はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

連休で考えた

2014-05-12 19:22:03 | ペン&ぺん


 皆さんは大型連休をどのように過ごされただろうか。新潟県上越市の海岸で5人が亡くなった事故は、何とも痛ましかった。水辺の子どもたちが突然、大波にさらわれたという。親や近くで釣りをしていて助けようとした青年も荒海に飛び込み、犠牲となった。この青年は他人。果たして、私にできたか。事故は海の怖さをまざまざと教えてくれた。
 周囲を海に囲まれている鹿児島。岩場で釣りをしていた人が高波に襲われ、死亡した例を幾度も取材した。現場は事故直前まで穏やかな「凪」。外洋から大波が押し寄せ、急に海面が盛り上がって襲う。磯釣りが好きだった亡父は鹿児島に来て、釣りを楽しんでいた。父からも磯釣りの危険性を聞いていたので、思い出した。これから海の季節が始まる。気をつけたい。
 連休で県外の知人から鹿児島観光について聞かれた。例えば、特攻隊。多くが旧日本陸軍の「知覧」飛行場を念頭に尋ねてくるので「大隅半島には旧海軍の鹿屋航空基地があり、戦争末期はここからも多くの特攻隊が出撃した」と説明する。陸軍の「隼」、海軍の「零戦」から始め、20歳未満の若者も特攻隊として戦死した話などをした。特攻イコール知覧と思っている人が多い。
 3日の憲法記念日。今年は憲法改正や集団的自衛権など憲法解釈で注目された。各地で護憲、改憲派それぞれの行事があり、ニュースを見た母(84)が「あんたが大学生の頃(約30年前)も日本の右傾化を感じ、徴兵制が浮かんだ」と話した。母は16歳で終戦。学徒動員で働いた軍需工場が空襲され、級友らが頭や手足を吹き飛ばされ、亡くなった。いまだに母の記憶から消えてはいない。
 旧高山町出身で日中国交正常化交渉に尽力した二階堂進・自民党元副総裁も「二度と戦争をしてはいかんのです」。生前の言葉が耳に残る。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/5/12 毎日新聞鹿児島版掲載

花に癒されて

2014-05-12 19:10:19 | はがき随筆


 日ごとに咲き継ぐシモクレン。今朝も私1人のために満開。大阪で知り合った彼は、社長の義理のおいで営業部長。私は事務員。仕事に慣れた頃、彼は私のそばに来て話しかけるようになり、私も耳を傾けた。そのうち「ついて来てくれなれいか」と言われ、私はその言葉がうれしかった。後年、鹿児島に来た理由を食事会で聞かれ、私が「夫が挿絵画家、岩田専太郎の描く青年のようだった」と答えると、男性の一人はひっくり返って笑った。金婚式は鹿屋市主催で盛大に催され、夫も私も十分に人生を生ききったと、しみじみかみしめています。
  鹿屋市 小幡由美子 2014/5/12 毎日新聞鹿児島版掲載