時期、長らく遠ざかっていた登山への衝動にかられる景観である。それは北アルプスの槍ヶ岳を思わせる横岳、富士山を連想させる御岳、最高峰の大箆柄岳はさしずめ穂高岳だろう。
 一方で垂水からは日本百名山の霧島山や開聞岳を望むことができる。そこには車で2時間そこらもあれば行けるという山好きに巣たまらない地に住む幸せを今更ながら感じている。
  垂水市 川畑千歳 2016/8/31 毎日新聞鹿児島版掲載

サイダー

2016-09-01 06:39:15 | はがき随筆
 「指宿温泉サイダー」と書かれた宅急便が私宛に届いた。心当たりがなかった。電力会社からである。そういえば過日、研修場所の一つの候補として山川にある地熱発電所を見学しただった。その際、「キャンペーン中なのでぜひ」と言われてアンケートに記入したのが当選したのだ。入っていたのはサイダー。懐かしい気がした。
 亡き祖父の家に遊びに行くと出されるのは決まってサイダーだった。当時サイダーは珍しく、私たち姉妹の喜ぶ顔を見てはほほ笑んでいた寡黙な祖父。これはきっと祖父が墓参りに来るのを待っているのかもしれない。
  鹿児島市 天野芳子 2016/8/30 毎日新聞鹿児島版掲載

嫁や孫を平和ガイド

2016-09-01 06:31:31 | 岩国エッセイサロンより
2016年8月29日 (月)
    岩国市   会 員   横山恵子

 先日、広島市内に住む嫁から「子どもたちを連れて、原爆資料館(広島市中区)に行ってみたいです」といううれしいメールをもらった。
 孫たちは6歳と4歳。どれだけ分かるかなと思ったが、焼けた三輪車や全身やけどの写真などを、びっくりしたような面持ちで見ていた。夏休み中でもあり、オバマ米大統領の折り鶴効果で館内はいっぱいだった。
 平和記念公園では原爆投下前の写真を見せて「こんなに多くの人たちが住んでたんよ。ここを公園にする時は、たくさん人のお骨や茶わんなどが出てきて、人々は涙を流したのよ」と話した。
 被爆したアオギリ、峠三吉詩碑、原爆供養塔…。酷暑の中、元気いっぱい平和の鐘を突いた。ピースボランティアを始めて6年余り。孫をガイドする日が来るなんて、感無量たった。
  「戦争ほどむごいものはない」と常々言っていた亡父の思いを少しずつ伝えてやりたい。小さな手を合わせて祈る姿を見て、平和を築くのは大人の責任と思った。

     (2016.08.29 中国新聞「広場」掲載)

元気で楽しく

2016-09-01 06:28:08 | はがき随筆
 「逃げろ、逃げろ」「そのまま、そのまま」「差せ、差せ」「あ~、いっぱいか~」「来た、来た、来た」………何だか分かりますか? 土曜日曜の午後、テーブルをたたいてこの騒ぎです。推理とデータ分析、頭の体操です。ボケ防止、老化防止はいろいろですが、妻と2人、趣味と実益をかねて競馬中継に力が入るのです。しかし結果として実益の部分は幻と化しますが……。早朝2時間の運動で体を鍛え、大リーグ中継で目まぐるしく移籍を繰り返す選手名を記憶する。脳と体に刺激を与え、2人で楽しみながら生きてゆく。「よ~し、今度こそは……」
  志布志市 若宮庸成 2016/8/29 毎日新聞鹿児島版掲載